もう壁はない、お前の心に何が見える

承太郎さんの視線を感じる。露伴は、顔を向けることが出来ない。
承太郎さんに見てもらう、そ、それだけだ。
意識するんじゃない…。
露伴は心でそう言い聞かせて、ゆっくり脱いだ。
「傷は、背中の左肩に近い所です。」
後を向いた露伴には見えないが、承太郎さんは動いた気配がない。
承太郎さんに身体を、見られている。
「…綺麗な身体だ。もっと見ていたいがそれは後にする。今は」
承太郎さんはそう言って露伴の背中の前にくる。綺麗な身体…そう言われ露伴は心臓が早鐘のようにうつ。
「露伴、敵がいるとはいえよく俺と住むのを了承したな。それで…ああ、ここか。確かに昨晩はなかった傷だ。」
承太郎さんは、触るぞと言い、傷を調べていく。
「…っは、あ。」
露伴は、性感帯をかすめていく指先に、息を飲む。軽く背中を触れられただけで、びくっと身体が反応し、甘い刺激が脳に流れ込む。
「……露伴、仗助が戻ってくる。あまりこうしている時間はない。続きは俺が戻ってからにするぞ。」
「…つ、続き、が、あるのですか?」
「…お前が嫌なら俺から逃げればいい。この部屋は広い。だが、嫌ではないのが分かれば」
容赦など必要ないだろう。
露伴はその後続いた言葉に、感情が昂ぶる。
何がこんなに己を突き動かしているのだろう。露伴が考える間もなく、仗助が戻ってきた。
「承太郎さーん!戻りましたよ。開けてください。」
オートロックの扉にむかう承太郎さんは、露伴に去り際に言った。
「露伴、この部屋にあるものは全て使っていい。だが外には出るな。」
扉を開ける。
仗助が借りてきた救急箱を承太郎さんに渡し、露伴の傷を手当てした後、承太郎さんは仗助を伴って部屋を出た。
露伴は身体の熱を持て余し、目についたソファに手をかける。
このソファも承太郎さんが普段使ってるのだろうと思う。
あらゆる感情が心に流れ、溢れだす。露伴は自分自身を抱え込み、膝をついた。
「ぁ、……こんなに、…立っていられないほどの感情なんて、っ…承太郎…さ…ん…僕は…あなたを、…。」
露伴はそのまま床に崩折れた。
少し床の冷たさが頬に伝い気持ち良く感じる。
露伴は寝不足気味だった事も手伝って、頭痛と眠気が襲う。それでもポケットのノートを広げ、今の感情を描く。そしてそのまままぶたを閉じ、気をうしなう様に寝てしまった。
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