もう壁はない、お前の心に何が見える

午前7時頃、露伴はホテルのフロントに着いた。
そこで運良く、承太郎さんに会う事ができた。
承太郎さんは東方仗助と一緒に、人の体を肉の塊にするネズミを、狩りに行く段取りをしていた。
仗助があくびして、となりで地図を見ている承太郎さんに言う。
「ふぁーあー、承太郎さん、囮やくに、ちょうど良いやつが来ましたよ。」
丁度、露伴が、ロビーの自動扉を抜けた時だった。
承太郎さんは露伴を見ると、少し驚いて言った。
「露伴、どうした?なにかあったのか?」
露伴は少し離れた所で立ち止まり、胸の動悸を感じた。
顔が、熱い、これは…承太郎さんと少しも顔を合わせられない。
「あの、いえ、そう、…話が、あるんです。」
「はぁ?何言ってんの。承太郎さんは今から俺とハン…」
「露伴、話を聞こう。2人とも俺の部屋に場所を移す。」 
ハンティングと言おうとした仗助を承太郎さんが言葉を遮って言った。
「…ありがとうございます。」
露伴は礼を言った。
「まじかよ。はい、はい。…露伴さん、あんた何か顔そらしてるけど、礼言うなら顔くらい合わせろよ。」
仗助が露伴に言うが、露伴は顔をそらしたままだ。
「仗助、それ以上露伴に言うな。事情がある。」
事情?と仗助が承太郎さんの様子と露伴の様子を見て、聞こうとした時、部屋に着き、承太郎さんが部屋のドアをあけた。

承太郎さんが、仗助と露伴を案内すると椅子に座らせた。
承太郎さんはテーブルに、ハンティングの道具を置いて露伴に問いかける。
「それで、何があった?」
露伴は顔を合わせないがなんとかテーブルを見、次に、承太郎さんの服、そしてゆっくり目を合わせようとし、失敗した。承太郎さんの上着を辛うじて見、今朝の出来事を話はじめた。 高鳴る胸をどうにもできないまま。
「僕が、そう…今朝6時に起きてコーヒーを飲む時です。外から声が聞こえました。承太郎さんを、承太郎を殺してやる、と。」
「…」
「確認しに行った時、雀のスタンドに背中をひっかかれ、僕のヘブンズドアで雀は跡形もなく砕けました。本体は現れなかったんですが…怪しい人物が僕のファンだと名乗ったので、家に上げてヘブンズドアを仕掛けて、読みましたが普通の男でした。ただ、おかしな事がないのがおかしい、ような…。口調もおかしかったんです。目もそらし、何かを隠そうとしてたように思います。」
露伴はなんとか言い終えた。身体があつい。
承太郎さんがこちらを見て言った。
「家に上げた、と言ったな。…露伴、1つ提案がある。」
「何でしょうか…」
「そいつが何か企む可能性も考え、ほとぼりがさめるまでここに居るのが安全だ。俺が嫌でないのなら、ここに居るといい。」
露伴は考える。どうするべきか。ここにいればむしろ色んな承太郎さんが知れる。それに
時が経てば僕の気持ちも落ち着く可能性もある。ただ取材、させてもらうだけだ。

露伴は承太郎さんを見る。
「それなら是非取材、させて下さい。」
逃げたくなれば逃げればいい。
「良いだろう。話はまとまった。露伴、外に出るな。冷蔵庫に食材を買ってある。使え。」
話を聞いてるだけだった仗助が、言った
「…承太郎さん、本気なんすか?まあ、それが妥当かもしんないすけど…こいつ、やべーやつですよ。承太郎さんがそれで良いなら反対しませんけど。」  
「ああ。問題ない。…露伴、今から念の為傷を確認する。仗助、少しだけ時間を取る、すまないが救急箱をフロントからもらってきてくれないか?」
「っなんで、俺が…はあ、勝手にしてくださいよ。」
そして、仗助が、出ていったあと、2人に得も知れぬ空気が漂う。
露伴は傷を確認するならと、思い、ゆっくり上着を脱ぎはじめる。心臓が、鼓動がはやい。
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