もう壁はない、お前の心に何が見える

「これは…」
「どうだ?少しは漫画に使えそうか?」
「…ええ、僕が全力の力で漫画にしてみせます。」
「そうか。」
承太郎さんは、頬に触れ、ゆびを口唇にすべらせ上を向かせる。
その時露伴は、甘い雰囲気の流れる承太郎さんに意識が釘付けになっていて、何の予想もしていない事をされた。
承太郎さんが言う。
「露伴、覚えておけ。俺はお前が思ってるほど良いやつじゃない。気取ってるうちはまだ、良い。だが、次は無いと思え。」
「…っ…な、あ、あむむ」
口唇から侵入した指に舌を絡めとられ、露伴は思考ができなくなった。しかし、感情の渦に流されたわけではない、露伴はしっかり、意識があった。先ほどの自分の答えをグズグズに溶けそうな意識のなか、頭の中で反芻する。
"ええ。僕が全力の力で漫画にしてみせます。"
されるがままなのはそのプライドのせいなのだ。
承太郎さんの今している事には何か意味があるに違いない。
その意味を掴みとるまでは、どんな事されても、抵抗しない。
意味を掴み、全力で漫画を描くのだ。
承太郎さんの指は舌を撫で、絡める、動きも、緩急つけて、押され、たまに出し入れする。
「ん、あ、」
我慢していたが、声を少し出さないと、もう我慢出来ないほどの、痺れが、脳を襲う。
思考が絡め取られる。


そしていつまでそうしていただろう。
露伴は最後まで、切り抜けられた。
まだ意識はある。
目は承太郎さんを直視できず、トロンとし、彷徨わせる。
だが、これで自分の全力が出せると、気分が高揚していた。
もう、何度も、何度も、口内を出し入れされて、舌も、口唇も体も、すごく艶めかしい気がする。いまは、息をするので、精一杯だ。
承太郎さんに肩を担がれ、ぴくり、と動揺しながら身を任せた。
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