もう壁はない、お前の心に何が見える

露伴ははっと、気がつき、首をかしげた。
今自分達はどこを歩いているのだろうか。
足元の草木に気をつけながら、露伴は目の前を行く承太郎さんについてきたのだ。
ただ無心になって歩いていた。
仕方ない、つい、先ほどレストランで、承太郎さんに言われた言葉がよぎる。
「俺はお前の漫画を、知っている。楽しみだ。…この先の展開を、聞くような野暮な事はしない。腹いっぱいになったら出るぞ。会計は俺がする。まずは着いてから話しをしよう。」
自分の漫画を認知してくれていた。
それどころか、楽しみだと…。
露伴はとまどい、喜び、ついてこいなんて勝手に決めるな、と怒り、それでいてまた、甘い幸せのようなものが押し寄せた。
もう、心がぐちゃぐちゃだ。
露伴はこんな事初めてだった。
「ええ、良いですよ。ついていきます。」
先ほどなんとか、そう答えた。
しかし、ここは…人気のない山の中だ。人口的に作られた木の枝で作られた階段をのぼり、どのくらい上ってきたのだろう。時間も分からない。木々の葉で太陽が隠れたからか、それとも日が暮れようとしてるのか、薄暗くなっている。
前にいる承太郎さんが、止まったので、露伴も止まった。
「ここからそう、遠くはないが、道から少しそれる。まずは着いてから話しをするぞ。」
こちらを振り返り、言われて露伴は、はい、とうなずいた。

そして、その通り目的地についた。
その場所は淡く緑に光っていて、とても、幻想的な光景だった。
だが、露伴はこれを知っている。
「承太郎さんこれは…」
周りを見て露伴は思わず声がでた。
一緒なのだ。
自分が、描いた漫画と。あれは、サンカヨウという水で透けて見える花を実際に見ながら描いたのだ。しかしこれはサンカヨウではない。
承太郎さんが、懐からガラス瓶に入った光る花を露伴に渡した。
「そいつはお前がくれた情報から、スタンド使いを仕留めた時、半分はそいつの能力で、作りあげた代物だ。草木を操る能力で、上手くそうなるように仕向けながら戦った。」
「仕向けながら…」
「ああ、この花を見ることで、お前の漫画が格別になるだろうとな。」
「…っ」
露伴は、もう、目の前の男を見つめるしかなかった。
緑色に光輝くこの場所で、承太郎さんは、今までにない光景の中、不敵に笑っていた。
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