慕う涙
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ご婚約、おめでとうございます」
朝、メイドが来るなりジルにかけた言葉がこれだった。
頭を下げ、続けてテーブルにご飯が並べられる。
ジルの方はそれを別段気にするような素振りも見せず、小さく鼻を鳴らすだけだった。
メイドも必要最低限、朝食のメニューを説明し、また頭を下げて退出する。
今日来たメイド、顔は知っている。と思った。何度かご飯を運んできたことがある。それに、廊下でも。
だが名前は知らない。言葉も交わしたことがない。
知らないものに祝われるほど、無感動なものはない。
だが、誇らしい。あのアルガナン家のご息女―――カナン姫が、自分のものになるのだ。
一度、話したことがある。教養もあり、何より見目が麗しい。
自分にふさわしい娘だと思った。
ほぼ政略結婚に近い話だったが、あの美しい娘が自分のものになると考えるだけで、ジルの心は躍った。
きっと、自分の望んだ、最高の人生を歩める。
そう思った。
あの日、グルグ族が攻めてこなければ。
あのとき……そう、ルリ島で。朝食を届けてきた名も知らぬメイドに、声をかけなければ。
朝、メイドが来るなりジルにかけた言葉がこれだった。
頭を下げ、続けてテーブルにご飯が並べられる。
ジルの方はそれを別段気にするような素振りも見せず、小さく鼻を鳴らすだけだった。
メイドも必要最低限、朝食のメニューを説明し、また頭を下げて退出する。
今日来たメイド、顔は知っている。と思った。何度かご飯を運んできたことがある。それに、廊下でも。
だが名前は知らない。言葉も交わしたことがない。
知らないものに祝われるほど、無感動なものはない。
だが、誇らしい。あのアルガナン家のご息女―――カナン姫が、自分のものになるのだ。
一度、話したことがある。教養もあり、何より見目が麗しい。
自分にふさわしい娘だと思った。
ほぼ政略結婚に近い話だったが、あの美しい娘が自分のものになると考えるだけで、ジルの心は躍った。
きっと、自分の望んだ、最高の人生を歩める。
そう思った。
あの日、グルグ族が攻めてこなければ。
あのとき……そう、ルリ島で。朝食を届けてきた名も知らぬメイドに、声をかけなければ。
1/9ページ