第3話『星の川を渡りて』
◇◇◇◇
無事に同盟を結んでイーリスに帰還してからも、クロム達自警団のメンバーは相変わらず屍兵や賊の討伐に忙しく働いていた。
派遣されてきたフェリア兵達に関しては、彼等の指揮官とイーリス高官達との話し合いで運用されるので、クロム達の出る幕は無い。
だからこそ、クロムは本来の自警団の仕事に専念出来るので有難い事だ。
フェリア兵達は辺境や国境沿いなどのどうしても活動の範囲が王都を中心とした地域になってしまいがちな自警団では手が回りきらなかった場所に優先的に派遣され、その地域では彼等を中心に屍兵や賊の討伐がなされてはいるのだが。
王都付近の主要街道沿いなどの地域は自警団に一任されている状態なので、クロム達の仕事は全く減らなかったのである。
遠征の頻度が減った分マシなのかもしれないが、出撃頻度に関してはそう変わらなかったので、多忙である事には変わらなかった。
しかも屍兵の出没に加えて、最近はペレジアからの賊の流入が前にも増して激しくなっているのも問題だ。
更にはそう言った賊達には、明らかに何らかの組織の支援を受けているものと思われる集団や、武器の質がまるで正規軍の様であったり、密偵紛いの賊達などなど、ペレジアと言う国の影が隠す事もなくちらついているのであった。
しかしそれでもペレジア軍などが直接関与している確証は得られず、状況証拠などは真っ黒でも、それに関してペレジアに抗議する事も出来ない。
そこにはやはり、先の大戦ではイーリス側が明白な加害者側であると言う負い目があるのも大きいのであるが。
だが、幾ら負い目があろうとも、この様な侵略行為を野放しにする訳などにもいかず、更にはペレジアの挑発行為にまるっきり無対応と言う訳にもいかない。
それこそ、イーリスと言う国の主権に関わる問題であるからだ。
それでも、今のイーリスには国境警備を強化出来る様な軍備は無い。
自警団ですら、入り込んだ賊の討伐などが精一杯なのだ。
抑えきれぬ賊による被害に、次第に民心に不安が広がっていく。
聖王であるエメリナが積極的に民の前に姿を見せる事で何とかその不安を解消させようとしてはいるのだが、如何せん彼女が行幸出来るのは王都とその周辺の街位である。
被害が最も深刻な国境付近には、中々姿を見せる事が出来ずにいた。
これでは、民心を完全に落ち着かせる事など不可能で。
キナ臭くなってきているペレジアとの関係も合わせて、細波の様に民の間に不安は伝播していっていた。
それでもまだ何とか、イーリスの人々は薄氷の上の平穏な日々を過ごしていたのである。
少しずつ迫り来る戦乱の足音を、皆何処かで確かに感じ取りながらも、だ。
それが何時破られるのかは最早時間の問題でしかない事を、正しく理解していたのはイーリスの人々な中でもほんの一部だけであった。
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無事に同盟を結んでイーリスに帰還してからも、クロム達自警団のメンバーは相変わらず屍兵や賊の討伐に忙しく働いていた。
派遣されてきたフェリア兵達に関しては、彼等の指揮官とイーリス高官達との話し合いで運用されるので、クロム達の出る幕は無い。
だからこそ、クロムは本来の自警団の仕事に専念出来るので有難い事だ。
フェリア兵達は辺境や国境沿いなどのどうしても活動の範囲が王都を中心とした地域になってしまいがちな自警団では手が回りきらなかった場所に優先的に派遣され、その地域では彼等を中心に屍兵や賊の討伐がなされてはいるのだが。
王都付近の主要街道沿いなどの地域は自警団に一任されている状態なので、クロム達の仕事は全く減らなかったのである。
遠征の頻度が減った分マシなのかもしれないが、出撃頻度に関してはそう変わらなかったので、多忙である事には変わらなかった。
しかも屍兵の出没に加えて、最近はペレジアからの賊の流入が前にも増して激しくなっているのも問題だ。
更にはそう言った賊達には、明らかに何らかの組織の支援を受けているものと思われる集団や、武器の質がまるで正規軍の様であったり、密偵紛いの賊達などなど、ペレジアと言う国の影が隠す事もなくちらついているのであった。
しかしそれでもペレジア軍などが直接関与している確証は得られず、状況証拠などは真っ黒でも、それに関してペレジアに抗議する事も出来ない。
そこにはやはり、先の大戦ではイーリス側が明白な加害者側であると言う負い目があるのも大きいのであるが。
だが、幾ら負い目があろうとも、この様な侵略行為を野放しにする訳などにもいかず、更にはペレジアの挑発行為にまるっきり無対応と言う訳にもいかない。
それこそ、イーリスと言う国の主権に関わる問題であるからだ。
それでも、今のイーリスには国境警備を強化出来る様な軍備は無い。
自警団ですら、入り込んだ賊の討伐などが精一杯なのだ。
抑えきれぬ賊による被害に、次第に民心に不安が広がっていく。
聖王であるエメリナが積極的に民の前に姿を見せる事で何とかその不安を解消させようとしてはいるのだが、如何せん彼女が行幸出来るのは王都とその周辺の街位である。
被害が最も深刻な国境付近には、中々姿を見せる事が出来ずにいた。
これでは、民心を完全に落ち着かせる事など不可能で。
キナ臭くなってきているペレジアとの関係も合わせて、細波の様に民の間に不安は伝播していっていた。
それでもまだ何とか、イーリスの人々は薄氷の上の平穏な日々を過ごしていたのである。
少しずつ迫り来る戦乱の足音を、皆何処かで確かに感じ取りながらも、だ。
それが何時破られるのかは最早時間の問題でしかない事を、正しく理解していたのはイーリスの人々な中でもほんの一部だけであった。
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