このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第四話・A『世界と貴方を秤に掛けて』

◆◆◆◆◆




 ルキナとロビンが巡り逢ってから、もうそろそろ一年が過ぎようとしていた。
 季節の移り変わりなどとうに喪われた世界ではあるけれども、それでも感慨深いものはある。

 ロビンは、あの夜に交わした誓いを守る様に。
 絶えずルキナの傍らに在り続け、ルキナの軍師として……ルキナの恋人として、常にルキナを支え続けてくれていた。

 まだ周囲には二人の関係を秘密にしているけれども。
 二人きりの時のロビンは、ルキナ以外には決して誰にも見せない様な笑顔を向け、そしてルキナを何処までも大切にしてくれる。
 恋人になる前ですらあれ程までに優しかったのに、あれでもまだロビンは自身を抑えていた様だ。

 ルキナの身も心も何もかもを解きほぐし、心の奥底の誰にも見えない場所に深く刻まれた傷すらをも、ロビンはゆっくりと癒す様に埋めてしまった。
 そうやってルキナの心をゆっくりと癒しながら、心の距離は縮めていったものの。
 ロビンは恋人になってからも決して無体等は働かず、丁重に壊れ物を扱うかの様に……決して一線を越えようとはしなかった。
 ルキナがそんなロビンと真実身も心も結ばれたのは、実はつい最近の事である。
 あまりにもルキナを丁重に……大事にし過ぎる彼に焦れて、ついにルキナから仕掛けたのがほんの数日前の事だった。
 一応はルキナも王族として『その手の知識』だけはあったのだが、何分初めての事で。
 でも、そんなルキナを気遣ってか、ロビンは終始優しく、常にルキナの事を慮っていた。

 ロビンは、どんな時にもルキナの事ばかりを優先し、ルキナを傷付け無いようにしてくれる。
 それは間違いなく彼から大事にされているからであり、それ自体は心から嬉しい事ではあるのだけど。
 ルキナは、ロビンになら傷付けられても良いのだ。
 きっと、ロビンがルキナを愛したが故に付いた傷痕ならば。
 それすらもルキナにとっては愛しいものになるだろうから。
 ……まあ、そんな事をロビンに言ったとしても、彼は「僕は貴女を傷付けたくはない」の一点張りなのだろうけれども。

 そんな少しばかり頑固で、でもどうしようも無い程に優しく愛しい恋人の事を想いながら、ルキナは今日も共に戦場に立ち続ける。
 ……決して『平和』ではないけれども。
 でも、確かに『幸せ』なこんな時間が、ずっとずっと続くのだろうと、続けば良いと……。
 この時のルキナはそう心の何処かで願っていた。




◇◇◇◇◇
1/3ページ
スキ