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END【たった一つの、冴えたやり方】

◇◇◇◇◇




 祭壇から少し離れた場所に、ロビンは独り佇んでルキナを待っていた。
 厚い雲の向こうでは陽がゆっくりと傾きつつあり、世界は燃える様な茜色に染まりつつある。


「ロビンさん!」


 そう声を掛けると、夕焼け空を見ていたロビンは振り向き、そして優しく微笑んだ。
 夕焼けの光に、ロビンの紅い瞳が穏やかに輝く。


「ルキナさん……。
 ご無事で良かった、です。
 無事に、『覚醒の儀』を遂げたのですね」


 ロビンは、ファルシオンに目を向ける。
 それに頷いて、ルキナはファルシオンを手に取った。


「はい。
 ……ナーガ様の御力を以てしても、『ギムレー』は討ち滅ぼせず、封印する事しか出来ないそうですが……。
 この剣で止めをさせば、『ギムレー』を千年封じられると」


 ロビンはそれに静かに頷いた。
 そして、一度ゆっくりと目を閉じて、深く深く、息を吐く。
 再び静かにルキナを見詰めるその眼差しには。
 決意と覚悟が、そこに灯されていた。


「ルキナさん。
『覚醒の儀』を終えた時に、叶えて欲しい『お願い』が。
 一つだけある、と。
 以前言ったのを、覚えていますか?」


 ロビンの言葉に、ルキナは頷く。
 忘れる筈が無い。
 それは、『覚醒の儀』を成し遂げたい理由の一つでもあったのだから。

 ルキナの答えに、ロビンは「良かった」と、心から安心した様に笑った。
 そして、一歩。
 ルキナへと歩み寄った。


「では、ルキナさん。
『お願い』、します。
 その剣で、ナーガの力を宿したそのファルシオンで」


 そこで、ロビンは一度言葉を止める。
 ロビンは、ルキナから目を逸らさない。
 優しさを湛えるその目には。
 安堵と、そして……寂しさが浮かんでいる。
 夕暮れ時の中で、優しくルキナを見詰めるロビンには。
 今にも消えてしまいそうな儚さが、あった。


「『僕』を、殺して下さい」


 そう言って、ロビンは。
 穏やかに優しく、微笑んだ。




◇◇◇◇◇
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