END【たった一つの、冴えたやり方】
◇◇◇◇
『虹の降る山』は未だ屍兵の襲撃を受けた形跡も無く、聖域としての美しい姿を保ったままであった。
滅びや絶望に包まれた世界の只中にあっても、この地には常に清涼な気配が満ち満ちている。
その麓には、ナーガの加護を求めて各地から逃げ延びてきた人々が村落を作っていた。
『ギムレー』の手がまだ及んでいない事に、そしてその影響も無い事にルキナは安堵するが。
『ギムレー』の影響がこの地には及んでいないのにも関わらず、ロビンの顔色は何処か悪い。
それでもその眼差しは優しさと意志の輝きに満ちていて、その手はルキナを力強く支えてくれていた。
麓へは降りずに、そのまま一直線に山頂の祭壇を目指して飛竜は飛んで行く。
そして山の中腹に差し掛かった時だった。
「おーい! ルキナー!!」
と、誰かに名を呼ばれ、慌ててルキナが下を見ると。
中腹に広がる林を抜けた場所で、シンシア達が大きく手を振っていた。
笑顔の彼女らが掲げる様に手にしているのは、白い輝きを放つ『宝玉』──『白炎』だ。
急いでそこに降り立つと、一斉にシンシア達はルキナに駆け寄ってくる。
「やったよ! 取り返したよ!!」
そう成し遂げた顔で興奮する様にシンシアは語り、他の皆もまた笑顔で頷いている。
「間に合って、本当に良かったわ……」
ホッとした様に胸を撫で下ろしたノワールは、『白炎』をルキナに手渡す。
残るは、『碧炎』のみだ。
ウード達は、今どの辺りにいるのであろうか、と。
ルキナが考えたその時。
上空から何かが羽ばたく音が聞こえ、皆が上を見上げた其処には。
「ジェローム! ミネルヴァも……」
ジェロームが愛竜のミネルヴァに乗って、ルキナを追い掛けてきていたのであった。
その手には、しっかりと『碧炎』が握られている。
どうやら『碧炎』の奪還に成功したジェローム達は、急ぎ『虹の降る山』へと向かっていた様なのであるが、途中でセレナ達が先に行っている事を知った為、ウード達はジェロームとミネルヴァに『碧炎』を託して先に『虹の降る山』へと急がせたらしい。
そして、ここで幸運にもルキナに追い付いたと言う訳だ。
相変わらずミネルヴァはロビンをジッと見詰めているのだが、以前会った時の困惑の色はもう何処にも無かった。
そして、何処か気遣わし気にロビンにその頭を擦り寄せる。
その反応にロビンは少し苦笑しながらも、優しくミネルヴァの頭を撫でた。
何故かジェロームは何も言わずにその様子を見守っている。
「『碧炎』を届けて下さって有り難うございます、ジェロームさん。
ミネルヴァさんもかなり疲労している様ですし、ジェロームさんはここで一旦休息を取って下さい」
そして、強行軍でここまでやって来てくれたセレナ達にも礼を言い、ここで一旦休む様にとロビンは言った。
それに反対意見は挙がらない。
ここまで来れば、『覚醒の儀』を成し遂げるだけであるし、『覚醒の儀』にはそう人手は必要ではない。
ここでルキナが『覚醒の儀』を果たし戻ってくるのを待っていても何の問題も無いのだ。
ルキナとロビンはそのまま山頂を目指し、再び飛竜に乗り飛び立つ。
その後ろ姿を、ミネルヴァは何時までも見送っていた。
◇◇◇◇◇
『虹の降る山』は未だ屍兵の襲撃を受けた形跡も無く、聖域としての美しい姿を保ったままであった。
滅びや絶望に包まれた世界の只中にあっても、この地には常に清涼な気配が満ち満ちている。
その麓には、ナーガの加護を求めて各地から逃げ延びてきた人々が村落を作っていた。
『ギムレー』の手がまだ及んでいない事に、そしてその影響も無い事にルキナは安堵するが。
『ギムレー』の影響がこの地には及んでいないのにも関わらず、ロビンの顔色は何処か悪い。
それでもその眼差しは優しさと意志の輝きに満ちていて、その手はルキナを力強く支えてくれていた。
麓へは降りずに、そのまま一直線に山頂の祭壇を目指して飛竜は飛んで行く。
そして山の中腹に差し掛かった時だった。
「おーい! ルキナー!!」
と、誰かに名を呼ばれ、慌ててルキナが下を見ると。
中腹に広がる林を抜けた場所で、シンシア達が大きく手を振っていた。
笑顔の彼女らが掲げる様に手にしているのは、白い輝きを放つ『宝玉』──『白炎』だ。
急いでそこに降り立つと、一斉にシンシア達はルキナに駆け寄ってくる。
「やったよ! 取り返したよ!!」
そう成し遂げた顔で興奮する様にシンシアは語り、他の皆もまた笑顔で頷いている。
「間に合って、本当に良かったわ……」
ホッとした様に胸を撫で下ろしたノワールは、『白炎』をルキナに手渡す。
残るは、『碧炎』のみだ。
ウード達は、今どの辺りにいるのであろうか、と。
ルキナが考えたその時。
上空から何かが羽ばたく音が聞こえ、皆が上を見上げた其処には。
「ジェローム! ミネルヴァも……」
ジェロームが愛竜のミネルヴァに乗って、ルキナを追い掛けてきていたのであった。
その手には、しっかりと『碧炎』が握られている。
どうやら『碧炎』の奪還に成功したジェローム達は、急ぎ『虹の降る山』へと向かっていた様なのであるが、途中でセレナ達が先に行っている事を知った為、ウード達はジェロームとミネルヴァに『碧炎』を託して先に『虹の降る山』へと急がせたらしい。
そして、ここで幸運にもルキナに追い付いたと言う訳だ。
相変わらずミネルヴァはロビンをジッと見詰めているのだが、以前会った時の困惑の色はもう何処にも無かった。
そして、何処か気遣わし気にロビンにその頭を擦り寄せる。
その反応にロビンは少し苦笑しながらも、優しくミネルヴァの頭を撫でた。
何故かジェロームは何も言わずにその様子を見守っている。
「『碧炎』を届けて下さって有り難うございます、ジェロームさん。
ミネルヴァさんもかなり疲労している様ですし、ジェロームさんはここで一旦休息を取って下さい」
そして、強行軍でここまでやって来てくれたセレナ達にも礼を言い、ここで一旦休む様にとロビンは言った。
それに反対意見は挙がらない。
ここまで来れば、『覚醒の儀』を成し遂げるだけであるし、『覚醒の儀』にはそう人手は必要ではない。
ここでルキナが『覚醒の儀』を果たし戻ってくるのを待っていても何の問題も無いのだ。
ルキナとロビンはそのまま山頂を目指し、再び飛竜に乗り飛び立つ。
その後ろ姿を、ミネルヴァは何時までも見送っていた。
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