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END【たった一つの、冴えたやり方】

◇◇◇◇◇




 まだ『竜の祭壇』の内部へと足を踏み入れていないにも関わらず、ルキナは身に突き刺さる様な嫌な気配をひしひしと感じている。
 少し離れた場所へ飛竜を降り立たせ、ロビンとルキナは砂漠の只中に静かに立つその神殿を見上げた。
 自分達の他には、周りには誰も居らず屍兵の姿も見えない。
 だが、この地に染み付いた怨念が、渦を巻くようにルキナ達を取り囲み見詰めている様な気すらも起こる。

『竜の祭壇』に向かうロビンの顔色は、悪い。
 立っている事すらも辛そうな顔なのに。
 それでも、ロビンは立ち止まろうとはしなくて。
 ルキナに出来るのは、そんなロビンを繋ぎ止めようと、その手を繋ぐ事だけであった。

 そして、二人は『竜の祭壇』の入り口に立つ。
 何かの呻き声と、怨嗟の声が。
『竜の祭壇』の奥地から流れてくる風に乗って、ルキナの耳に届いた。
 それを追い払おうと、ルキナは微かに頭を振る。


「ルキナさん、もしも、『僕』が──」


 ポツリと、ロビンが言おうとした言葉の続きを、ルキナはその手を強く握り直す事で止めた。
 何を言われようと、何が起ころうとも。
 ルキナには、その手を離すつもりが無い事を、ロビンに伝える為に。


「ロビンさんが、何者であっても私は構いません。
 例え、本来の貴方が『ギムレー』の手の者であったのだとしても……。
 ロビンさんは、ロビンさんです。
 私の『軍師』は、私の『半身』は…………。
 貴方だけなんです。
 どんな時でも、何があっても。
 私は貴方を信じます。
 だから、この手は絶対に離しません」


 だからこそ、『ギムレー』に負けないで、と。
 何度でもこの手で貴方を引き留めるから、何があっても絶対に諦めないで、と。
 そんな想いを籠めて、ルキナはロビンの横に立った。

 そのルキナの言葉に、ロビンは辛さを隠せていないまま、それでも嬉しそうに優しい微笑みを浮かべる。


「有り難うございます、ルキナさん。
 貴女のその言葉が、その想いが。
 何よりも『僕』の力になる、『僕』を引き留めてくれる……。
『僕』はこんな所で消える訳には、いかない。
『覚醒の儀』を見届けるまでは、絶対に……。
 大丈夫、です。
『僕』は、何があっても、貴女を守ります」


 そっと握り返されたその手は、温かくて。
 この手を喪いたくないと言う気持ちが、溢れ出してしまいそうになる。
 だが、今は。
 進まなくてはならないのだ。

 だからルキナとロビンは、繋いだ手を決して離さない様に固く結んで。
『竜の祭壇』の内部へと、足を踏み入れた。




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