このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

END【たった一つの、冴えたやり方】

◆◆◆◆◆




 何処までも広がる砂漠を越え、ルキナとロビンは着実に『竜の祭壇』へと近付いていく。
 そして、それと同時に。

 ロビンを苛む『何か』が、より一層強くなっていった。

 時折、苦悶の呻き声を上げて『何か』に耐えているロビンから、ルキナの肌を粟立たせる様な恐ろしい『何か』を感じる様になって。
 それはほんの一瞬の事であり、直ぐ様その恐ろしい『気配』は霧散し、何時もの優しいロビンの気配に戻るのだけれども。
 ロビンが『何か』に苛まれる間隔が、どんどんと短くなっていた。

 まだ『竜の祭壇』に辿り着いていないのに、これなのだ。
『竜の祭壇』に足を踏み入れた時、ロビンはどうなってしまうのだろう。
 ロビンは、ロビンのままで居られるのだろうか……。

 そんな不安が、ルキナの胸を押し潰す。
 だが、一番辛いのは、一番苦しいのは、ロビンなのだ。
 それが分かっているから、そして、そんなロビンを救いたいから。
 ルキナは何も言わずにただロビンに寄り添い続ける。

『何か』に苛まれている時に必死に耐えているロビンの手をルキナがそっと握ると、それに縋り付く様に……だけれどもルキナを傷付けない様な優しい力で握り返される。
 恐ろしい『何か』と必死で戦いながら、ロビンはルキナを傷付けない様にと、守っているのだ。
 それが、胸を締め付ける程に分かってしまうから。

 もしかしたら、ロビンが何時か『ロビン』では居られなくなってしまうのかもしれなくても。
 ルキナは、その手を離す事は出来ない。

 ロビンを苦しめる『何か』を討ち祓う力が自分には無い事が、耐え難い程辛くても。
 ロビンが、『ロビン』であり続けようと、戦い続けてくれているのならば。
 ルキナもその傍で、例え何も出来ないのだとしても、支え続けたいのだ……。


 自分が傍に居るのだと、この手を絶対に離さないのだと、何があっても貴方を独りにはしないのだと。
 そう語る様に、祈る様に、誓う様に。
 ルキナはロビンの傍に在り続けた。

 どうか、と、ルキナは祈る。
 それは神竜ナーガに対しての祈りなのかもしれないし、今は亡き父や母などへの祈りなのかもしれないし、大好きだった『ルフレおじさま』への祈りなのかもしれないし、誰でもない『何か』への祈りなのかもしれない。

 どうか、私からこの人を。
 何よりも大切で、ずっと傍に居て欲しい、掛け替えのないたった一つの『宝物』の様な愛しいこの人を。
 奪わないで下さい、と。
 彼が『彼』で在り続けられる様に、守って下さい、と。
 そう願い、祈り。

 そして。
『覚醒の儀』を終えて『ギムレー』を討った後も、ずっとずっとロビンと居られる事を、心の支えとして信じて。
 ルキナは、『何か』に蝕まれつつあるロビンを支えている。


『竜の祭壇』は、もう目前に迫っていた。




◇◇◇◇◇
1/10ページ
スキ