第五話・B『在るがままに愛しき人へ』
◆◆◆◆◆
『緋炎』に引き続き『蒼炎』も無事に奪還したルキナとロビンは、今度はペレジアへと向かっている。
荒れ狂う吹雪を抜けた其処に広がっていたのは、見渡す限りの荒野であった。
ペレジアは、ギムレーが復活して真っ先に人々が屍兵に駆逐されてしまったと言われている。
ルキナがかつての敵国を実際にこの目で見るのはこれが初めてであったが……。
人影どころか屍兵と思わしき影すら殆ど見当たらない荒野と砂漠だけが広がっている光景を見ると、『ギムレー』がもたらす滅びの果ての世界を見ている様な気すらした。
もし、『ギムレー』の手に落ちてしまえば。
イーリスも、何時かはこうなってしまうのだろうか……。
かつての光景からすれば荒れ果てていると言えるイーリスではあるが、それでもまだ人々が生きていける土地ではある。
こんな、死すらも消え去った『虚無』だけがそこに顕現しているかの様な大地とはまだ程遠い。
ぺレジアの大地の様に変わり果ててしまったイーリスを想像して、ルキナは身震いする。
そんなルキナを安心させる為にか。
飛竜を操りながらも、ロビンはルキナを優しく包む様に抱き締めて。
そして、大丈夫だと。
そうルキナを安心させる様に、囁いてくれた。
「大丈夫です、ルキナさん。
『覚醒の儀』を遂げれば、貴女を苦しめているこの絶望の『全て』が、終わるんです」
『覚醒の儀』を終えても、『ギムレー』を討たねば、この世界を覆う絶望を祓う事は出来ない。
でも、ロビンが居てくれるのなら。
そして、ロビンがそう言ってくれるのなら。
『ギムレー』にだって負けないのだ、と。
絶望を全て祓えるのだと。
ルキナはそう、思う事が出来る。
ロビンの言葉は、何時も不思議とルキナの心の奥深くにまで沁み渡っていく。
どんなに不安で押し潰されてしまいそうな時も。
ロビンの「大丈夫です」と言う言葉一つで、抱き締めてくれるその温かさで、繋いだその手の優しさと頼もしさで。
不安も恐れも、何もかもが溶ける様に消えてしまうのだ。
だからこそ、ルキナは……。
『宝玉』探索を始めてからずっと、何かに苦しんでいるロビンを、助けたかった。
ロビンが抱える不安や苦しみを、今度はルキナが……。
だけれども、ロビンは決してそれは口には出さない。
ルキナもロビンを守りたいのに、……守られてばかりだ。
それが、心苦しい。
だから、ルキナは。
背中越しに、ロビンに訊ねた。
「ロビンさんは、私にして欲しい事とか叶えて欲しい事って、ありますか?」
そう訊ねられたロビンは、暫し黙った後に、「一つだけ」と静かに答える。
個人的な要望を言った事が殆ど無いロビンが、『宝玉』探索以外で、やっとそう言った『お願い』を他でもない自分にして貰える事が嬉しくて。
「何でも言って下さい!
私が出来る事ならば、何でもしますから」
やっとロビンの力になれるのだ、と。
ルキナは胸を弾ませながらロビンに訊ねる。
そんなルキナを見たロビンが、背後で優しく微笑んだ様な気がして。
そして。
「ええ、では。
『覚醒の儀』を終えた時に、改めてお願いしますね」
と、そう柔らかな声でルキナに頼むのであった。
『覚醒の儀』を成功させなければならない理由がまた一つ増えたが、ルキナにはもう不安は無い。
何故なら、ルキナにはロビンが居てくれるのだ。
『緋炎』・『蒼炎』と、この短期間で二つもの『宝玉』を奪還出来たのだ。
だから、世界が滅びるよりも先に『炎の紋章』を完成させて『覚醒の儀』を行う事も。
そして、ロビンの『お願い』を叶える事も。
きっと、いや、必ず。
成し遂げる事が、出来る筈なのだから。
二人だけの旅路の中で。
ルキナは、きっと訪れる筈であろう『近い未来』を想って。
そして、それを現実にする為にも。
より一層、気力をその身に漲らせるのであった。
◇◇◇◇◇
『緋炎』に引き続き『蒼炎』も無事に奪還したルキナとロビンは、今度はペレジアへと向かっている。
荒れ狂う吹雪を抜けた其処に広がっていたのは、見渡す限りの荒野であった。
ペレジアは、ギムレーが復活して真っ先に人々が屍兵に駆逐されてしまったと言われている。
ルキナがかつての敵国を実際にこの目で見るのはこれが初めてであったが……。
人影どころか屍兵と思わしき影すら殆ど見当たらない荒野と砂漠だけが広がっている光景を見ると、『ギムレー』がもたらす滅びの果ての世界を見ている様な気すらした。
もし、『ギムレー』の手に落ちてしまえば。
イーリスも、何時かはこうなってしまうのだろうか……。
かつての光景からすれば荒れ果てていると言えるイーリスではあるが、それでもまだ人々が生きていける土地ではある。
こんな、死すらも消え去った『虚無』だけがそこに顕現しているかの様な大地とはまだ程遠い。
ぺレジアの大地の様に変わり果ててしまったイーリスを想像して、ルキナは身震いする。
そんなルキナを安心させる為にか。
飛竜を操りながらも、ロビンはルキナを優しく包む様に抱き締めて。
そして、大丈夫だと。
そうルキナを安心させる様に、囁いてくれた。
「大丈夫です、ルキナさん。
『覚醒の儀』を遂げれば、貴女を苦しめているこの絶望の『全て』が、終わるんです」
『覚醒の儀』を終えても、『ギムレー』を討たねば、この世界を覆う絶望を祓う事は出来ない。
でも、ロビンが居てくれるのなら。
そして、ロビンがそう言ってくれるのなら。
『ギムレー』にだって負けないのだ、と。
絶望を全て祓えるのだと。
ルキナはそう、思う事が出来る。
ロビンの言葉は、何時も不思議とルキナの心の奥深くにまで沁み渡っていく。
どんなに不安で押し潰されてしまいそうな時も。
ロビンの「大丈夫です」と言う言葉一つで、抱き締めてくれるその温かさで、繋いだその手の優しさと頼もしさで。
不安も恐れも、何もかもが溶ける様に消えてしまうのだ。
だからこそ、ルキナは……。
『宝玉』探索を始めてからずっと、何かに苦しんでいるロビンを、助けたかった。
ロビンが抱える不安や苦しみを、今度はルキナが……。
だけれども、ロビンは決してそれは口には出さない。
ルキナもロビンを守りたいのに、……守られてばかりだ。
それが、心苦しい。
だから、ルキナは。
背中越しに、ロビンに訊ねた。
「ロビンさんは、私にして欲しい事とか叶えて欲しい事って、ありますか?」
そう訊ねられたロビンは、暫し黙った後に、「一つだけ」と静かに答える。
個人的な要望を言った事が殆ど無いロビンが、『宝玉』探索以外で、やっとそう言った『お願い』を他でもない自分にして貰える事が嬉しくて。
「何でも言って下さい!
私が出来る事ならば、何でもしますから」
やっとロビンの力になれるのだ、と。
ルキナは胸を弾ませながらロビンに訊ねる。
そんなルキナを見たロビンが、背後で優しく微笑んだ様な気がして。
そして。
「ええ、では。
『覚醒の儀』を終えた時に、改めてお願いしますね」
と、そう柔らかな声でルキナに頼むのであった。
『覚醒の儀』を成功させなければならない理由がまた一つ増えたが、ルキナにはもう不安は無い。
何故なら、ルキナにはロビンが居てくれるのだ。
『緋炎』・『蒼炎』と、この短期間で二つもの『宝玉』を奪還出来たのだ。
だから、世界が滅びるよりも先に『炎の紋章』を完成させて『覚醒の儀』を行う事も。
そして、ロビンの『お願い』を叶える事も。
きっと、いや、必ず。
成し遂げる事が、出来る筈なのだから。
二人だけの旅路の中で。
ルキナは、きっと訪れる筈であろう『近い未来』を想って。
そして、それを現実にする為にも。
より一層、気力をその身に漲らせるのであった。
◇◇◇◇◇