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第五話・B『在るがままに愛しき人へ』

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 かつてフェリアの西の王に代々伝わっていたとされていた『緋炎』は、西の王バジーリオがヴァルム帝国との戦の最中にヴァルハルト皇帝と対峙し命を落とした時から行方知れずになっていた。
 予てより宝玉と台座を執拗に狙っていたペレジアの手に落ちたのかもしれないが、結局その真相は定かでは無い。

 フェリアより喪われた宝玉が巡り巡ってフェリアに隠されていると言うのも、一つの運命の巡り合わせと言うものなのかもしれないな、とルキナは思う。
 まあ、最早その地は人が住める様な場所ではなく、ギムレーの領域……正確には屍兵ばかりが蠢く地と化しているのだけれども。

 こうやって空路を行く分には、屍兵との戦闘など殆ど無い。
 時折休息を取る為に地に降りるが、ロビンがその都度屍兵達の目の届かぬ場所を探してくれるので、戦闘になった事など一度か二度程……。
 しかも、ほんの数分で終わる程度の小規模なモノで止まっていた。
 その為、今の所ルキナもロビンも、全くと言っても良い程に消耗していない。
 しかし、『緋炎』が隠されている地には、恐らく生半な事では突破出来ないであろう程の屍兵が待ち構えているであろう。
 そこを突破し、『緋炎』を手に入れられるのか……。
 そして、残りの『宝玉』と『炎の台座』を無事に手に入れられるのか……。
 不安は尽きないが、それでも。
 ロビンが共に居るのであれば、ルキナには恐れる事など何も無かった。


「もうそろそろ、『緋炎』が隠された神殿跡が見えて来る筈です……。
 ルキナさん。準備は、大丈夫ですか?」


 身を裂く様なフェリアの冷たい風に吐息を白く棚引かせながらロビンがルキナに訊ねる。
 身を包むロビンの温もりを感じながら、ルキナは頷いた。


「大丈夫です。
 どんな相手が待ち構えていても、私は……私達は、負けません……!」


 その言葉に、ロビンもまた、力強く頷く。



「ええ、『僕』とルキナさんが居れば、絶対に大丈夫です。
『僕』が、貴女を絶対に守りますから」



『緋炎』が隠されていると言う、廃墟と化したかつての神殿は、もう目の前に迫っていた。




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