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第五話・B『在るがままに愛しき人へ』

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 イーリスを発ったルキナは、荒れ果てた大地をロビンが操る飛竜の背から見下ろしていた。
 少しでも早く移動する為に、馬ではなくて飛竜をロビンは移動手段に選んだのだ。
 乗り手を失ったまま王城の厩舎に保護されていた飛竜をロビンは手懐け、そして危う気も無く操っている。

 基本的に主と認めた相手以外は背に乗せようとはしない飛竜は、馬や(根本的に男性を忌避する)天馬よりも扱いが難しい。
 主を失った飛竜が、その後二度と主を持たない事は珍しくも無い程だ。
 ルキナの仲間であるジェロームが、問題無く先代の主を喪った後のミネルヴァと心を通わせられるのは、彼が先代の主とは親子であり彼自身も幼い頃からミネルヴァに慣れ親しんできたからだ。
 そう言った特殊な例でも無い限り、先代の主を喪った飛竜を扱うのは、まだ飛竜としての調教が済んでない若竜を相手取る時よりも困難であるとすら言われている。
 それなのに、ロビンはあっさりと飛竜を手懐けたばかりか、ルキナもその背に乗せて飛ばせる程にまで完璧に操っていた。

 この人は本当に色々と出来るのだなとルキナが沁々と思いながらも、確かにこれならば馬で各地を巡るよりも早くに事が済むであろうと、彼が算出した『最速で二月』の言葉の意味を理解したのであった。

 荷物も必要なモノだけを最低限に纏めたので、飛竜に過剰な負荷が掛かるでもなく。
 飛竜は軽々と、ルキナとロビンを背に乗せて大空へと舞い上がる。
 その背に自分を抱き抱える様にして飛竜を操るロビンの温かさを感じながら。
 ルキナは、最初の目的地であるフェリアの山中に在る『緋炎』を一路目指すのであった。




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