END【掛け違えた道の先で、君と】
■■■■■■
屍兵の大群を何とか潜り抜けて、漸く辿り着いた『虹の降る山』は……。
かつての面影の一切を喪った地と化していた。
ナーガの領域であるにも関わらずに屍兵は蠢き地に満ちて。
美しい森林が拡がっていた山裾はもう見る陰も無い。
まさか、既に『ギムレー』の手に陥落してしまったのかと。
そう思ってしまいそうになる程の惨状に、仲間達は皆絶句している。
だが、まだだ。
まだ、諦めるには、早過ぎる。
ナーガはまだ応えてくれると、そう自分達が信じなくてどうすると言うのだ。
そう仲間と自分を叱咤して、ルキナは山頂への行く手を阻む屍兵達へと突撃する。
それに続く様にして、仲間達もまた手に武器を取って屍兵達と斬り結び始めた。
屍兵の呻き声と仲間達の怒号、剣や槍等が打ち鳴らす音が響く戦場で、ルキナ達は善戦していて。
徐々に徐々に、屍兵達を圧して山頂へと近付いていく。
そんな中で、その異変に真っ先に気が付いたのは。
タグエルであるが故に人よりも遥かに耳の良いシャンブレーであった。
彼は暫し立ち止まり、不安気に辺りを見回し始める。
次にそれに気付いたのは、騎竜であるミネルヴァと彼女を駆るジェロームだ。
落ち着き無く周囲の警戒を始めたミネルヴァの様子に、尋常ならぬ何かが起きているのだと察した。
次いでンンが、ペガサスを駆るシンシアもまた異常に気付く。
そしてそれからかなり遅れてルキナ達もソレに気が付いた。
「何よ……アレ……」
セレナの口から溢れ落ちたのは、そんな言葉で。
そしてそれは、この場の全員に共通する思いであった。
厚い雲が重苦しく何処までも続く空は、薄暗いものである筈なのに。
夕刻でもないのに、まるで空全体が燃えている様に紅く紅く染まっている。
そして、その空を悠々と泳ぐ様に飛ぶ『ソレ』は……。
未だ彼方に居る筈なのに、それでいても尚視界を埋め尽くす程に巨大な、三対六翼を持つ竜であった。
人智を越えたその強大さに、誰もが呑まれた様にそれを見やる事しか出来ない。
アレは、正しく……。
「邪竜、『ギムレー』……」
『覚醒の儀』の気配を察知してなのか、それとも他の理由なのか。
それは分からないが。
何にせよ、邪竜『ギムレー』が、この地を侵攻しようとしているのだけは事実だ。
「急げルキナ!
世界に混沌をもたらすあの邪竜がここに辿り着く前に、秘められし力を解放させる儀を執り行うんだ!
道は俺達が切り開く!!
ルキナは、山頂だけを目指して走れ!!」
ウードがそう声を上げ、仲間達も皆それに頷いて。
その道を阻もうと群がっている屍兵達へと武器を向ける。
ルキナは、仲間達の想いに力強く頷き、駆け出した。
今は一刻も早く『覚醒の儀』を行わねば、そしてファルシオンにナーガの力を甦らせねばならない。
そうでなくては、ここで全てが終わってしまう。
仲間を助けたいのなら、急ぐしかないのだ。
大丈夫、『覚醒の儀』の手順は頭に叩き込んである。
この手には、『炎の紋章』も、ある。
だから、後は間に合わせるだけだ……!
山頂を目指してひた走るルキナの姿を、『ギムレー』が彼方から静かに見詰めているのを。
ルキナは、気付く事が出来なかった……。
◇◇◇◇
屍兵の大群を何とか潜り抜けて、漸く辿り着いた『虹の降る山』は……。
かつての面影の一切を喪った地と化していた。
ナーガの領域であるにも関わらずに屍兵は蠢き地に満ちて。
美しい森林が拡がっていた山裾はもう見る陰も無い。
まさか、既に『ギムレー』の手に陥落してしまったのかと。
そう思ってしまいそうになる程の惨状に、仲間達は皆絶句している。
だが、まだだ。
まだ、諦めるには、早過ぎる。
ナーガはまだ応えてくれると、そう自分達が信じなくてどうすると言うのだ。
そう仲間と自分を叱咤して、ルキナは山頂への行く手を阻む屍兵達へと突撃する。
それに続く様にして、仲間達もまた手に武器を取って屍兵達と斬り結び始めた。
屍兵の呻き声と仲間達の怒号、剣や槍等が打ち鳴らす音が響く戦場で、ルキナ達は善戦していて。
徐々に徐々に、屍兵達を圧して山頂へと近付いていく。
そんな中で、その異変に真っ先に気が付いたのは。
タグエルであるが故に人よりも遥かに耳の良いシャンブレーであった。
彼は暫し立ち止まり、不安気に辺りを見回し始める。
次にそれに気付いたのは、騎竜であるミネルヴァと彼女を駆るジェロームだ。
落ち着き無く周囲の警戒を始めたミネルヴァの様子に、尋常ならぬ何かが起きているのだと察した。
次いでンンが、ペガサスを駆るシンシアもまた異常に気付く。
そしてそれからかなり遅れてルキナ達もソレに気が付いた。
「何よ……アレ……」
セレナの口から溢れ落ちたのは、そんな言葉で。
そしてそれは、この場の全員に共通する思いであった。
厚い雲が重苦しく何処までも続く空は、薄暗いものである筈なのに。
夕刻でもないのに、まるで空全体が燃えている様に紅く紅く染まっている。
そして、その空を悠々と泳ぐ様に飛ぶ『ソレ』は……。
未だ彼方に居る筈なのに、それでいても尚視界を埋め尽くす程に巨大な、三対六翼を持つ竜であった。
人智を越えたその強大さに、誰もが呑まれた様にそれを見やる事しか出来ない。
アレは、正しく……。
「邪竜、『ギムレー』……」
『覚醒の儀』の気配を察知してなのか、それとも他の理由なのか。
それは分からないが。
何にせよ、邪竜『ギムレー』が、この地を侵攻しようとしているのだけは事実だ。
「急げルキナ!
世界に混沌をもたらすあの邪竜がここに辿り着く前に、秘められし力を解放させる儀を執り行うんだ!
道は俺達が切り開く!!
ルキナは、山頂だけを目指して走れ!!」
ウードがそう声を上げ、仲間達も皆それに頷いて。
その道を阻もうと群がっている屍兵達へと武器を向ける。
ルキナは、仲間達の想いに力強く頷き、駆け出した。
今は一刻も早く『覚醒の儀』を行わねば、そしてファルシオンにナーガの力を甦らせねばならない。
そうでなくては、ここで全てが終わってしまう。
仲間を助けたいのなら、急ぐしかないのだ。
大丈夫、『覚醒の儀』の手順は頭に叩き込んである。
この手には、『炎の紋章』も、ある。
だから、後は間に合わせるだけだ……!
山頂を目指してひた走るルキナの姿を、『ギムレー』が彼方から静かに見詰めているのを。
ルキナは、気付く事が出来なかった……。
◇◇◇◇