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END【掛け違えた道の先で、君と】

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 屍兵の大群を何とか潜り抜けて、漸く辿り着いた『虹の降る山』は……。
 かつての面影の一切を喪った地と化していた。
 ナーガの領域であるにも関わらずに屍兵は蠢き地に満ちて。
 美しい森林が拡がっていた山裾はもう見る陰も無い。
 まさか、既に『ギムレー』の手に陥落してしまったのかと。
 そう思ってしまいそうになる程の惨状に、仲間達は皆絶句している。

 だが、まだだ。
 まだ、諦めるには、早過ぎる。
 ナーガはまだ応えてくれると、そう自分達が信じなくてどうすると言うのだ。

 そう仲間と自分を叱咤して、ルキナは山頂への行く手を阻む屍兵達へと突撃する。
 それに続く様にして、仲間達もまた手に武器を取って屍兵達と斬り結び始めた。

 屍兵の呻き声と仲間達の怒号、剣や槍等が打ち鳴らす音が響く戦場で、ルキナ達は善戦していて。
 徐々に徐々に、屍兵達を圧して山頂へと近付いていく。
 そんな中で、その異変に真っ先に気が付いたのは。
 タグエルであるが故に人よりも遥かに耳の良いシャンブレーであった。
 彼は暫し立ち止まり、不安気に辺りを見回し始める。

 次にそれに気付いたのは、騎竜であるミネルヴァと彼女を駆るジェロームだ。
 落ち着き無く周囲の警戒を始めたミネルヴァの様子に、尋常ならぬ何かが起きているのだと察した。

 次いでンンが、ペガサスを駆るシンシアもまた異常に気付く。
 そしてそれからかなり遅れてルキナ達もソレに気が付いた。


「何よ……アレ……」


 セレナの口から溢れ落ちたのは、そんな言葉で。
 そしてそれは、この場の全員に共通する思いであった。

 厚い雲が重苦しく何処までも続く空は、薄暗いものである筈なのに。
 夕刻でもないのに、まるで空全体が燃えている様に紅く紅く染まっている。
 そして、その空を悠々と泳ぐ様に飛ぶ『ソレ』は……。
 未だ彼方に居る筈なのに、それでいても尚視界を埋め尽くす程に巨大な、三対六翼を持つ竜であった。
 人智を越えたその強大さに、誰もが呑まれた様にそれを見やる事しか出来ない。
 アレは、正しく……。


「邪竜、『ギムレー』……」


『覚醒の儀』の気配を察知してなのか、それとも他の理由なのか。
 それは分からないが。
 何にせよ、邪竜『ギムレー』が、この地を侵攻しようとしているのだけは事実だ。


「急げルキナ! 
 世界に混沌をもたらすあの邪竜がここに辿り着く前に、秘められし力を解放させる儀を執り行うんだ! 
 道は俺達が切り開く!! 
 ルキナは、山頂だけを目指して走れ!!」


 ウードがそう声を上げ、仲間達も皆それに頷いて。
 その道を阻もうと群がっている屍兵達へと武器を向ける。

 ルキナは、仲間達の想いに力強く頷き、駆け出した。

 今は一刻も早く『覚醒の儀』を行わねば、そしてファルシオンにナーガの力を甦らせねばならない。
 そうでなくては、ここで全てが終わってしまう。
 仲間を助けたいのなら、急ぐしかないのだ。

 大丈夫、『覚醒の儀』の手順は頭に叩き込んである。
 この手には、『炎の紋章』も、ある。
 だから、後は間に合わせるだけだ……! 


 山頂を目指してひた走るルキナの姿を、『ギムレー』が彼方から静かに見詰めているのを。
 ルキナは、気付く事が出来なかった……。




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