このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

【後書き】

◆◆◆◆◆




 それが、決して叶わない夢である事は、ルキナは誰よりも分かっている。
 死者は蘇らず、この世から消えた存在に現世の者が逢う術など存在しない。

 それでも、愛しいあの人への想いは。
 何れ程の時が過ぎ去ろうとも、決して薄れゆく事も無く。
 夜空を古の時代から変わらずに彩る星明かりの様に、何時もルキナの胸の中に在った。

 ふとした瞬間に、彼との思い出が色鮮やかに甦り。
 もう逢えぬと、それが叶わぬと理解しながらも。
……また逢いたいと、そう心から想う。

 夕暮れの紅に、彼の面影を探して。
 月を仰ぎ見ては、彼を想って。
 星の輝きの中に、彼と過ごした日々を映して。
 眠れぬ夜は、忘れる事など出来ぬ彼の姿を想い描いて。
 夢の中で、彼の腕に抱かれて眠る。
それはいっそ【呪い】ですらあるのかもしれないけれど。
ルキナにとっては何よりも愛しい【呪い】であった。

 何時かまた逢いたいと、消え行くその間際に彼もまたそう願っていた事だけを微かな望みとして。
 叶わぬ望みであっても、もう逢えぬ定めなのだとしても。
 この想いが満ちゆけば、何時か。
 この祈りを失くさずに懐き続けていれば、何処かで。
 時の環の彼方で、この命が廻りゆく何処かで。
また……再び『彼』に逢えるのではないか、と。
 夢の様なその願いを、信じ続けて。



 ルキナは、『彼』だけがいない優しくて残酷な救われた世界の中で、『彼』が守った命を懐いて、生きていた。




◇◇◇◇◇
6/7ページ
スキ