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END【あなたが居れば】

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 斯くして、世界から『最後の希望』が失われた。
 最後の『聖王の末裔』は邪竜の手に堕ち、最早人々に滅びを免れる術は無かった。
 邪竜と堕ちた王女は、彼等を傷付け得る神竜と神竜を継ぐ者達を討ち滅ぼし、世界は彼等を止める術を完全に喪った。

 だが、ある時を境に屍兵が人々を襲う事は無くなった。

 僅かに生き残っていた人々は、同じく僅かに残された生存圏で、細々とした営みを始める事を邪竜に許されたのだ。
 全ての『希望』を喪った人々に邪竜に抵抗する意志などは無く、最早邪竜にとってはヒトは脅威とは成り得なかったからなのかもしれない。

 それと時を同じくして、空を厚く覆い尽くしていた雲も時折は晴れる様になり、荒れ果てた死の大地もほんの僅かだが甦った。
 ヒトへの興味をとうに喪っていた邪竜であったが、その眷族となった王女の事を想っての行動であったのかもしれない。
 邪竜の真意が何処にあるのかなど、ヒトの考えの及ぶ処では無いのかもしれないが。
 何にせよ、人は滅びの瀬戸際で踏み止まったのだ。
 その後の邪竜については、その眷族となり最早人ではなくなった王女と、その間に生まれた子供達を何よりも大切にしていたとだけは伝えられている。
 だが、ある時を境に邪竜達は姿を消した。
 この世界に飽いて新天地を求めて異界を渡ったとも、或いは単にヒトの前に姿を見せなくなっただけとも言われているが、その真実は誰にも分からないままである。

 ただ──


 邪竜と王女が、どんな時であってもお互いに決して離れる事が無かった事だけは、確かな事実である様だ。
 彼等が何処に居るのだとしても。
 遠い遠い時の最果てまでも、きっと彼等は共に在り続けるのであろう。






【あなたが居れば:END】


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