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END【終焉の果て】

◇◇◇◇◇




 ロビンが突如ルキナの前から姿を消してから、もう二週間も経ってしまっていた。

 イーリスの『希望』とまで謳われた二人の内の片翼が喪われたともなれば民に与える影響は計り知れない。
 故にロビンが忽然と姿を消した事は一部の兵達を除いて箝口令が敷かれ、今はまだ多くの人々はその事実を知らない。
 そしてロビン捜索の密命を帯びた一部の将兵が手分けしてロビンの行方を追ったが、何一つとして手懸かりを得られなかった。

 ロビンの存在を厭う何者かの手に落ちたのか、或いは自らの意志でルキナの元を去ったのか。
 それは、誰にも分からないが……。
 ルキナにとっては、最愛の軍師が自分の傍に居ないと言う事だけが絶対の事実である。

 ロビンが消息を絶って一週間程が経った時には、ルキナは窶れ果てていた……。

 どうして、と。
 幾度そう思ったのだろう。
 何処に行ってしまったのか、と。
 幾度そう思ったのだろう。

 ロビンは、確かにルキナの傍を離れないと、そう誓ってくれたのに……。
 自分は、また……喪ってしまったのか、と。
 ルキナはそう思い悩み続け、食事もロクにとれず、眠る事も出来なくなってしまっていた。

 ロビンが居た場所に、突如大きな虚ろが生まれてしまったかの様で。
 目に映る何もかもが虚無的にすら、感じられる様になってしまっていた。

 ロビンが傍に居てくれるだけで彩りが甦って見えた世界は、最早灰色を通り越して色すら喪い。
 それでも尚ルキナの耳に届く人々の『願い』が、酷く耳障りにすら聴こえてきてしまう。

 ロビンの声を聞きたい、ロビンに名前を呼んで欲しい、ロビンの微笑みが欲しい、ロビンにただ傍に居て欲しい……。
 だが幾らルキナが願えども、ロビンがその傍に居ない事実は変わらず。
 その度に、その現実に打ちのめされる。

 夢の中でならロビンが傍に居るのに、目覚めてしまえばその姿は何処にも無い。
 ルキナは次第に夢から起きる事が、怖くなってしまった。
 ロビンの温もりが何処にも無い朝が、ロビンが何処にも居ない現実が、それを実感する事が……辛くて。

 それでも、ルキナは進まなければならない、戦わなければならない。
 戦い進み続ける事こそが、ルキナに課せられた『使命』なのだから。
 ルキナは、人々の『希望』なのだから…………。

 生きていく為に必要な全てに限界を迎えていても、その使命感に縋る様に、ルキナは何とか生きていた。
 もう気力も何もかもが尽き果てた身体を、ただ使命感による惰性に引き摺られる様にしながら、今日も先の見えない戦いを続けているのであった。



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