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第二話『記憶の彼方の遠い貴方に』

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 ルキナにとって、ロビンとは光であった。

 この絶望だけが全てを呑み込もうとする世界の中で、己の無力に苛まれながら彷徨うしかなかったルキナの元に射し込まれた、一条の光そのものだ。
 もしあの日ロビンに出逢えていなかったら、と時折ルキナは想像する。
 そしてその度に、その恐ろしい“もしも”に、心も身体も……己の何もかもが凍て付いてしまいそうな恐怖に襲われるのだ。

 きっと、きっと……。
 ロビンが居なければ、遠からずルキナの心は限界を迎えていただろう。
 独りで背負うには重過ぎる『希望』に、己の無力を責める自分の心その物に、終わりが見えない絶望に。
 何もかもを押し潰されていた。
 でも、ロビンがそれを変えてくれたのだ。

 ロビンは、ルキナが背負うモノを分かち合おうとしてくれた。
 ロビンは、ルキナに守るべきものを守る為の術を与えてくれた。
 ロビンは、絶望の中で迷い立ち止まりかけていたルキナの手を取って道を示してくれた。

 ……ロビンは、屍兵に脅かされる人々だけでなく、ルキナの心そのものも救い上げてくれていたのだ。
 そして、それだけでは無かった。

 ロビンの策を以てしても零れ落ちてしまった民の命を前にルキナが涙を溢す時には、何時だってロビンが寄り添ってその哀しみを分かち合ってくれる。
 救う事が出来た民に感謝の言葉を向けられた時には、慣れぬ言葉に戸惑うルキナにロビンはそっと微笑み掛けてくれる。

 哀しみも喜びも、共に分かち合ってくれるロビンは、何時の間にか共に戦う仲間と言う枠を越えた存在となっていったのだ。
 故にこそ、ルキナの心の大きな部分をロビンが占める様になったのは、自然の成り行きであったのだろう。

 ロビンの姿が見えないと、酷く不安を感じてその姿を探してしまう。
 ロビンの声が聞こえただけで、心が軽くなる。
 ロビンの姿を、何時も目で追いかけてしまう。
 その眼差しが自分を見詰めてくれるだけで、心が温かくなる。


 ……最早、ロビンが居ない世界を、ルキナには想像する事すら出来なくなってしまっていた。





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