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その他の短編

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 きっと、こんな事を『あの人』……私の父さんは、望んではいないであろう事位は分かっていた。

 優しく時に厳しく私を導いてくれた父さんは、私にとって目標であり何よりも大切な家族だった。
 私を、母さんを、誰よりも愛し大切にしていた父さんは、何があってもこんな事は望んではいなかったであろう。

 私には生きていて欲しいと、そう望んでくれていただろうし。
 もしそれ以外を望むのだとしても、ルキナさん達と共に、邪竜と化してしまった自分を討ってくれる事を望んでいただろう。

 少なくとも。
 邪竜になってしまった自分に与し、世界を人を救わんと戦うルキナさんと敵対する事は望んではない筈だ。

 だから……きっと。
 私のこの行動は、父さんの望みを想いを踏み躙る様な行為になるのだろう。

 ……そこまで分かっていても、私が邪竜ギムレーの駒として……変わり果ててしまった父さんだった存在のその傍に居る事を選んでしまったのは。
 孤独になってしまった父さんを、独りにはしておけなかったからだった。

『半身』であったクロムさんを殺し、共に幾度も死闘を潜り抜けてきた固い絆で結ばれていた仲間達を殺し、誰よりも愛していた母さんを亡くした父さんには、もう……私しか居ない。
 私しか、邪竜ギムレーではない……仲間達の為に世界の為に戦っていた『ルフレ』の姿を知る人は居ないのだ。

 私以外の世界の全ての人にとって、今の【父さん】は、絶望の根源であり忌むべき邪竜でしかない。
 そこに至ってしまうまでに父さんの絶望があった事を、父さんはそんな事を何一つとして望んで望んでいなかった事を、父さんが何れ程この世界を愛し守ろうとその身を捧げていたのかを……。
 もう、今となっては、私以外の誰も知らないのだ。
 邪竜として覚醒させられてしまった父さんの果ての無い孤独を、誰も知らない……分からない。

 それは、『誰』の所為でも無いし……仕方がない事であるのかもしれないけれど。

 でも。
 父さんには最早邪竜ギムレーとして討たれる事しか、そうやってこれ以上世界を壊す前にその命を以て世界を救うしか『救い』が残されていないのだとしても。
 ならば、だからこそせめて。
 その最期の瞬間まで、その孤独に寄り添ってあげたいのだ。
 貴方を覚えている存在は確かにここに居たのだ、と。
 貴方は、一人ではないのだ、と。

 地獄への道行きを共に逝く事くらい、可愛い娘の我が儘として赦して欲しい。
 例え行き着く先が無間地獄の果てなのだとしても。
 二人なら、きっと寂しくはない筈なのだから。




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