クロルフ短編
◇◇◇◇
降り頻る雨の中、暗く厚い雲に覆われた天を見上げるルフレは泣いているかの様であった。
そして、クロムが少しでも目を離してしまえば、雨煙の中へと溶ける様に消えてしまいそうな……そんな危うさと儚さがその背からは滲み出ていて。
だからクロムは。
「ルフレ……!」
彼女を繋ぎ止めようと、そんな必死さすら滲ませながらルフレの名を呼ぶ。
「クロムさん……」
振り返った彼女の表情は、暗く……頬を伝い落ちる雨の雫は零れ落ちる涙の様にも見えた。
雨の中、濡れ細ぼる彼女の姿は、とても小さく弱々しい。
何時もクロム達を導く凜としたその姿からは、とても想像出来ない程に。
そんな初めて見る彼女の姿に、クロムは動揺を隠し切れない。
だが、ここで独り静かに傷付き涙を溢す彼女を放って置ける筈なんて無かった。
「何処にも行くな……!
俺には、お前が必要なんだ……!!
俺を置いていかないでくれ……、頼む……」
懇願する様にそうルフレへと訴えかけるが、それでもルフレの表情は晴れない。
寧ろクロムの言葉に何事かを一層思い詰める様なその姿を、どうすればクロムは繋ぎ止めてやれるのだろう。
「クロムさん、ですが、私は……」
何かを言おうとしたルフレの言葉を遮る様に、堪らずクロムはルフレを抱き締めた。
雨に打たれ濡れ細ぼったその身体は冷えてはいたけれども。
その腕の中に、彼女の微かな温もりと、生命の重みを、クロムは確かに感じる。
「例えお前が何者であっても、それでもお前はお前だ。
世界でたった一人の、俺の……一番大切な、ルフレなんだ……。
だから、お前の中に僅かでも迷いがあるのなら、行かないでくれ……ルフレ。
俺を独りにするな……」
「クロムさん……わたし、は……私は……。
あなたと、生きていても、良いのですか……?
私は、ギムレーの……」
戦慄く様に震えるルフレの柔らかな唇から零れ落ちる言葉には、酷く儚く弱々しいのに……それでも溺れる者が何かに縋ろうとしている様な、そんな必死さも其処にはあった。
葛藤に苛まれ自身を呪うも、それでもルフレは確かにクロムへの想いを捨ててはいなかったのだ。
そんなルフレが何よりも愛しくて、クロムはこの腕の中の命を離してなるものか、運命なんかに奪われて堪るか、と。
世界に繋ぎ止めるかの様に強く抱き締め直す。
「良いんだ……。
お前がギムレーだろうと何だろうと、それでも俺たちは出逢い、こうしてここまでやって来た。
俺とお前が辿ってきた道は、誰にも否定なんてさせやしない……」
例えルフレが何時か何処かの未来でクロムを殺すのだとしても。
それでも、クロムのこの腕の中に居る彼女の手を離す選択肢なんて、クロムには存在しない。
最早、彼女を喪った後の色を喪った世界で独り生きていくなんて、クロムには耐えられない……。
本来は相反するべき存在であろうとも、構わない。
彼女無しでは自分の未来を描けない程に、クロムはルフレを愛しているのだ。
ならば、例え何が阻むのだとしても、共に生きるより他にクロムが選びたい道は無い。
「ルフレ、俺はずっとお前の傍に居る。
何があっても、例え死が俺たちを別とうとも。
だから、お前も……俺の傍に居てくれ……」
涙を溢しながらも静かに頷いたルフレと、クロムは降り頻る雨に打たれながら口付けを交わす。
二人だけを世界から切り離したかの様に永遠にも感じるそれは、何よりも熱く……そして何処までも切ないものであった。
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降り頻る雨の中、暗く厚い雲に覆われた天を見上げるルフレは泣いているかの様であった。
そして、クロムが少しでも目を離してしまえば、雨煙の中へと溶ける様に消えてしまいそうな……そんな危うさと儚さがその背からは滲み出ていて。
だからクロムは。
「ルフレ……!」
彼女を繋ぎ止めようと、そんな必死さすら滲ませながらルフレの名を呼ぶ。
「クロムさん……」
振り返った彼女の表情は、暗く……頬を伝い落ちる雨の雫は零れ落ちる涙の様にも見えた。
雨の中、濡れ細ぼる彼女の姿は、とても小さく弱々しい。
何時もクロム達を導く凜としたその姿からは、とても想像出来ない程に。
そんな初めて見る彼女の姿に、クロムは動揺を隠し切れない。
だが、ここで独り静かに傷付き涙を溢す彼女を放って置ける筈なんて無かった。
「何処にも行くな……!
俺には、お前が必要なんだ……!!
俺を置いていかないでくれ……、頼む……」
懇願する様にそうルフレへと訴えかけるが、それでもルフレの表情は晴れない。
寧ろクロムの言葉に何事かを一層思い詰める様なその姿を、どうすればクロムは繋ぎ止めてやれるのだろう。
「クロムさん、ですが、私は……」
何かを言おうとしたルフレの言葉を遮る様に、堪らずクロムはルフレを抱き締めた。
雨に打たれ濡れ細ぼったその身体は冷えてはいたけれども。
その腕の中に、彼女の微かな温もりと、生命の重みを、クロムは確かに感じる。
「例えお前が何者であっても、それでもお前はお前だ。
世界でたった一人の、俺の……一番大切な、ルフレなんだ……。
だから、お前の中に僅かでも迷いがあるのなら、行かないでくれ……ルフレ。
俺を独りにするな……」
「クロムさん……わたし、は……私は……。
あなたと、生きていても、良いのですか……?
私は、ギムレーの……」
戦慄く様に震えるルフレの柔らかな唇から零れ落ちる言葉には、酷く儚く弱々しいのに……それでも溺れる者が何かに縋ろうとしている様な、そんな必死さも其処にはあった。
葛藤に苛まれ自身を呪うも、それでもルフレは確かにクロムへの想いを捨ててはいなかったのだ。
そんなルフレが何よりも愛しくて、クロムはこの腕の中の命を離してなるものか、運命なんかに奪われて堪るか、と。
世界に繋ぎ止めるかの様に強く抱き締め直す。
「良いんだ……。
お前がギムレーだろうと何だろうと、それでも俺たちは出逢い、こうしてここまでやって来た。
俺とお前が辿ってきた道は、誰にも否定なんてさせやしない……」
例えルフレが何時か何処かの未来でクロムを殺すのだとしても。
それでも、クロムのこの腕の中に居る彼女の手を離す選択肢なんて、クロムには存在しない。
最早、彼女を喪った後の色を喪った世界で独り生きていくなんて、クロムには耐えられない……。
本来は相反するべき存在であろうとも、構わない。
彼女無しでは自分の未来を描けない程に、クロムはルフレを愛しているのだ。
ならば、例え何が阻むのだとしても、共に生きるより他にクロムが選びたい道は無い。
「ルフレ、俺はずっとお前の傍に居る。
何があっても、例え死が俺たちを別とうとも。
だから、お前も……俺の傍に居てくれ……」
涙を溢しながらも静かに頷いたルフレと、クロムは降り頻る雨に打たれながら口付けを交わす。
二人だけを世界から切り離したかの様に永遠にも感じるそれは、何よりも熱く……そして何処までも切ないものであった。
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