朝虹は雨、夕虹は晴れ
■■■■
ルフレが作ってくれた弁当は、クロムが今までの人生で食べたどんな料理よりも美味しかった。
貴族達に招かれた宴会での贅を凝らした料理など、ルフレが手ずから作ってくれた料理の足元にも及ばないとすら思う。
腹が満たされたからなのか、肩にやたら力が入っていたルフレも何処かリラックスしていた。
そんなルフレと、クロムはポツポツと他愛の無い会話を交わしていく。
クロムは愛想が良い方では無い為気の利いた会話をするのは苦手であるが、ルフレ相手だとまるで普段の愛想の無さが嘘であるかの様に後から後から話したい事が沢山出てくるのだ。
ルフレは、ルフレと出会う前のクロムがどんな事をしていたのかを聞きたがった。
思えば、ルフレに対してクロムが己の過去を語った事は今までは殆ど無かったのだ。
それは記憶を喪っているが故に語れる過去を持たぬルフレに無意識の内に遠慮していたからなのかもしれないし、はたまた己の過去を語る時に避けては通れぬ愛しの姉の事を語る事を避けていたからなのかもしれない。
しかし、ルフレ当人がクロムの過去を聞きたがっているのだし、半年以上の時が経った事でエメリナとの事も幾分か穏やかで少しばかり苦味を伴う懐かしさで思い出す事が出来る様になっていた。
そんなクロムの思い出を、ルフレはとても熱心に聞いていて、ちょっとした失敗談や楽しい思い出には笑顔を浮かべ、辛い思い出には共感する様に悲しそうな表情を浮かべる。
それはまるでルフレがクロムと人生を分かち合うとしているかの様で。
クロムはそれに堪らなく愛しさが込み上げてくるのであった。
沸き上がってきた衝動のまま、クロムはそっとルフレの髪を掬う。
指通りの良い長い髪は、サラサラと手の中から零れ落ちてゆくかの様で。
それにそっとクロムは口付けを落とす。
フワリと、甘く爽やかな香りがクロムの鼻腔を擽った。
「く、くくく、クロムさん……っ!?
な、何を……!!??」
途端にルフレは顔を耳まで真っ赤に染め上げてクロムから距離を取ろうとした。
逃げようとするその手を取って、クロム自身もまた顔を赤く染めながら訊ねる。
「その、ダメ、か……?」
■■■■
ルフレが作ってくれた弁当は、クロムが今までの人生で食べたどんな料理よりも美味しかった。
貴族達に招かれた宴会での贅を凝らした料理など、ルフレが手ずから作ってくれた料理の足元にも及ばないとすら思う。
腹が満たされたからなのか、肩にやたら力が入っていたルフレも何処かリラックスしていた。
そんなルフレと、クロムはポツポツと他愛の無い会話を交わしていく。
クロムは愛想が良い方では無い為気の利いた会話をするのは苦手であるが、ルフレ相手だとまるで普段の愛想の無さが嘘であるかの様に後から後から話したい事が沢山出てくるのだ。
ルフレは、ルフレと出会う前のクロムがどんな事をしていたのかを聞きたがった。
思えば、ルフレに対してクロムが己の過去を語った事は今までは殆ど無かったのだ。
それは記憶を喪っているが故に語れる過去を持たぬルフレに無意識の内に遠慮していたからなのかもしれないし、はたまた己の過去を語る時に避けては通れぬ愛しの姉の事を語る事を避けていたからなのかもしれない。
しかし、ルフレ当人がクロムの過去を聞きたがっているのだし、半年以上の時が経った事でエメリナとの事も幾分か穏やかで少しばかり苦味を伴う懐かしさで思い出す事が出来る様になっていた。
そんなクロムの思い出を、ルフレはとても熱心に聞いていて、ちょっとした失敗談や楽しい思い出には笑顔を浮かべ、辛い思い出には共感する様に悲しそうな表情を浮かべる。
それはまるでルフレがクロムと人生を分かち合うとしているかの様で。
クロムはそれに堪らなく愛しさが込み上げてくるのであった。
沸き上がってきた衝動のまま、クロムはそっとルフレの髪を掬う。
指通りの良い長い髪は、サラサラと手の中から零れ落ちてゆくかの様で。
それにそっとクロムは口付けを落とす。
フワリと、甘く爽やかな香りがクロムの鼻腔を擽った。
「く、くくく、クロムさん……っ!?
な、何を……!!??」
途端にルフレは顔を耳まで真っ赤に染め上げてクロムから距離を取ろうとした。
逃げようとするその手を取って、クロム自身もまた顔を赤く染めながら訊ねる。
「その、ダメ、か……?」
■■■■