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天泣過ぎれば

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『ルフレ!』


 跳ねる様に飛び起きたクロムは、そのままの勢いでルフレの姿を捜す。
 しかし、先に目覚めて既に何処かへ行ったのか、天幕にルフレの姿は無かった。
 別にそれ自体はさして珍しい事では無いけれども。
 どうしても、直前に見ていたあの夢を……ルフレが何処かへ消えてしまう悪夢が、頭を過ってしまう。
 焦燥感に苛まれるままに天幕を飛び出そうとした所で、所用を済ませたのか天幕に戻ろうとしていたルフレとぶつかりかけた。


「えっ? あっ、と……どうかしたの、クロム?」


 クロムの何時になく焦っている様子に、ルフレは目を丸くして驚く。
 そして無意識の様にふわりと右手を伸ばそうとするが、クロムの頭に触れる寸前で躊躇う様にその手を引いた。
 憂う様に翳るその顔は、それを誤魔化す様な微笑みによって隠される。


「順調にいけば今日の昼過ぎには王都に帰還出来るわね。
 今後どうするのかは、その時に改めてフレデリク達と話し合う必要があるだろうけど……」


 じゃあそろそろ出立の準備をしないとね、と。
 ルフレはまた慌ただしく天幕の外へと駆け出して行った。




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