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朝虹は雨、夕虹は晴れ

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 ルフレは自室のベッドの上に腰掛け、真剣な面持ちで手元の紙面を眺めていた。

『クロムと“恋人らしい”事をしよう作戦』の、戦略案を纏めたモノである。
 そこには、ありとあらゆる角度から分析されたクロムの趣味嗜好、ルフレのアクションに対して予測される反応などが記されていた。
 まさに稀代の軍師だからこそ為せる事であろう。


「クロムさんはあまり婉曲的な表現は好みません。
 つまり、気持ちは出来る限りストレートに伝えなくては……」


 ルフレは脳内でその時をシュミレーションする。


 ……
 …………
 ………………


『クロムさん、私……あなたに出会ったあの日から、ずっと……クロムさんの事が好きです、あなたの事が大好きなんです』

『ああ、俺もだルフレ。
 俺はお前を絶対に離さない。
 守ってみせる』


 ………………
 …………
 ……


「く、クロムさん……!」


 自分の想像の中のクロムの言葉に、ルフレは頬を赤らめた。
 そして、胸の高まりが抑えきれなくなり、キュッと胸に手をあてる。


「お、想いを伝えるだけではダメですよね……!
 つ、つまりこの後に、き、キスをする訳なのですが……」


 ルフレは再び想像する。

 お互いに頬を赤く染めて、ルフレが思わず目を閉じてしまった所に、唇に柔らかな感触が…………!


「~~~!!!」


 堪えきれずにルフレは顔を手で覆ってゴロゴロとベッドを転がった。


(ダメです、これは自分にとっては刺激が強過ぎます……っ!
 だって、まだろくに手を繋いだ事すら無いんですよ。
 は、裸を覗かれて覗いてしまった事なら有りますが、あれは事故の様なモノですし……!
 き、キスとか……私にはちょっと早過ぎる(?)のではないですか……っ!?
 い、いえ……待って、落ち着いて、冷静に考えて……!
 もう既に私たちは婚約して、結婚式すら近付いてきてる状況なんですよ……!
 寧ろ、き、キス位はしないとダメでしょう……!)


 最早パニック状態である。
 恋愛経験値がほぼ皆無のルフレにとっては、すべからく刺激が強過ぎる事だ。
 寧ろよく婚約出来たなと言う話になってしまうが、あれはギャンレルを討って戦争が終結したその場の勢いと言うヤツだ。
 あの後もルフレは自分の天幕に戻ってからは、貰ったばかりの指環を抱いてベッドでゴロゴロとのたうち回っていた。
 実は、指環をはめる際に顔を赤らめずに済む様になったのは、つい最近なのである。

 仕事の時は仕事と割り切れるから良いのだが、いざ、となるともうダメだ。
 クロムと顔を合わせるだけでも顔が真っ赤になってしまうだろう。


「と、とにかくですね、クロムさんと二人きりにならなくては……!」


 キスとかの事は一旦頭の片隅に追いやって、ルフレはクロムと二人きりになる為の策を練り始めたのであった。





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