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聖なる夜の子供達に

◇◇◇◇




 幸せな夢を見ていた気がする。
 内容は、もう朧気で思い出せないけれど。
 それでも、とてもとても幸せであった事が、胸の奥には残っている。
 そんな温かな幸せに満たされながら起き上がると、ふと枕元に見慣れぬモノを見付けた。
 少なくとも眠る前にはこんなモノは無かったと思うのだけれども。
 何だろう、とルキナはそれを手に取る。
 それは、両手に乗る位の大きさの箱であった。

 箱を開けると、その中には。
 深い蒼に輝く宝石をあしらった綺麗なペンダントが、一つ。

 余程腕の良い宝石細工師が手掛けたのであろう。
 精緻な細工が施されたそれは、決して豪奢さや無駄な華美さは一切無く。
 一目見ただけでは何処か質素にすら感じてしまう程なのに、見れば見る程そこに惜しみ無く高度な技術が注ぎ込まれているのが理解出来る。
 何処までも純粋に宝石自身が持つ美しさを引き出したそのペンダントが、並々ならぬ価値を持つモノである事をルキナは即座に理解した。

 そして、ペンダントの下には、一枚のメッセージカードが挟まれていた。


『良い子のあなたへ、サンタクロースからの贈り物です』


 そのメッセージを、何度も噛み砕いて、そしてボロボロと涙を溢す。

 筆跡は多少は誤魔化してはいたが、それでも。
 大好きで大切なその人の字を、ルキナが見間違える筈は無かった。
 其処にある『愛』を、『想い』を。
 確かに受け取って、ルキナは泣いた。

 幼いあの日々の思い出が繰り返し甦ってゆく。
 サンタクロースを捕まえられなかったのだと悔しがる二人に両親が優しく微笑んでいた事も、全部。
 大切で幸せだったあの日々は、もう戻ってこないけれど。
 それでも。
 “両親”は、子供達を大切に慈しんでくれている。
 それは、未来でも過去でも、時を越えても変わらなかった。


 きっと今頃、小さな“ルキナ”やマークの元にも“サンタクロース”からの贈り物が届けられていているのだろう。
 目覚めて枕元の贈り物に気が付いた二人は、どんな風に喜ぶのだろうか。


 喜びと幸せを胸に、ルキナは部屋を出て“両親”の部屋を目指す。
 伝えたい想いが、沢山沢山あるのだ。
 “両親”は驚くだろうか、それとも喜ぶのだろうか。
 それを思うのも楽しくて。
 ルキナは駆け出すのであった。





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