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聖なる夜の子供達に

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 冬祭りの期間だけの料理を“家族”皆で楽しみ、サンタクロースを待ちきれない様にソワソワする小さな“ルキナ”と一緒に本を読んだりしてルキナとマークは時間を過ごしていた。
 何時かの遠いあの日々のルキナの様に、サンタクロースに会いたいのだと張り切っていた小さな“ルキナ”であったが。
 夜が少しずつ深まる中、眠りの波が寄せては返すのかうつらうつらとしてきてしまう。
 そんな小さな“ルキナ”をベッドに寝かせると、直ぐ様眠りの淵に誘われ、安らかな寝息を立て始めた。
 恐らくこの様子では、明日の朝まではちょっとやそっとでは起きないだろう。
 幸せそうに眠る小さな“ルキナ”の頭を優しく撫でてから、ルキナとマークは小さな“ルキナ”の部屋を後にするのであった。


「サンタクロース、か。
 僕も昔は会いたがっていたんでしょうか」


 小さな“ルキナ”の様子を思い返しながら、マークは優しく微笑みながらそう溢す。
 ルキナは、そんなマークに勿論だと頷いた。


「ええ、私と二人で、サンタクロースを捕まえようとしていた事もあったんですよ。
 罠を仕掛けてみたりとか、色々してみたのですが。
 結局、一度も会えず終いでした」


 マークと二人で、ああでもないこうでもないと頭を捻りながら、『サンタクロース捕獲作戦』を練っていた遠いあの日々は、今でも鮮明に思い出せる。
 どんな罠を仕掛けても、引っ掛かった形跡すらも無く。
 だけど翌朝には必ず枕元に贈り物が置かれているのだ。
 その度に、作戦が失敗した悔しさと、それ以上の喜びを感じていたモノだった。
 ……何時か、小さな“ルキナ”も。
 小さな“マーク”と一緒に、そうやってサンタクロースを捕まえようとするのだろうか。
 そんな幸せで楽しい日々を重ねるのだろうか。

 マークには、遠い未来で過ごしていた日々の記憶が無い。
『幸せ』だった幼いあの日々も、そして絶望に沈んだ世界での辛く苦しい日々も。
 平等に、マークは喪ってしまった。
 それは、ある意味では悲劇でもあり救いでもあるのだろう。
 マークの記憶喪失を知った当初は、ルキナは強い衝撃を受けたのであったが。
 心の整理が付いてからは、それで良かったのかもしれないとすら思う。
 記憶を喪おうと何だろうと、マークがルキナの大切な弟である事には変わり無く。
 内面的な部分も、記憶を喪う前とそう大きくは変わらなかったからだ。
 喪ったモノを嘆くよりは、新しく積み上げる方が余程建設的である。

 ルキナの言葉に、「そうなんですね」とマークは嬉しそうに返す。


「小さかった頃の事とは言え、母さんみたいな軍師を志していたであろう僕の策を破るとは……。
 サンタクロースは相当な策士だったんでしょうね!
 是非とも直接お会いしてみたかったです」


 何だかそんなズレた感想を述べるマークに、昔と変わらないなと微笑ましく思う。
 あの頃も、何時も作戦が失敗したは次こそはと燃えていたのであった。
 そんな二人を、両親が優しく見守ってくれていた事も、ルキナは覚えている。


「さて、私達もそろそろ眠りましょうか……」


 何だか今夜は、幸せな夢を見られる気がするのであった。





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