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お伽噺の果てに

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 神話の時代より甦り世界を絶望に陥れた邪竜は、ある時を境にその姿を見せなくなった。

 ある者は誰かが彼の邪竜を倒したのだろうと言い。
 またある者は、邪竜は異界へと去ったのだとも言った。

 真実が何処にあるのか、それは誰にも分からない。

 邪竜が身を潜めた結果滅びを免れた人々は、神剣を継ぐ王女を旗印に再び復興を遂げるのであった。
 時の流れが傷付き荒れ果てた世界を癒し、人々はかつての暮らしに戻っていく。

 そうして、人々は何時しか邪竜やそれがもたらした絶望の事を忘れつつあった。
 絶望の世界を知らぬ子供達が生まれ、そしてその子供達が大人になってその子供を得る頃には、もう邪竜の事が人々の口の端に上る事すらも無くなっていく。
 そして何時の日にか、甦った邪竜や滅びかけた世界の事実すらも、お伽噺の彼方へと消えてしまうのだろう。


 姿を消した邪竜が何処へ行ったのかは誰にも分からないが。
 邪竜が姿を消した辺りの時期から、男女二人の旅人の物語が各地に残されている。

 ある時を境にその足跡も途切れるが。
 仲睦まじく寄り添い合う二人が、何時の時も決して離れる事が無かったのだけはどの物語にも共通している。
 彼等の旅路が何処へ向かうものであったのか、そこに辿り着けたのかは、誰にも分からない事ではあるが。

 きっと最期まで共に在ったのだろうと、彼等に関するどの書物でも語られているのであった。





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