未知への誘い
◆◆◆◆◆
転校早々に嫌な事件が起きたものだ。
点けっぱなしになったテレビでは、今日の日中に有った事件が早速取り上げられていた。
どうやら遺体が民家のアンテナの上に吊り上げられていたらしい。
何の意図があったのかは知らないが、残酷な事をする人がいたものだ。
被害者は最近誰かとの不倫騒動でメディアを賑わせていたアナウンサーらしい。
そう言えば、八十神高校のクラスメイト達の中にはこのアナウンサーについて何か噂している人がいたな……と思い出すが、直ぐにどうでも良い事かと思考を切り換えた。
被害者の人は気の毒だとは思うし、犯人は一刻も早く法の裁きを受けるべきだとは思う。
しかし犯人を捕まえるのは警察や司法関係者の仕事だし、死んだ人を心から悼む事が出来る程自分はその人の人となりを知っている訳でもない。
ワイドショーで脚色されて取り上げられた情報だけを元に、知ったか振ってああだこうだと囀るのはその人への侮辱にも等しい行為にも思っている。
精々、被害者のアナウンサーへ黙祷を捧げる位が関の山だ。
しかしこの様子だと、叔父さんの帰宅は相当遅くなりそうだ。
もしかしたら今日は署の方に泊まり込みになるのかもしれない。
それ故にか、夕飯を食べる菜々子ちゃんの顔色は浮かない。
恐らくは叔父さんが心配なのだろう。
しかしそう訊ねてみても、刑事だから仕方ないのだと菜々子ちゃんは言う。
確かに刑事を仕事としている以上仕方の無い話ではあるが、だからと言って心配してはいけない訳でも無く、寂しい思いを無理に抑圧する必要性も無い。
が、しかし。
それは、まだ出会って2日の従姉妹が不用意に触れても良いモノでもない。
もう少しお互いに歩み寄ってからだって、そういった事を話し合うのに遅過ぎるという事も無いのではないだろうか。
それはそうと、明日の朝ごはんについてのリクエストを菜々子ちゃんに訊ねた。
まだ完全に菜々子ちゃんの好みの味を掴んだとは言い切れないが、それでも何と無くの好き嫌いは見えてくる。
より精進を重ねていけば、完全に好みに合致する料理に出来る日もそう遠くはないだろう。
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転校早々に嫌な事件が起きたものだ。
点けっぱなしになったテレビでは、今日の日中に有った事件が早速取り上げられていた。
どうやら遺体が民家のアンテナの上に吊り上げられていたらしい。
何の意図があったのかは知らないが、残酷な事をする人がいたものだ。
被害者は最近誰かとの不倫騒動でメディアを賑わせていたアナウンサーらしい。
そう言えば、八十神高校のクラスメイト達の中にはこのアナウンサーについて何か噂している人がいたな……と思い出すが、直ぐにどうでも良い事かと思考を切り換えた。
被害者の人は気の毒だとは思うし、犯人は一刻も早く法の裁きを受けるべきだとは思う。
しかし犯人を捕まえるのは警察や司法関係者の仕事だし、死んだ人を心から悼む事が出来る程自分はその人の人となりを知っている訳でもない。
ワイドショーで脚色されて取り上げられた情報だけを元に、知ったか振ってああだこうだと囀るのはその人への侮辱にも等しい行為にも思っている。
精々、被害者のアナウンサーへ黙祷を捧げる位が関の山だ。
しかしこの様子だと、叔父さんの帰宅は相当遅くなりそうだ。
もしかしたら今日は署の方に泊まり込みになるのかもしれない。
それ故にか、夕飯を食べる菜々子ちゃんの顔色は浮かない。
恐らくは叔父さんが心配なのだろう。
しかしそう訊ねてみても、刑事だから仕方ないのだと菜々子ちゃんは言う。
確かに刑事を仕事としている以上仕方の無い話ではあるが、だからと言って心配してはいけない訳でも無く、寂しい思いを無理に抑圧する必要性も無い。
が、しかし。
それは、まだ出会って2日の従姉妹が不用意に触れても良いモノでもない。
もう少しお互いに歩み寄ってからだって、そういった事を話し合うのに遅過ぎるという事も無いのではないだろうか。
それはそうと、明日の朝ごはんについてのリクエストを菜々子ちゃんに訊ねた。
まだ完全に菜々子ちゃんの好みの味を掴んだとは言い切れないが、それでも何と無くの好き嫌いは見えてくる。
より精進を重ねていけば、完全に好みに合致する料理に出来る日もそう遠くはないだろう。
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