本当の“家族”
◆◆◆◆◆
【2011/06/18】
朝目が覚めると、何故かテントに花村が居て、そして大谷さんが居なくなってて、とても驚いた。
まだ早い時間帯だったから他のテントでまだ寝ているだろう人達を起こすのも忍びなかったので、声には出さなかったけれども。
その時点でかなり混乱したけど、直ぐにそこがそもそも自分たちのテントですらない事に気が付いて、更に混乱した。
少しして起き出してきた里中さんや天城さんの説明によると、どうやら昨晩は様々な要因があった為、花村のテントの方へと移動したらしい。
……しかし、そんな記憶は全く無い。
と言うよりも、起きた直後は混乱しててそれどころでは無かった為気が付かなかったが、巽くんは何処行ったのだろう?
昨晩は、花村のテントにお邪魔しているのでは無かったのか……。
巽くんの行方を二人に訊ねると、里中さんも天城さんも、大変微妙そうな顔をしてこちらを見てきた……。
もしかして、何かやらかしてしまったのか?
しかし、そんな記憶は無い……。
とにかく、どうやら巽くんは、元々は自分たちに割り当てられたテントで寝ているらしい。
……大谷さんも其処にはいるのだろうけれども、大丈夫なのだろうか……?
まだ日の登り切らない内に花村のテントを抜け出し、自分たちのテントへと戻る。
……其処には、爆音の様な鼾をかいて熟睡している大谷さんと、その腕に押し潰されている巽くんが居た。
巽くんは白目を剥いて眠っている。
一応寝息は微かに聴こえるから、押し潰されて息苦しくなっている訳ではないのだろう。
それにしても、大谷さんがこんなに激しく鼾をかいているのは、少し心配だ。
舌根沈下等による上気道閉塞性の睡眠時無呼吸症候群とかになってやしないだろうか……?
もしそうなら、呼吸器系・循環器系への負担も心配になる。
しかし今は大谷さんの心配ではなく、巽くんを大谷さんの腕の下から救出し、序でに花村のテントまで連れて行かなくてはならない。
大谷さんの腕を里中さんと天城さんに持ち上げて貰って、巽くんをその下から引き摺り出すが、巽くんは反応しない。
余程深く眠っているのだろう。
昨日の清掃活動で疲れていたのかもしれない。
起きないのはいっそ好都合、と言う里中さんたちに従って、眠ったままの巽くんを背負って花村のテントへと戻り、そのまま花村に巽くんを託す。
その後は自分たちのテントへと戻り、二度寝するにも微妙な時間であった為(鼾が煩いというのもあるが)、起床時間まで天城さんが持ち込んできた花札や、里中さんが持ってきたトランプで時間を潰した。
◇◇◇◇◇
朝食は、学校から配給された食パンに牛乳のパック、それにジャムとかマーガリンとか、更にデザートとしてかバナナが一本。
準備は直ぐに終わり、食べるのもあっという間だ。
……朝食の時に見掛けた諸岡先生は、どうやら気分が悪い様だった。
アルコールの臭いもしていたから、飲み過ぎからの二日酔いだろうか。
二日酔いの人にこの朝ご飯は少し辛いだろう……。
卵雑炊とか、肉うどんとか、そういう料理の方が二日酔いの人には良いのだが……。
朝食後は一時間少々清掃活動を行った後、現地で解散となった。
解散した途端、諸岡先生はフラフラとした足取りで何処かへ向かう。
……大丈夫なんだろうか……?
◇◇◇◇◇
解散後、五人で河原に向かった。
山水からなる川は綺麗に澄んでいて、飛び込んでも大丈夫そうな深さの滝壷まである。
水深自体は滝壺になっている所以外はそう深くは無く、川遊びをする分には確かに程好い河ではある……。
尤も、川遊びを楽しむには、まだ水温が充分ではないが……。
「おっ、ラッキー!
俺らしか居ねーじゃん!」
花村の言う通り、河原には自分たちしか居ない。
この山での遊びスポットとしては、八十神高校生には有名な場所らしいから、もっと人が居るのだろうと思っていたのだけれども……。
……やはり、水温が充分ではないからだろうか……?
はしゃぐ花村とは対照的に、巽くんのテンションが非常に低い。
どうしたのだろうか。
訊ねてみると、巽くんは不思議そうな顔をしながら答えてくれた。
「や……なんかオレ、昨日の夜にカッとなってテント飛び出したような気がするんスけど……。
っかしーな、夢だったんスかね?
起きたら花村先輩のテントだったし……」
「ゆ……、ゆめゆめっ。夢だから」
巽くんの疑問を、里中さんは慌てて否定する。
どうやら、昨晩の事は無かった事にするらしい。
……記憶が曖昧なのならば、大谷さんに押し潰されていた事は一々思い出させる必要性は無いだろうし、別に良いか……。
「やっぱ夢っスか……」
巽くんも、少し怪訝そうにしながらも一応の納得はした様だ。
「よーっし、折角来たんだし、とりあえず泳ぐか!」
「花村先輩、マジで泳ぐんスか?
……オレぁダリぃし、パスで……」
花村がハイテンションでそう言うと、力無くぐったりと座る巽くんは、首を横に振った。
「大丈夫か? 巽くん」
大谷さんに押し潰されていた事で何か悪影響でもあったのだろうか……。
「あー……。何か顎の辺りが特に痛いんスよね……」
「顎?」
大谷さんが寝返りを打った際にでも、殴られたのだろうか……?
……何故か、里中さんと天城さんが遠い目をしている。
「鳴上たちは泳がねーの?」
花村が首を傾げて訊ねてきたので、首を横に振った。
「泳ぐも何も水着を持ってないし、それにまだ泳いだりして遊ぶには水温が冷た過ぎる。
風邪を引くぞ、この冷たさじゃ」
そもそも川で遊ぶ予定は無かったのだから、水着を持ってきている筈は無い。
それは里中さんも天城さんも同じだった様で、二人とも同じく首を横に振る。
「あたしもパス。
泳ぐつもり無かったから、水着持ってきてないもん」
「私も、泳がないよ? 水着無いし」
しかし、全員に断られたと言うのにも関わらず、花村はめげない。
「ふっふーん!
そんな事もあろうかと思ってだな……」
そう言って、花村は鞄の中から何かを取り出した。
……水着だ、それも女性ものの。
「花村……まさかお前……、そんな趣味が……」
「ちげーよ! つーか分かっててそれ言ってんだろ、鳴上!」
まあ、少しふざけただけだ。
三着も持っているんだから、多分自分や里中さんたち様に持ってきたんだろうな……、というのは大体察せられる。
「ジュネスオリジナルブランド、初夏の新商品だぜ!
いやー、結構三人に似合うの探すのに頑張ったんだぜ!
特に鳴上は背が高いからなー……、中々イイのが無くって!」
背が高過ぎるとそういうのは確かに探すのが面倒だ。
「花村先輩……それずっと持ってたんスか?
……引くわー……」
巽くんも、そして里中さんも天城さんも、花村を白い目で見ている。
多分、呆れているのだろう。
「良いじゃん!
折角だし皆で林間学校でも楽しい思い出作りたかったんだよ!」
「それなら、最初から水着持参って提案すれば良かったんじゃ……」
よくこちらの水着のサイズが分かったな……。
まあ、花村がこちらをそういう目で見ていた、という事なのかもしれないが。
しかし、態々水着を探すなんて無駄な労力を割くのもバカらしくないだろうか……。
……この前の『密着作戦』と言い、どうしてこう……無駄に残念な方向性に行動力を発揮しているのだろうか……。
「素直に言っても、鳴上とかに却下されると思ったから……」
「分かっているのなら、何故持ってきた」
「……俺の熱意を認めてくれるかな、って」
はあ、と溜め息を一つ吐いた。
「……コブラツイスト、キャメルクラッチ、ベアハッグ、スリーパーホールド……好きな技を選ばせてやろう……」
「こえーよ! 何でプロレス技から選ばせんだよ!!」
「と、まあ……冗談は置いといて……」
「冗談かよ!」
「……やって欲しかったのか?」
物好きな……。まさか、花村には被虐趣味でもあったのだろうか?
「んな訳ねーだろ!」
それは即座に否定された。
ともかく、と花村に説明する。
「熱意は認めるが、さっきも言った様に水温が低い。
単純に、泳ぐのに適していないんだ。
思い出を作りたい気持ちも分かるが、それで風邪を引いては元も子も無いだろう。
そんなに泳ぎたいのならば、今度皆で沖奈のプールにでも出掛けよう。
夏になれば、海にも行けるしな。
それでは、ダメか?」
一見賑やかし屋に見るが実は相当な気遣い屋である花村は、他人に本気で嫌がられる事は基本的にはやらないタイプだ。
花村的には、本当に林間学校での楽しい思い出を作りたかったのだろう。
若干の下心があった事自体は、否定は出来ないのだろうけれども。
まあ、そこは思春期の男の子のサガというヤツなのだろうから、大目には見てあげた方が良いだろう。
実際に花村が自分たちにと買ってきた水着は、各々に良く似合うし、かなり好みを突いている。
男子生徒諸君の妄想の行く先となっている様なギリッギリの布地面積のモノでは無い。
そこはちゃんと真剣に選んでくれたのだろう。
トスッと、少し強めに花村の頭に手刀を落として、勝手に水着等を購入してきた事は許してやる。
「うぅ……りょーかい」
少し未練がある様だが、結局は花村も了承してくれた。
水着は折角買ったのだから、とそのままプレゼントされる事になった。
稲羽には水着は持って来なかった為、買う手間が省けたので個人的には少し嬉しい。
結局、川で遊ばずにそのまま家に帰る事になった。
……帰る途中に、川の上流の方で諸岡先生が川に向かって嘔吐しているのを見掛けてしまう……。
……恐らく、二日酔いにあの朝食が堪えてしまったのだろう。
……色んな意味で、川に入らなくて本当に良かった……。
◆◆◆◆◆
【2011/06/18】
朝目が覚めると、何故かテントに花村が居て、そして大谷さんが居なくなってて、とても驚いた。
まだ早い時間帯だったから他のテントでまだ寝ているだろう人達を起こすのも忍びなかったので、声には出さなかったけれども。
その時点でかなり混乱したけど、直ぐにそこがそもそも自分たちのテントですらない事に気が付いて、更に混乱した。
少しして起き出してきた里中さんや天城さんの説明によると、どうやら昨晩は様々な要因があった為、花村のテントの方へと移動したらしい。
……しかし、そんな記憶は全く無い。
と言うよりも、起きた直後は混乱しててそれどころでは無かった為気が付かなかったが、巽くんは何処行ったのだろう?
昨晩は、花村のテントにお邪魔しているのでは無かったのか……。
巽くんの行方を二人に訊ねると、里中さんも天城さんも、大変微妙そうな顔をしてこちらを見てきた……。
もしかして、何かやらかしてしまったのか?
しかし、そんな記憶は無い……。
とにかく、どうやら巽くんは、元々は自分たちに割り当てられたテントで寝ているらしい。
……大谷さんも其処にはいるのだろうけれども、大丈夫なのだろうか……?
まだ日の登り切らない内に花村のテントを抜け出し、自分たちのテントへと戻る。
……其処には、爆音の様な鼾をかいて熟睡している大谷さんと、その腕に押し潰されている巽くんが居た。
巽くんは白目を剥いて眠っている。
一応寝息は微かに聴こえるから、押し潰されて息苦しくなっている訳ではないのだろう。
それにしても、大谷さんがこんなに激しく鼾をかいているのは、少し心配だ。
舌根沈下等による上気道閉塞性の睡眠時無呼吸症候群とかになってやしないだろうか……?
もしそうなら、呼吸器系・循環器系への負担も心配になる。
しかし今は大谷さんの心配ではなく、巽くんを大谷さんの腕の下から救出し、序でに花村のテントまで連れて行かなくてはならない。
大谷さんの腕を里中さんと天城さんに持ち上げて貰って、巽くんをその下から引き摺り出すが、巽くんは反応しない。
余程深く眠っているのだろう。
昨日の清掃活動で疲れていたのかもしれない。
起きないのはいっそ好都合、と言う里中さんたちに従って、眠ったままの巽くんを背負って花村のテントへと戻り、そのまま花村に巽くんを託す。
その後は自分たちのテントへと戻り、二度寝するにも微妙な時間であった為(鼾が煩いというのもあるが)、起床時間まで天城さんが持ち込んできた花札や、里中さんが持ってきたトランプで時間を潰した。
◇◇◇◇◇
朝食は、学校から配給された食パンに牛乳のパック、それにジャムとかマーガリンとか、更にデザートとしてかバナナが一本。
準備は直ぐに終わり、食べるのもあっという間だ。
……朝食の時に見掛けた諸岡先生は、どうやら気分が悪い様だった。
アルコールの臭いもしていたから、飲み過ぎからの二日酔いだろうか。
二日酔いの人にこの朝ご飯は少し辛いだろう……。
卵雑炊とか、肉うどんとか、そういう料理の方が二日酔いの人には良いのだが……。
朝食後は一時間少々清掃活動を行った後、現地で解散となった。
解散した途端、諸岡先生はフラフラとした足取りで何処かへ向かう。
……大丈夫なんだろうか……?
◇◇◇◇◇
解散後、五人で河原に向かった。
山水からなる川は綺麗に澄んでいて、飛び込んでも大丈夫そうな深さの滝壷まである。
水深自体は滝壺になっている所以外はそう深くは無く、川遊びをする分には確かに程好い河ではある……。
尤も、川遊びを楽しむには、まだ水温が充分ではないが……。
「おっ、ラッキー!
俺らしか居ねーじゃん!」
花村の言う通り、河原には自分たちしか居ない。
この山での遊びスポットとしては、八十神高校生には有名な場所らしいから、もっと人が居るのだろうと思っていたのだけれども……。
……やはり、水温が充分ではないからだろうか……?
はしゃぐ花村とは対照的に、巽くんのテンションが非常に低い。
どうしたのだろうか。
訊ねてみると、巽くんは不思議そうな顔をしながら答えてくれた。
「や……なんかオレ、昨日の夜にカッとなってテント飛び出したような気がするんスけど……。
っかしーな、夢だったんスかね?
起きたら花村先輩のテントだったし……」
「ゆ……、ゆめゆめっ。夢だから」
巽くんの疑問を、里中さんは慌てて否定する。
どうやら、昨晩の事は無かった事にするらしい。
……記憶が曖昧なのならば、大谷さんに押し潰されていた事は一々思い出させる必要性は無いだろうし、別に良いか……。
「やっぱ夢っスか……」
巽くんも、少し怪訝そうにしながらも一応の納得はした様だ。
「よーっし、折角来たんだし、とりあえず泳ぐか!」
「花村先輩、マジで泳ぐんスか?
……オレぁダリぃし、パスで……」
花村がハイテンションでそう言うと、力無くぐったりと座る巽くんは、首を横に振った。
「大丈夫か? 巽くん」
大谷さんに押し潰されていた事で何か悪影響でもあったのだろうか……。
「あー……。何か顎の辺りが特に痛いんスよね……」
「顎?」
大谷さんが寝返りを打った際にでも、殴られたのだろうか……?
……何故か、里中さんと天城さんが遠い目をしている。
「鳴上たちは泳がねーの?」
花村が首を傾げて訊ねてきたので、首を横に振った。
「泳ぐも何も水着を持ってないし、それにまだ泳いだりして遊ぶには水温が冷た過ぎる。
風邪を引くぞ、この冷たさじゃ」
そもそも川で遊ぶ予定は無かったのだから、水着を持ってきている筈は無い。
それは里中さんも天城さんも同じだった様で、二人とも同じく首を横に振る。
「あたしもパス。
泳ぐつもり無かったから、水着持ってきてないもん」
「私も、泳がないよ? 水着無いし」
しかし、全員に断られたと言うのにも関わらず、花村はめげない。
「ふっふーん!
そんな事もあろうかと思ってだな……」
そう言って、花村は鞄の中から何かを取り出した。
……水着だ、それも女性ものの。
「花村……まさかお前……、そんな趣味が……」
「ちげーよ! つーか分かっててそれ言ってんだろ、鳴上!」
まあ、少しふざけただけだ。
三着も持っているんだから、多分自分や里中さんたち様に持ってきたんだろうな……、というのは大体察せられる。
「ジュネスオリジナルブランド、初夏の新商品だぜ!
いやー、結構三人に似合うの探すのに頑張ったんだぜ!
特に鳴上は背が高いからなー……、中々イイのが無くって!」
背が高過ぎるとそういうのは確かに探すのが面倒だ。
「花村先輩……それずっと持ってたんスか?
……引くわー……」
巽くんも、そして里中さんも天城さんも、花村を白い目で見ている。
多分、呆れているのだろう。
「良いじゃん!
折角だし皆で林間学校でも楽しい思い出作りたかったんだよ!」
「それなら、最初から水着持参って提案すれば良かったんじゃ……」
よくこちらの水着のサイズが分かったな……。
まあ、花村がこちらをそういう目で見ていた、という事なのかもしれないが。
しかし、態々水着を探すなんて無駄な労力を割くのもバカらしくないだろうか……。
……この前の『密着作戦』と言い、どうしてこう……無駄に残念な方向性に行動力を発揮しているのだろうか……。
「素直に言っても、鳴上とかに却下されると思ったから……」
「分かっているのなら、何故持ってきた」
「……俺の熱意を認めてくれるかな、って」
はあ、と溜め息を一つ吐いた。
「……コブラツイスト、キャメルクラッチ、ベアハッグ、スリーパーホールド……好きな技を選ばせてやろう……」
「こえーよ! 何でプロレス技から選ばせんだよ!!」
「と、まあ……冗談は置いといて……」
「冗談かよ!」
「……やって欲しかったのか?」
物好きな……。まさか、花村には被虐趣味でもあったのだろうか?
「んな訳ねーだろ!」
それは即座に否定された。
ともかく、と花村に説明する。
「熱意は認めるが、さっきも言った様に水温が低い。
単純に、泳ぐのに適していないんだ。
思い出を作りたい気持ちも分かるが、それで風邪を引いては元も子も無いだろう。
そんなに泳ぎたいのならば、今度皆で沖奈のプールにでも出掛けよう。
夏になれば、海にも行けるしな。
それでは、ダメか?」
一見賑やかし屋に見るが実は相当な気遣い屋である花村は、他人に本気で嫌がられる事は基本的にはやらないタイプだ。
花村的には、本当に林間学校での楽しい思い出を作りたかったのだろう。
若干の下心があった事自体は、否定は出来ないのだろうけれども。
まあ、そこは思春期の男の子のサガというヤツなのだろうから、大目には見てあげた方が良いだろう。
実際に花村が自分たちにと買ってきた水着は、各々に良く似合うし、かなり好みを突いている。
男子生徒諸君の妄想の行く先となっている様なギリッギリの布地面積のモノでは無い。
そこはちゃんと真剣に選んでくれたのだろう。
トスッと、少し強めに花村の頭に手刀を落として、勝手に水着等を購入してきた事は許してやる。
「うぅ……りょーかい」
少し未練がある様だが、結局は花村も了承してくれた。
水着は折角買ったのだから、とそのままプレゼントされる事になった。
稲羽には水着は持って来なかった為、買う手間が省けたので個人的には少し嬉しい。
結局、川で遊ばずにそのまま家に帰る事になった。
……帰る途中に、川の上流の方で諸岡先生が川に向かって嘔吐しているのを見掛けてしまう……。
……恐らく、二日酔いにあの朝食が堪えてしまったのだろう。
……色んな意味で、川に入らなくて本当に良かった……。
◆◆◆◆◆