本当の“家族”
◆◆◆◆◆
【2011/06/13】
学童保育のアルバイトに赴き、子供たちの相手をし終えて、保護者が迎えに来るのを待っていると、また俊くんが一人ベンチに座って夕空を見上げているのが目についた。
「やあ、隣に座ってもいいかな?」
そう声を掛けると、俊くんは無言で端に寄って、座る場所を空けてくれる。
「空を見ていたみたいだけど、何か面白いものでもあったのかな?」
訊ねても、俊くんは浮かない顔をするばかりだ。
「……別に。
面白いわけじゃないよ。
……やる事ないから、空見てただけ」
「そっか。今日は曇り空だったけど、今は良い感じに雲の切れ間が出来ているから、夕日が綺麗にみえるね」
「そういうの、あんまり興味ないし。……どうでも良い」
そう言う割りには会話を続けるあたり、話をする事自体には消極的では無いらしい。
「そう? うーんと、じゃあ俊くんはどういうのモノに興味があるのかな」
「……そーゆーの聞いて、何かイミあるの?
まあ、別にいいけど……。
……ボクは……フェザーマンが好き、かな……」
俊くんが挙げたのは、戦隊ものの中ではかなりの長寿シリーズである『不死鳥戦隊フェザーマン』だった。
不死鳥の名を体現するかの様に、再放送されたりやら新シリーズやらを作られ続けている大人気特撮だ。
現行作品は『ネオフェザーマン』で、初代『フェザーマン』と『フェザーマンR(リターン)』の後継作である。
尚、『フェザーマンV(ヴィクトリー)』の制作も決まっているらしいとまことしやかに囁かれている。
チームメンバーのスーツが赤やら青やらと色分けされているのは他の戦隊ものと同じだが、フェザーマンは各々鳥をモチーフにしているのも特徴だ。
今のチームメンバーは、フェザーホーク(赤)・フェザーオウル(黄)・フェザーパラキート(黄緑)・フェザーアーザス(桃)・フェザーシュービル(紫)・フェザーファルコン(黒)・フェザースワン(青)・そして謎のフェザーミミズク(銀…?)である。
玩具会社とタイアップしていて、変身グッズや合体ロボットの玩具は小学生位の男子のマストアイテムでもあるらしい。
「フェザーマンか……私が小さかった頃からやっているね。
今もシリーズが続いてて……確か、今はネオフェザーマンだったよね?」
俊くんは頷き、そして付け加えた。
「ネオフェザーマンも好きだけど、ボクはフェザーマンの方が良いと思う」
俊くんは初代派であるらしい。
初代フェザーマンが放送されていた頃は、俊くんがまだ生まれていない様な時期なので、きっと再放送か何かで見たのだろう。
「……先生、変な人だよね。
……嫌いじゃないけど」
帰り際に俊くんはそう言って手を振ってくれた。
◆◆◆◆◆
学童保育からの帰りがてら、夕飯の食材を買おうとジュネスに立ち寄り鮮魚コーナーに向かうと、ちょっと不思議な事を言っている主婦に出会った。
確か……倉橋さんのお家の奥さんだ。
会った時には挨拶を交わす程度の付き合いのご近所さんなのだが、……何故か倉橋さんは「オイスターソースを作らなきゃ」と言いながら、加熱用の牡蠣を大量に買っていた。
……オイスターソースを一から作るつもりなのだろうか。
倉橋さんはこちらに気が付く事無く、そのままレジの方へと行ってしまった。
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【2011/06/13】
学童保育のアルバイトに赴き、子供たちの相手をし終えて、保護者が迎えに来るのを待っていると、また俊くんが一人ベンチに座って夕空を見上げているのが目についた。
「やあ、隣に座ってもいいかな?」
そう声を掛けると、俊くんは無言で端に寄って、座る場所を空けてくれる。
「空を見ていたみたいだけど、何か面白いものでもあったのかな?」
訊ねても、俊くんは浮かない顔をするばかりだ。
「……別に。
面白いわけじゃないよ。
……やる事ないから、空見てただけ」
「そっか。今日は曇り空だったけど、今は良い感じに雲の切れ間が出来ているから、夕日が綺麗にみえるね」
「そういうの、あんまり興味ないし。……どうでも良い」
そう言う割りには会話を続けるあたり、話をする事自体には消極的では無いらしい。
「そう? うーんと、じゃあ俊くんはどういうのモノに興味があるのかな」
「……そーゆーの聞いて、何かイミあるの?
まあ、別にいいけど……。
……ボクは……フェザーマンが好き、かな……」
俊くんが挙げたのは、戦隊ものの中ではかなりの長寿シリーズである『不死鳥戦隊フェザーマン』だった。
不死鳥の名を体現するかの様に、再放送されたりやら新シリーズやらを作られ続けている大人気特撮だ。
現行作品は『ネオフェザーマン』で、初代『フェザーマン』と『フェザーマンR(リターン)』の後継作である。
尚、『フェザーマンV(ヴィクトリー)』の制作も決まっているらしいとまことしやかに囁かれている。
チームメンバーのスーツが赤やら青やらと色分けされているのは他の戦隊ものと同じだが、フェザーマンは各々鳥をモチーフにしているのも特徴だ。
今のチームメンバーは、フェザーホーク(赤)・フェザーオウル(黄)・フェザーパラキート(黄緑)・フェザーアーザス(桃)・フェザーシュービル(紫)・フェザーファルコン(黒)・フェザースワン(青)・そして謎のフェザーミミズク(銀…?)である。
玩具会社とタイアップしていて、変身グッズや合体ロボットの玩具は小学生位の男子のマストアイテムでもあるらしい。
「フェザーマンか……私が小さかった頃からやっているね。
今もシリーズが続いてて……確か、今はネオフェザーマンだったよね?」
俊くんは頷き、そして付け加えた。
「ネオフェザーマンも好きだけど、ボクはフェザーマンの方が良いと思う」
俊くんは初代派であるらしい。
初代フェザーマンが放送されていた頃は、俊くんがまだ生まれていない様な時期なので、きっと再放送か何かで見たのだろう。
「……先生、変な人だよね。
……嫌いじゃないけど」
帰り際に俊くんはそう言って手を振ってくれた。
◆◆◆◆◆
学童保育からの帰りがてら、夕飯の食材を買おうとジュネスに立ち寄り鮮魚コーナーに向かうと、ちょっと不思議な事を言っている主婦に出会った。
確か……倉橋さんのお家の奥さんだ。
会った時には挨拶を交わす程度の付き合いのご近所さんなのだが、……何故か倉橋さんは「オイスターソースを作らなきゃ」と言いながら、加熱用の牡蠣を大量に買っていた。
……オイスターソースを一から作るつもりなのだろうか。
倉橋さんはこちらに気が付く事無く、そのままレジの方へと行ってしまった。
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