本当の“家族”
◆◆◆◆◆
【2011/05/30】
日中のバイトとして、学童保育も始める事にした。
応募して簡単な面接を受けた所、「何時でも来て下さい」と言われたので、今日から始める事にする。
職員の人から渡されたエプロンを纏い、新しい先生として子供たちに紹介されると、物珍しかったのか、あっと言う間に子供たちに周りを取り囲まれた。
「スッゲー、背えたっけー!」
「ねーねー、せんせーって、かれしいんのー?」
「もう、そう言うのってエッチだからダメなんだよ!」
ワイワイガヤガヤと、皆がみな思い思いの事を口々に言っている。
男女比は半々位だろうか?
「じゃあ色オニしよーぜ!
せんせーがオニな!」
子供たちの誰かがそう言うと、一気に蜘蛛の子を散らす様に子供たちが離れていく。
うん、子供が元気な事は良い事だ。
どうやらオニに任命されてしまった様なので、柔軟体操をしながら三十秒数えてから、目についた子供目掛けて駆け出した。
遠くを走り回っていた子供たちが、ギョッとした様に声を上げる。
「うわっ、ヤッベーっ、速えぇーっ!」
「色オニだから、色言ってーっ!!」
「よし、なら紫色!」
「うわーっ、どこだムラサキー!」
ワーワーキャーキャーッとはしゃぐ子供たちの相手を、全力でこなした……。
◇◇◇◇◇
学童保育の時間も終了間際となって、親が迎えに来た子供たちから帰って行く。
ふと、親を待つ子供たちの集団から離れた所にいる子供に気が付いた。
ポツンと、彼は高台のベンチに腰掛けて俯いている。
「あの……、あの子、どうかしたんですか?」
他の職員の人に尋ねてみると、職員の人は彼を見て深く溜め息を吐いてから教えてくれた。
「ああ、俊くんか……。
あの子、いつもああなのよ……」
その時、中年に行くか行かないか位の優しそうな女性が高台にやって来た。
どうやら、俊くんのお迎えに来たらしい。
「ごめんなさいね、俊くん。
少し、待たせてしまったかしら……?」
「……別に……」
優しく声を掛ける女性に、俊くんはより俯いてぶっきらぼうに答えた。
そして、ベンチから立ち上がると、女性を置いて駆け出していってしまう……。
女性はこちらに目をやってペコリと頭を下げた後、俊くんを追い掛けて行った。
「あの子ね、荻原俊くんって言うのだけれど……、……貰われっ子なのよね。
だからなのかしら……」
ふぅ、と職員の人は溜め息を吐きながらそう溢す。
「…………貰われっ子、ですか?」
「ええ。
俊くんのご両親は事故で亡くなってしまっていてね……。
…………それで、さっきお迎えに来ていた宇白さんに引き取られたのだそうだけど…………。
あまり上手くいってないみたいね……。
ここでみんなと遊んでいる時は俊くんも普通なんだけど、宇白さんが迎えに来る時間になるとああなのよ……」
職員の人がそう溢す間も子供たちのお迎えが次々にやって来て、最後の一人も無事にお迎えが来た為、バイト代を受け取ってからその日は家へと帰った。
◆◆◆◆◆
家に帰り、夕飯の支度をしようとしていると、菜々子が何やら話したそうなウズウズとした顔でこちらを見ながらソワソワとしていた。
どうかしたのか菜々子に訊ねてみると、菜々子はにっこりと笑って話してくれる。
「あのね、こないだお姉ちゃんが見つけてくれた“しゃしん”……、お父さんにかえしたんだ。
お父さんね、そのとき、やさしいかおで、ちょっとわらってたよ」
嬉しそうにそう報告する菜々子の頭を、よしよしと撫でながらそれを聞いた。
何時か叔父さんに昔の様に笑える様になって欲しいと、そう思っているだけに、少しだけでも笑ってくれたのがとても嬉しかったのだろう。
「良かったね」
うん、と大きく頷いた菜々子は、「あのね」、と切り出す。
「ねえ、お姉ちゃん……。
菜々子ね、お父さんだいすき」
菜々子は、そう曇りの無い目で言い切った。
「そうだね。
そして、菜々子がお父さんの事が大好きなのと同じ様に……、お父さんも菜々子の事が大好きだよ」
「きっと」も「多分」も、必要ない。
何故なら、そう確信出来るから。
「うん、菜々子もそうおもう!」
菜々子は明るく笑って頷いた。
確かに愛されているのだと、そう実感出来たのなら、菜々子がこの先、『お父さんはもう自分を要らなくなった』なんて思いに苦しむ事は無いだろう。
寂しいと感じる事はあっても、本当の意味で“独りぼっち”になってしまう事は無い。
「お父さんね、さめがわで、お母さんといっしょにお花つんだこと、わすれてなかったよ。
しゃしんかえしたときに、“お前もおぼえていたのか”って、うれしそうにわらってた。
お父さんは、お母さんがだいすきなんだね」
そうだね、と何度も頷く。
叔父さんは叔母さんを愛していた。
そして今も、想い続けている。
想い続けているからこそ忘れられず、忘れる事など出来ないからこそ苦しんでもいたのだ。
「……だいすきな人が、いなくなって、かわいそうだね」
大人の使う憐憫の混ざった『可哀想』という意味合いではなく、ただただ叔父さんの哀しみに寄り添う様に、菜々子は『かわいそう』だと言う。
それに同意して頷いた。
大切なモノを、愛する者を、喪う事は辛く苦しい。
それでも。
何もかもを喪う訳では無い、筈だ。
残るモノは、きっとある。
……それは、何か形のあるモノかもしれないし、思い出の様に、形にはならないものかも知れないが。
……そして、叔父さんには……。
「そうだね、哀しいね……。
でも、叔父さんには菜々子が居るよ。
叔父さんの大好きな人は、ちゃんとここに居る。
だからね、菜々子。
絶対の絶対に……、叔父さんを置いて居なくなっちゃったら、ダメだよ」
叔母さんの忘れ形見であり大切な実の娘である、菜々子が、居る。
叔母さんへの想いと、菜々子への想いは同じではないだろうけれども、それでも、叔父さんは“一人”では無い。
叔母さんとの思い出を共有出来る、大切な人がいる。
「うん! 菜々子、いなくならないよ!」
菜々子は元気良く頷いた。
「菜々子ね……、お父さんの子どもで、よかった!」
幸せそうに笑う菜々子に、「そうだね」と何度も頷く。
すると、菜々子はふと思い出した様な顔をして、ポケットの中から何かを取り出した。
「あっそうだ……、お姉ちゃんにこれあげる!」
菜々子から手渡されたのは、叔母さんが菜々子と……そして叔父さんと一緒に映っている、あの鮫川の写真だ。
「お父さんがね、やきまし……? してくれた。
お姉ちゃんも、かぞくだから、かぞくのしゃしん、あげるね。
今度、お父さんとお姉ちゃんと菜々子で、しゃしんとろうね!」
「やくそくだよ」と笑う菜々子と、指切りをして約束をする。
何のてらいもなく、菜々子が“家族”の輪の中に自分を入れてくれたのが……、本当に嬉しく思えたから。
「……あのね、かぞくは助けあうんだって、先生、いってた。
だから、お父さんがさびしくないように、菜々子、がんばりたい!
だからね、お姉ちゃん、菜々子に“りょうり”をおしえて……!」
「料理を? それは良いけれど、どうしたの?」
菜々子は前々から料理には興味を抱いていた様だけれども、一体こんなに急にどうしたと言うのだろうか。
訊ねると、少しだけ寂しそうな顔をして菜々子は答えた。
「うん、先生がね『バランスのいい食事がたいせつです』っていってたの。
お姉ちゃんがつくってくれるりょうりはとってもおいしいし、お野菜とかもたくさんはいってるけど……。
でも……お父さんりょうりできないし、菜々子も“めだまやき”しかまだつくれないから……」
菜々子が言わんとしている事を、そこで漸く察した。
……自分は何時までも此処に居られる訳では無い。
来年の春には、戻らなくてはならないから。
……それは最初から決まっていた事で、分かっていた事でもあったけれど、それをついつい意識の外へと……気付かない内にも押しやってしまっていた。
「お姉ちゃん、春がきたらかえっちゃうだよね……。
ずっといっしょにはいられないんだよね……」
ポツリポツリと、言葉を続ける菜々子に、僅かに頷く。
「……そう、だね」
ずっと一緒には、居られない。
……とても、残念な事だけれども。
……だが、……いや、だからこそ。
「……よしっ、お姉ちゃんが菜々子に一杯料理を教えてあげる!
……お姉ちゃんは、次の春が来たら帰らないといけないけれど……、でもそれまでに出来る限りの全てを教えてあげるよ。
菜々子一人でも、立派に料理が作れる様に」
ここを去る前に、少しでも多くのモノを、菜々子に残してあげたい。
形があるモノ・無いモノを問わずに。
「それにね、春には帰っちゃうけれど、何度でもここに戻ってくるよ。
だって私は、菜々子の“お姉ちゃん”だから」
帰っても、離れてしまっても。
繋がりが途絶えてしまう訳でも無い。
距離を隔てていても、一緒に過ごせる時間が少なくなってしまっていても。
思いだけでも、傍には居れると、そう信じたい。
何故ならば、“家族”、なのだから。
その言葉に、菜々子は「うん、うん……!」と何度も頷いて、そして顔を上げる。
「えへへ……。
お姉ちゃん、だいすき!」
そう言って菜々子が浮かべた満面の笑みは、何が起きたとしてもきっと忘れる事など出来はしないだろう。
そう、確かに思えた。
◆◆◆◆◆
【2011/05/30】
日中のバイトとして、学童保育も始める事にした。
応募して簡単な面接を受けた所、「何時でも来て下さい」と言われたので、今日から始める事にする。
職員の人から渡されたエプロンを纏い、新しい先生として子供たちに紹介されると、物珍しかったのか、あっと言う間に子供たちに周りを取り囲まれた。
「スッゲー、背えたっけー!」
「ねーねー、せんせーって、かれしいんのー?」
「もう、そう言うのってエッチだからダメなんだよ!」
ワイワイガヤガヤと、皆がみな思い思いの事を口々に言っている。
男女比は半々位だろうか?
「じゃあ色オニしよーぜ!
せんせーがオニな!」
子供たちの誰かがそう言うと、一気に蜘蛛の子を散らす様に子供たちが離れていく。
うん、子供が元気な事は良い事だ。
どうやらオニに任命されてしまった様なので、柔軟体操をしながら三十秒数えてから、目についた子供目掛けて駆け出した。
遠くを走り回っていた子供たちが、ギョッとした様に声を上げる。
「うわっ、ヤッベーっ、速えぇーっ!」
「色オニだから、色言ってーっ!!」
「よし、なら紫色!」
「うわーっ、どこだムラサキー!」
ワーワーキャーキャーッとはしゃぐ子供たちの相手を、全力でこなした……。
◇◇◇◇◇
学童保育の時間も終了間際となって、親が迎えに来た子供たちから帰って行く。
ふと、親を待つ子供たちの集団から離れた所にいる子供に気が付いた。
ポツンと、彼は高台のベンチに腰掛けて俯いている。
「あの……、あの子、どうかしたんですか?」
他の職員の人に尋ねてみると、職員の人は彼を見て深く溜め息を吐いてから教えてくれた。
「ああ、俊くんか……。
あの子、いつもああなのよ……」
その時、中年に行くか行かないか位の優しそうな女性が高台にやって来た。
どうやら、俊くんのお迎えに来たらしい。
「ごめんなさいね、俊くん。
少し、待たせてしまったかしら……?」
「……別に……」
優しく声を掛ける女性に、俊くんはより俯いてぶっきらぼうに答えた。
そして、ベンチから立ち上がると、女性を置いて駆け出していってしまう……。
女性はこちらに目をやってペコリと頭を下げた後、俊くんを追い掛けて行った。
「あの子ね、荻原俊くんって言うのだけれど……、……貰われっ子なのよね。
だからなのかしら……」
ふぅ、と職員の人は溜め息を吐きながらそう溢す。
「…………貰われっ子、ですか?」
「ええ。
俊くんのご両親は事故で亡くなってしまっていてね……。
…………それで、さっきお迎えに来ていた宇白さんに引き取られたのだそうだけど…………。
あまり上手くいってないみたいね……。
ここでみんなと遊んでいる時は俊くんも普通なんだけど、宇白さんが迎えに来る時間になるとああなのよ……」
職員の人がそう溢す間も子供たちのお迎えが次々にやって来て、最後の一人も無事にお迎えが来た為、バイト代を受け取ってからその日は家へと帰った。
◆◆◆◆◆
家に帰り、夕飯の支度をしようとしていると、菜々子が何やら話したそうなウズウズとした顔でこちらを見ながらソワソワとしていた。
どうかしたのか菜々子に訊ねてみると、菜々子はにっこりと笑って話してくれる。
「あのね、こないだお姉ちゃんが見つけてくれた“しゃしん”……、お父さんにかえしたんだ。
お父さんね、そのとき、やさしいかおで、ちょっとわらってたよ」
嬉しそうにそう報告する菜々子の頭を、よしよしと撫でながらそれを聞いた。
何時か叔父さんに昔の様に笑える様になって欲しいと、そう思っているだけに、少しだけでも笑ってくれたのがとても嬉しかったのだろう。
「良かったね」
うん、と大きく頷いた菜々子は、「あのね」、と切り出す。
「ねえ、お姉ちゃん……。
菜々子ね、お父さんだいすき」
菜々子は、そう曇りの無い目で言い切った。
「そうだね。
そして、菜々子がお父さんの事が大好きなのと同じ様に……、お父さんも菜々子の事が大好きだよ」
「きっと」も「多分」も、必要ない。
何故なら、そう確信出来るから。
「うん、菜々子もそうおもう!」
菜々子は明るく笑って頷いた。
確かに愛されているのだと、そう実感出来たのなら、菜々子がこの先、『お父さんはもう自分を要らなくなった』なんて思いに苦しむ事は無いだろう。
寂しいと感じる事はあっても、本当の意味で“独りぼっち”になってしまう事は無い。
「お父さんね、さめがわで、お母さんといっしょにお花つんだこと、わすれてなかったよ。
しゃしんかえしたときに、“お前もおぼえていたのか”って、うれしそうにわらってた。
お父さんは、お母さんがだいすきなんだね」
そうだね、と何度も頷く。
叔父さんは叔母さんを愛していた。
そして今も、想い続けている。
想い続けているからこそ忘れられず、忘れる事など出来ないからこそ苦しんでもいたのだ。
「……だいすきな人が、いなくなって、かわいそうだね」
大人の使う憐憫の混ざった『可哀想』という意味合いではなく、ただただ叔父さんの哀しみに寄り添う様に、菜々子は『かわいそう』だと言う。
それに同意して頷いた。
大切なモノを、愛する者を、喪う事は辛く苦しい。
それでも。
何もかもを喪う訳では無い、筈だ。
残るモノは、きっとある。
……それは、何か形のあるモノかもしれないし、思い出の様に、形にはならないものかも知れないが。
……そして、叔父さんには……。
「そうだね、哀しいね……。
でも、叔父さんには菜々子が居るよ。
叔父さんの大好きな人は、ちゃんとここに居る。
だからね、菜々子。
絶対の絶対に……、叔父さんを置いて居なくなっちゃったら、ダメだよ」
叔母さんの忘れ形見であり大切な実の娘である、菜々子が、居る。
叔母さんへの想いと、菜々子への想いは同じではないだろうけれども、それでも、叔父さんは“一人”では無い。
叔母さんとの思い出を共有出来る、大切な人がいる。
「うん! 菜々子、いなくならないよ!」
菜々子は元気良く頷いた。
「菜々子ね……、お父さんの子どもで、よかった!」
幸せそうに笑う菜々子に、「そうだね」と何度も頷く。
すると、菜々子はふと思い出した様な顔をして、ポケットの中から何かを取り出した。
「あっそうだ……、お姉ちゃんにこれあげる!」
菜々子から手渡されたのは、叔母さんが菜々子と……そして叔父さんと一緒に映っている、あの鮫川の写真だ。
「お父さんがね、やきまし……? してくれた。
お姉ちゃんも、かぞくだから、かぞくのしゃしん、あげるね。
今度、お父さんとお姉ちゃんと菜々子で、しゃしんとろうね!」
「やくそくだよ」と笑う菜々子と、指切りをして約束をする。
何のてらいもなく、菜々子が“家族”の輪の中に自分を入れてくれたのが……、本当に嬉しく思えたから。
「……あのね、かぞくは助けあうんだって、先生、いってた。
だから、お父さんがさびしくないように、菜々子、がんばりたい!
だからね、お姉ちゃん、菜々子に“りょうり”をおしえて……!」
「料理を? それは良いけれど、どうしたの?」
菜々子は前々から料理には興味を抱いていた様だけれども、一体こんなに急にどうしたと言うのだろうか。
訊ねると、少しだけ寂しそうな顔をして菜々子は答えた。
「うん、先生がね『バランスのいい食事がたいせつです』っていってたの。
お姉ちゃんがつくってくれるりょうりはとってもおいしいし、お野菜とかもたくさんはいってるけど……。
でも……お父さんりょうりできないし、菜々子も“めだまやき”しかまだつくれないから……」
菜々子が言わんとしている事を、そこで漸く察した。
……自分は何時までも此処に居られる訳では無い。
来年の春には、戻らなくてはならないから。
……それは最初から決まっていた事で、分かっていた事でもあったけれど、それをついつい意識の外へと……気付かない内にも押しやってしまっていた。
「お姉ちゃん、春がきたらかえっちゃうだよね……。
ずっといっしょにはいられないんだよね……」
ポツリポツリと、言葉を続ける菜々子に、僅かに頷く。
「……そう、だね」
ずっと一緒には、居られない。
……とても、残念な事だけれども。
……だが、……いや、だからこそ。
「……よしっ、お姉ちゃんが菜々子に一杯料理を教えてあげる!
……お姉ちゃんは、次の春が来たら帰らないといけないけれど……、でもそれまでに出来る限りの全てを教えてあげるよ。
菜々子一人でも、立派に料理が作れる様に」
ここを去る前に、少しでも多くのモノを、菜々子に残してあげたい。
形があるモノ・無いモノを問わずに。
「それにね、春には帰っちゃうけれど、何度でもここに戻ってくるよ。
だって私は、菜々子の“お姉ちゃん”だから」
帰っても、離れてしまっても。
繋がりが途絶えてしまう訳でも無い。
距離を隔てていても、一緒に過ごせる時間が少なくなってしまっていても。
思いだけでも、傍には居れると、そう信じたい。
何故ならば、“家族”、なのだから。
その言葉に、菜々子は「うん、うん……!」と何度も頷いて、そして顔を上げる。
「えへへ……。
お姉ちゃん、だいすき!」
そう言って菜々子が浮かべた満面の笑みは、何が起きたとしてもきっと忘れる事など出来はしないだろう。
そう、確かに思えた。
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