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自称特別捜査隊

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 あれから、里中さんは約束を破って単独行動を取り、更には『シャドウ』を暴走させてしまった事を深く反省した。
 今回は運が良かっただけで、一歩間違えれば里中さんもこちらも死んでいただろうから、再発だけは何としてでも防がねばならない。
 まぁ結果だけを語るなら、里中さんの『シャドウ』が現れる、というアクシデントは起こったものの最悪の事態までには至らず、本来の目的であった天城さんの救出こそは果たせなかったが、寧ろ戦力が増えたと言う面で見れば、決してマイナスではないのだが……。
 その後三人で話し合って、彼方の世界では決して一人では行動しない事を取り決めた。
 ついでに自分が暫定的にリーダー、と言う事にもなったが、そこに関しては花村が特にそう推すのだし里中さんも推すので民主主義的多数決の正義によって拒否するのもどうだと言う話になる。
 それにしてもリーダーか……。何とも責任重大だ。
 まぁ、普段通りに行動しても大丈夫だろう、多分……。

 ……あの城の中で聞いてしまった、天城さんの『心』の声。
 そこに偽りは無いと考えると、天城さんの心の決して少なくはない部分を里中さんが占めているのは間違いないだろう。
 ……天城さんが、その心の奥に何を隠していたのか。
 あの『シャドウ』と思わしき天城さんは、一体どんな思いが形を成したものなのか。
 それは、今の段階では分かり様もない。
 特に自分は天城さんと出会ってから日がまだ浅いのだ、そもそもの情報量が絶対的に少ない。
 だが、その心を解く鍵は、里中さんにあるのではないだろうか。

 そんな事を考えながら料理をテーブルに並べていると、丁度叔父さんが帰って来た。

「……なぁ、悠希。
 確かお前のクラスに、天城雪子って生徒がいたよな?
 前に一緒に帰ってただろ?」

 食卓についた叔父さんは、食べ始める前に一度こちらを見やってから、そう尋ねてきた。
 しかし一体、何故突然に……?

「天城さん? ……彼女がどうかしたんですか?」

 行方不明……という事になってはいるのだろう。
 実際は彼方の世界に囚われているのだが。
 しかしそれを警察は知る由も無い。
 現時点では、文字通りに自分達しかあの世界の事を知らないのだ。……尤も、天城さんをあの世界に放り出した【犯人】もまた恐らくはこの街の何処かで見ているのだろうが。

「あー……彼女から何か聞いたりしてないか?
 どうにも足取りが掴めなくなってるらしくてな。
 ……居場所に何か心当たりとかはないか?」

 心当たりと言うか、何処に居るのかは知ってはいるが、それを言う訳にはいかないし、そもそも信じては貰えないであろう。
 叔父さんは現実主義者だ。実際にそれを目の前で見せれば信じてはくれるだろうが、確たる証拠も示さずにそれを主張した所で高校生が若気の至りで変な妄想をしているだけとしか捉えてはくれないだろう。そして一度そう言った「認識」をされてしまうとそれを正す事は難しい。
 ……今目の前でテレビに手を突っ込んで彼方の世界の事を示そうにも、そうなれば確実に叔父さんは彼方の世界に連れて行けと言うだろうし、更に言うと自分たちの様な高校生が命の危険もある様な事に関わっている事に絶対に難色を示す。
 叔父さんが「良き大人」であるからこそ、その事について話辛い部分がある。
 少なくとも今、天城さんの救出の為に実際に動けるのは自分たちしか居ないのだ。そこで無駄に行動を制限される訳にはいかない。
 何時か叔父さんに事情を話さねばならぬ時が来るのだとしても、それは今では無いと思うのだ。
 その為、少し心苦しくはあるが叔父さんの問いにはぐらかす様に返す。

「……何か、とは?
 ……すみませんが、天城さんは私がこっちに引っ越して直ぐにご実家の手伝いで忙しかったみたいなので、あまり話したりする機会はありませんでしたし、天城さんの行先に心当たりは無いですね」

 そう答えると、叔父さんは頭を掻きながら僅かに溜め息を吐いた。

「……そうか。
 ……変な事尋ねちまったな。すまん」

 ……どうにも違和感を感じる質問だ。
 失踪した人を案じるというというよりも、まるで……。
 ……今の天城さんの状況は、被害者達の遺体が発見される前の状況と酷似している。
 叔父さんの事だからそれを心配しているんじゃないのかと思ったのだが、……どうにも怪しい。

 だが、どうしてそう感じたのかの説明は付かず、モヤモヤした気持ちでその日はさっさと眠りに就いた。





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