彼岸と此岸の境界線
◆◆◆◆◆
【2011/07/03】
一条と長瀬に誘われ、花村も交えて沖奈市へと遊びに行く。
ゲームセンターで、長瀬と二人で“太鼓の達人”の難易度:鬼に挑戦したり、ジュースの奢りを賭けて格ゲーで仁義無き戦いを繰り広げたり、四人で如何に早く景品を取れるかをクレーンゲームで勝負したりした。
ゲームセンターで一通り遊んだ後、八十稲羽に帰る前に一息吐こうと、駅前にある全世界に店舗を持つコーヒーのチェーン店に入る。
呪文の様なメニューを注文し、フラッペを人数分受け取ってから一条達が取っててくれた席へと向かった。
室内に居た時間が長かったとは言え、この暑い日だ。
喉をひんやりと冷やしてくれるフラッペの美味しさは一入である。
四人で雑談していると、ふと一条が何かを思い出したかの様な顔をした。
「そう言えば、19日から期末テストだよなー。
うわー、憂鬱だわ」
そんな事を言いながら一条は、はぁ……と溜め息を溢す。
テスト……と言われてその存在を意識してしまったからか、花村と長瀬もうげっ……と呻いた。
「……? 憂鬱になる程、一条の成績は悪かったか?」
花村と長瀬は兎も角として……。
確か、前回の中間で一条は上の下の上辺りから上の中の下辺りの成績だったと思うのだが……。
「そりゃ赤点とか補習とかの心配しなきゃなんねー程は悪く無いけどさ。
なんつーのか、暗記で何とかなる科目はともかく、数学とかはやっぱなー……。
公式丸暗記しても、解けない問題は結構あるじゃん」
そう言いながら一条は再度溜め息を溢した。
一条の苦手科目は数学らしい……。
まあ、数学は苦手な人はトコトン苦手な科目である。
自分が知ってる限りでは、花村と里中さんも数学を苦手としていた筈だ。
尚、巽くんと長瀬はほぼ全ての教科が苦手なのだそうだ。
「まず公式を暗記しようって点を尊敬すんぜ。
数学はマジで分からん」
両手を軽く上げて降参ポーズを取る長瀬を、花村が茶化す。
「長瀬の場合は、数学以外もヤバイだろ。
ま、俺もあんま人の事は言えねーけどさ……」
ハァ……、と三人は深い溜め息を吐いた。
そして、何故かジト目でこちらを見てくる。
「その点、鳴上は良いよなー……。
前の中間、断トツの総合点でトップだったじゃん」
ズズッと音を立てながら一条は口を尖らせる。
「まあ、総合点は確かに良かったが……。
科目毎に見れば、社会系の科目とかは私よりも点数が良い人は普通に居たぞ」
八十神高校のテスト問題はかなり科目担当者の好みが反映されているらしく、普通はほぼ習わない様な事項もテストの問題になっていた。
それが特に顕著だったのが社会系の科目だ。
大半の問題は解けたが、中にはどうしても分からないモノがあった。
社会系の科目は純粋な暗記科目なので、覚えていないのならその段階で手も足も出ない。
その分の失点があったので、社会系の科目では他の人が一位だった。
「その社会系科目でもトップ3には入ってたじゃん」
嫌味かよー……と一条は愚痴る。
嫌味等では無く、事実を言っているだけなのだが……。
こちらが少し反応に困っていると、一条はやれやれとばかりに肩を竦めた。
「ま、鳴上がそういうつもりで言ってんじゃねーってのは分かってるって。
ま、ただの愚痴だし気にすんなよ」
それならばそれで構わないが……。
話がテストになったからか、花村と長瀬も気が重そうな顔をしている。
「取り敢えず、期末に赤点が付くのは回避したいよな、やっぱ。
あーぁ……、後二週間ちょいしかねーし、もうそろそろ勉強始めねーとやべーな」
そう花村が言うと、長瀬も同意する様に頷いた。
「だな。
あんま成績が悪かったら、部活とかも出れなくなるし。
取り敢えず、世界史と英語と数学と古文・漢文と……」
「って、多過ぎだろそれ!
取り敢えずっつー量じゃねーだろ」
長瀬が挙げてゆく教科に、一条が思わずといった風に全力でツッコミを入れる。
幾ら苦手科目が多いのだとしても、取り敢えずでやる様な量では無い。
その量を一気にやろうとした所で、途中で投げ出してしまうのがオチである。
その後は、オススメの勉強方法等を教えあったり、ヤマ勘で乗り切ろうとする長瀬に三人でツッコミを入れたりとしながら、中々に賑やかな時間を共に過ごした。
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【2011/07/03】
一条と長瀬に誘われ、花村も交えて沖奈市へと遊びに行く。
ゲームセンターで、長瀬と二人で“太鼓の達人”の難易度:鬼に挑戦したり、ジュースの奢りを賭けて格ゲーで仁義無き戦いを繰り広げたり、四人で如何に早く景品を取れるかをクレーンゲームで勝負したりした。
ゲームセンターで一通り遊んだ後、八十稲羽に帰る前に一息吐こうと、駅前にある全世界に店舗を持つコーヒーのチェーン店に入る。
呪文の様なメニューを注文し、フラッペを人数分受け取ってから一条達が取っててくれた席へと向かった。
室内に居た時間が長かったとは言え、この暑い日だ。
喉をひんやりと冷やしてくれるフラッペの美味しさは一入である。
四人で雑談していると、ふと一条が何かを思い出したかの様な顔をした。
「そう言えば、19日から期末テストだよなー。
うわー、憂鬱だわ」
そんな事を言いながら一条は、はぁ……と溜め息を溢す。
テスト……と言われてその存在を意識してしまったからか、花村と長瀬もうげっ……と呻いた。
「……? 憂鬱になる程、一条の成績は悪かったか?」
花村と長瀬は兎も角として……。
確か、前回の中間で一条は上の下の上辺りから上の中の下辺りの成績だったと思うのだが……。
「そりゃ赤点とか補習とかの心配しなきゃなんねー程は悪く無いけどさ。
なんつーのか、暗記で何とかなる科目はともかく、数学とかはやっぱなー……。
公式丸暗記しても、解けない問題は結構あるじゃん」
そう言いながら一条は再度溜め息を溢した。
一条の苦手科目は数学らしい……。
まあ、数学は苦手な人はトコトン苦手な科目である。
自分が知ってる限りでは、花村と里中さんも数学を苦手としていた筈だ。
尚、巽くんと長瀬はほぼ全ての教科が苦手なのだそうだ。
「まず公式を暗記しようって点を尊敬すんぜ。
数学はマジで分からん」
両手を軽く上げて降参ポーズを取る長瀬を、花村が茶化す。
「長瀬の場合は、数学以外もヤバイだろ。
ま、俺もあんま人の事は言えねーけどさ……」
ハァ……、と三人は深い溜め息を吐いた。
そして、何故かジト目でこちらを見てくる。
「その点、鳴上は良いよなー……。
前の中間、断トツの総合点でトップだったじゃん」
ズズッと音を立てながら一条は口を尖らせる。
「まあ、総合点は確かに良かったが……。
科目毎に見れば、社会系の科目とかは私よりも点数が良い人は普通に居たぞ」
八十神高校のテスト問題はかなり科目担当者の好みが反映されているらしく、普通はほぼ習わない様な事項もテストの問題になっていた。
それが特に顕著だったのが社会系の科目だ。
大半の問題は解けたが、中にはどうしても分からないモノがあった。
社会系の科目は純粋な暗記科目なので、覚えていないのならその段階で手も足も出ない。
その分の失点があったので、社会系の科目では他の人が一位だった。
「その社会系科目でもトップ3には入ってたじゃん」
嫌味かよー……と一条は愚痴る。
嫌味等では無く、事実を言っているだけなのだが……。
こちらが少し反応に困っていると、一条はやれやれとばかりに肩を竦めた。
「ま、鳴上がそういうつもりで言ってんじゃねーってのは分かってるって。
ま、ただの愚痴だし気にすんなよ」
それならばそれで構わないが……。
話がテストになったからか、花村と長瀬も気が重そうな顔をしている。
「取り敢えず、期末に赤点が付くのは回避したいよな、やっぱ。
あーぁ……、後二週間ちょいしかねーし、もうそろそろ勉強始めねーとやべーな」
そう花村が言うと、長瀬も同意する様に頷いた。
「だな。
あんま成績が悪かったら、部活とかも出れなくなるし。
取り敢えず、世界史と英語と数学と古文・漢文と……」
「って、多過ぎだろそれ!
取り敢えずっつー量じゃねーだろ」
長瀬が挙げてゆく教科に、一条が思わずといった風に全力でツッコミを入れる。
幾ら苦手科目が多いのだとしても、取り敢えずでやる様な量では無い。
その量を一気にやろうとした所で、途中で投げ出してしまうのがオチである。
その後は、オススメの勉強方法等を教えあったり、ヤマ勘で乗り切ろうとする長瀬に三人でツッコミを入れたりとしながら、中々に賑やかな時間を共に過ごした。
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