未知への誘い
◆◆◆◆◆
疲れか、将又別の何かの所為か、半ば茫っとしたまま帰宅して、そのまま夕飯の支度に移った。
叔父さんと菜々子ちゃんと一緒に肉じゃがをつつく。
やはり疲れ果てている時は、こういったホッと出来る料理が特に美味しいと感じるものだ。
身体を蝕む疲れを癒さんと、モギュモギュと肉じゃがを食べていると、お茶で喉を潤していた叔父さんが不意に声をかけてきた。
「あー……そういや悠希、小西早紀って生徒は知ってるか?
同じ高校の筈だが」
「三年の小西先輩、ですか?
あまり親しい訳では無いのですが……一応の面識はあります」
全く知らぬ相手では無いが、ほぼ名前と顔位しか知らない関係だ。
しかし、一体何故叔父さんが小西先輩の事を尋ねてくるのだろう。
理由が分からず、思わず首を傾げた。
叔父さんは溜め息を一つ溢して、説明してくれる。
「ご家族から捜索願が出されていてな……署の連中で探しているんだが一向に足取りが掴めん。
何か心当たりはあるか?」
「行方不明……なんですか?
……すみませんが、心当たりは何も……」
たかだか一言二言交わした程度の間柄だ。
家出とかだったとしても、行き先なんて知る由もない。
「そうか……、すまん、変な事を訊いたな。
1日2日の家出位なんざ、稲羽でもそこまで珍しいって程でも無ぇ。
まぁ、あんな事件があったばっかで、署の方でもピリピリしてんだ。
……何事も無きゃ良いんだけどな……」
最後の方はボソッと呟く様な声だった。
後々になって思い返してみれば、叔父さんは既にこの時点で何か嫌な予感……刑事のカンとでも言うべき何かを感じていたのだろう。
この時に、叔父さんからもっと詳しく話を聞いていれば……何かは変わったのだろうか……。
だがこの段階で、小西先輩の失踪と、今日迷いこんだばかりのテレビの向こうの世界とを結び付ける事は、自分には終ぞ出来なかったのだった。
◇◇◇◇◇
今日起きた、実体験なのに全くもって信じられない出来事は、忘れようとした所で忘れられるモノでもない。
まず、テレビに入り込んだ、という段階からして、生まれてこのかた十数年で培ってきた常識とか或いは知識にある物理法則だかを完全に無視している。
しかも、その中には変な場所があって、変な着ぐるみもいて、更には《シャドウ》だか何だかは知らないが化け物まで住んでいるという始末だ。
まぁ、あんな化け物が現れたという話はトンと聞いた覚えは無いから、《シャドウ》とやらはこちら側には居ないのだろうけど。
どうであれ、そんなものはゲームとか小説とかアニメとか、創作の中の世界だけで十分である。
そりゃあ、憧れというかそういう空想をした事が全く無いとまでは言わない。
そういうのに興味があるからこそ、ゲームとか小説とかが大好きなのだから。
だがそれはあくまでも創作物の中に留まっているからこそ楽しいものなのである。
それが実際の生活に関わってくるとなると、完全にノーサンキュー、だ。
命懸けの戦いなんて、好奇心だけでやらかす様なものでも無い。
まぁ、もうテレビに入り込まなければ、あの着ぐるみにしろ化け物達にしろ、これ以上関わる事は無いのだろうけれど。
この時はそう自分を納得させ、早目に寝る事にした。
しかし、この時には既に。
これから一年、仲間達と共にその【真実】を追い求める事になる、幾重にも霧と謎に包まれた事件は。
多くの人がそうとは気付かないままに、その大きな渦の中に全てを引きずり込んでいた。
━━そう、これは……━━
━━かけがえのない仲間達との━━
━━【真実】を追い求めた、たった一年間の━━
━━絶対に忘れられない思い出の物語だ━━
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疲れか、将又別の何かの所為か、半ば茫っとしたまま帰宅して、そのまま夕飯の支度に移った。
叔父さんと菜々子ちゃんと一緒に肉じゃがをつつく。
やはり疲れ果てている時は、こういったホッと出来る料理が特に美味しいと感じるものだ。
身体を蝕む疲れを癒さんと、モギュモギュと肉じゃがを食べていると、お茶で喉を潤していた叔父さんが不意に声をかけてきた。
「あー……そういや悠希、小西早紀って生徒は知ってるか?
同じ高校の筈だが」
「三年の小西先輩、ですか?
あまり親しい訳では無いのですが……一応の面識はあります」
全く知らぬ相手では無いが、ほぼ名前と顔位しか知らない関係だ。
しかし、一体何故叔父さんが小西先輩の事を尋ねてくるのだろう。
理由が分からず、思わず首を傾げた。
叔父さんは溜め息を一つ溢して、説明してくれる。
「ご家族から捜索願が出されていてな……署の連中で探しているんだが一向に足取りが掴めん。
何か心当たりはあるか?」
「行方不明……なんですか?
……すみませんが、心当たりは何も……」
たかだか一言二言交わした程度の間柄だ。
家出とかだったとしても、行き先なんて知る由もない。
「そうか……、すまん、変な事を訊いたな。
1日2日の家出位なんざ、稲羽でもそこまで珍しいって程でも無ぇ。
まぁ、あんな事件があったばっかで、署の方でもピリピリしてんだ。
……何事も無きゃ良いんだけどな……」
最後の方はボソッと呟く様な声だった。
後々になって思い返してみれば、叔父さんは既にこの時点で何か嫌な予感……刑事のカンとでも言うべき何かを感じていたのだろう。
この時に、叔父さんからもっと詳しく話を聞いていれば……何かは変わったのだろうか……。
だがこの段階で、小西先輩の失踪と、今日迷いこんだばかりのテレビの向こうの世界とを結び付ける事は、自分には終ぞ出来なかったのだった。
◇◇◇◇◇
今日起きた、実体験なのに全くもって信じられない出来事は、忘れようとした所で忘れられるモノでもない。
まず、テレビに入り込んだ、という段階からして、生まれてこのかた十数年で培ってきた常識とか或いは知識にある物理法則だかを完全に無視している。
しかも、その中には変な場所があって、変な着ぐるみもいて、更には《シャドウ》だか何だかは知らないが化け物まで住んでいるという始末だ。
まぁ、あんな化け物が現れたという話はトンと聞いた覚えは無いから、《シャドウ》とやらはこちら側には居ないのだろうけど。
どうであれ、そんなものはゲームとか小説とかアニメとか、創作の中の世界だけで十分である。
そりゃあ、憧れというかそういう空想をした事が全く無いとまでは言わない。
そういうのに興味があるからこそ、ゲームとか小説とかが大好きなのだから。
だがそれはあくまでも創作物の中に留まっているからこそ楽しいものなのである。
それが実際の生活に関わってくるとなると、完全にノーサンキュー、だ。
命懸けの戦いなんて、好奇心だけでやらかす様なものでも無い。
まぁ、もうテレビに入り込まなければ、あの着ぐるみにしろ化け物達にしろ、これ以上関わる事は無いのだろうけれど。
この時はそう自分を納得させ、早目に寝る事にした。
しかし、この時には既に。
これから一年、仲間達と共にその【真実】を追い求める事になる、幾重にも霧と謎に包まれた事件は。
多くの人がそうとは気付かないままに、その大きな渦の中に全てを引きずり込んでいた。
━━そう、これは……━━
━━かけがえのない仲間達との━━
━━【真実】を追い求めた、たった一年間の━━
━━絶対に忘れられない思い出の物語だ━━
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