時の輪環、砂塵の城
◆◆◆◆◆
“戻った”そこは、あの果てない焦土だけが広がる滅びた地とは全く異なる……生命溢れる大地が広がる世界だった。
微風に揺れる木の葉が奏でるざわめき、眠る生き物達の吐息と鼓動の音。
見上げた夜空には、月の輝きと天を多い尽くす程一面に輝く星々の光。
自分の吐息と大地を踏み締め行く音しか存在しなかったあの“未来”とは、何もかもが違い過ぎて戸惑ってしまう程だ。
星が唄う様に瞬く夜空が、『僕』の曖昧な記憶の中に存在してあるのか無いのかは分からないけれど。
見上げている内に、どうしてか泣きそうになる程に懐かしく愛しくも思えてくる。
大丈夫。
ちゃんと“やり直せば”。
あんな“未来”にはならない。
あんな“結末”にはならない。
全て“取り戻せる”。
何も喪わずに済む。
愛しいモノを、大切な人達を、輝かしい宝物たちを。
『僕』はまた、もう一度……。
そう、“やり直し”さえすれば。
『僕』はルキナを喪わない。
大切なあの手を離さずに居られる。
愛しいあの子を傷付ける全てから、守ってあげられる。
共に生きる事が、出来る筈だから。
“取り戻そう”、『僕』の大切な全てを。
『ギムレー』に奪われた、愛しいモノ達を。
全ての“過ち”を起きる前に正して、全てを“無かった事”にして。
時の因果律を捻じ曲げて、“悲劇”も“惨劇”も刻まれた“罪禍”も、その全てを時の狭間へと押し込めて隠してしまおう。
何も起こらず何も喪わない“未来”で、この手が喪った誰もが望んでいた“未来”で、それを塗り潰してしまおう。
そうすればきっと、赦される。
この手は、きっとあの子の手を取る事が出来る。
愛しい温もりは、再びこの腕の中に帰ってくるのだ。
『あの日』喪った全てが、きっと──
「……『あの日』……?」
思考の端に過ったその言葉を、『僕』はそっと掬い上げた。
『あの日』。
それが何なのかは『僕』には分からない。
きっと『僕』にとってはとても重要な事で、そして同時にとても恐ろしい事でもあった。
それが何なのかは分からないのに、『変えなくてはならない』と、そんな思いを『僕』の心は訴えるのだ。
“変えなくてはならない”もの、“無かった事”にしなくてはならない事。
それが、『あの日』なのだろうか?
それを“変える”事が出来れば、『僕』はルキナを。
『ギムレー』に囚われている愛しい人を、“取り戻す”事が出来るのだろうか……。
ならば、変えてみせよう。
あの笑顔を、もう一度“取り戻す”為に。
『ギムレー』に奪われてしまった“幸い”を、あの子にもう一度届ける為に。
『僕』は、その為ならば、何だってしてあげられる。
曖昧な記憶を辿って、“変える”べき過去を『僕』は探してゆく。
それがどんなに困難な事であっても、因果の糸を解く様に断ち切る様に、あの滅びへの流れを変えてみせよう。
蝶の羽ばたきが滅びを導くのなら、その蝶を握り潰してでも。
如何なる代償を支払うのだとしても、愛しいその温もりより、愛しいその笑顔よりも大切なモノなんて、ありはしないのだから。
絶対に、“取り戻して”みせる。
ルキナ……君が望む全てを、『僕』は叶えてあげよう。
君が守りたいものを、『僕』が守ろう。
『僕』にたった一つ残っている、何よりも愛しい宝物。
君の“幸い”が、『僕』の望みだから……。
「『僕』は今度こそ、君を守り抜く。
もう絶対に、離しはしない……」
祈りを捧げる様に、誓いを立て。
この道の先に、ルキナと共に生きる“未来”があると、固く信じて。
過去を“変えて”全ての“過ち”を正すべく、『僕』の最後の永い旅路が始まった。
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“戻った”そこは、あの果てない焦土だけが広がる滅びた地とは全く異なる……生命溢れる大地が広がる世界だった。
微風に揺れる木の葉が奏でるざわめき、眠る生き物達の吐息と鼓動の音。
見上げた夜空には、月の輝きと天を多い尽くす程一面に輝く星々の光。
自分の吐息と大地を踏み締め行く音しか存在しなかったあの“未来”とは、何もかもが違い過ぎて戸惑ってしまう程だ。
星が唄う様に瞬く夜空が、『僕』の曖昧な記憶の中に存在してあるのか無いのかは分からないけれど。
見上げている内に、どうしてか泣きそうになる程に懐かしく愛しくも思えてくる。
大丈夫。
ちゃんと“やり直せば”。
あんな“未来”にはならない。
あんな“結末”にはならない。
全て“取り戻せる”。
何も喪わずに済む。
愛しいモノを、大切な人達を、輝かしい宝物たちを。
『僕』はまた、もう一度……。
そう、“やり直し”さえすれば。
『僕』はルキナを喪わない。
大切なあの手を離さずに居られる。
愛しいあの子を傷付ける全てから、守ってあげられる。
共に生きる事が、出来る筈だから。
“取り戻そう”、『僕』の大切な全てを。
『ギムレー』に奪われた、愛しいモノ達を。
全ての“過ち”を起きる前に正して、全てを“無かった事”にして。
時の因果律を捻じ曲げて、“悲劇”も“惨劇”も刻まれた“罪禍”も、その全てを時の狭間へと押し込めて隠してしまおう。
何も起こらず何も喪わない“未来”で、この手が喪った誰もが望んでいた“未来”で、それを塗り潰してしまおう。
そうすればきっと、赦される。
この手は、きっとあの子の手を取る事が出来る。
愛しい温もりは、再びこの腕の中に帰ってくるのだ。
『あの日』喪った全てが、きっと──
「……『あの日』……?」
思考の端に過ったその言葉を、『僕』はそっと掬い上げた。
『あの日』。
それが何なのかは『僕』には分からない。
きっと『僕』にとってはとても重要な事で、そして同時にとても恐ろしい事でもあった。
それが何なのかは分からないのに、『変えなくてはならない』と、そんな思いを『僕』の心は訴えるのだ。
“変えなくてはならない”もの、“無かった事”にしなくてはならない事。
それが、『あの日』なのだろうか?
それを“変える”事が出来れば、『僕』はルキナを。
『ギムレー』に囚われている愛しい人を、“取り戻す”事が出来るのだろうか……。
ならば、変えてみせよう。
あの笑顔を、もう一度“取り戻す”為に。
『ギムレー』に奪われてしまった“幸い”を、あの子にもう一度届ける為に。
『僕』は、その為ならば、何だってしてあげられる。
曖昧な記憶を辿って、“変える”べき過去を『僕』は探してゆく。
それがどんなに困難な事であっても、因果の糸を解く様に断ち切る様に、あの滅びへの流れを変えてみせよう。
蝶の羽ばたきが滅びを導くのなら、その蝶を握り潰してでも。
如何なる代償を支払うのだとしても、愛しいその温もりより、愛しいその笑顔よりも大切なモノなんて、ありはしないのだから。
絶対に、“取り戻して”みせる。
ルキナ……君が望む全てを、『僕』は叶えてあげよう。
君が守りたいものを、『僕』が守ろう。
『僕』にたった一つ残っている、何よりも愛しい宝物。
君の“幸い”が、『僕』の望みだから……。
「『僕』は今度こそ、君を守り抜く。
もう絶対に、離しはしない……」
祈りを捧げる様に、誓いを立て。
この道の先に、ルキナと共に生きる“未来”があると、固く信じて。
過去を“変えて”全ての“過ち”を正すべく、『僕』の最後の永い旅路が始まった。
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