『ペルソナ4短編集』
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寒いのが大の苦手で、エアコンなどを全開にした上でホットカーペットと炬燵が無いと冬を乗り切れないとまで豪語する直斗にとって。
山間部にある事もあって毎年の様にかなりの降雪があり、12月を過ぎた頃から雪が降り積もり底冷えする寒さに襲われる八十稲羽の年末年始は、非常に厳しいものがあった。
寒さから逃れる様に炬燵に埋もれていた直斗は、それでも熱が足りなかったのか、ジリジリと俺の方へと寄ってきて、遂には俺と炬燵の間にすっぽりと入ってきてしまう。
まるで人に甘えてくる猫みたいだななんて思いながら、俺は愛しい恋人のほっそりとした身体を抱き締める。
この町で起きた事件の真実を共に追ったあの日々から、一年。
受験を控えた高校三年生であり、試験勉強に追われている時期であるにも関わらず、俺は八十稲羽に帰ってきていた。
それは勿論、愛しい恋人である直斗と二人で正月を過ごす為である。
事件を真に解決させてからも色々とあったし、その度に顔を合わせていたから「久し振り」と言う感覚はあまり無いが……。それでも毎度毎度新たな事件に巻き込まれたりしていた為、こうやって二人きりでのんびりと過ごす機会は全く無かったので、この貴重な時間の素晴らしさを俺は全力で噛み締めていた。
本当はクリスマスも一緒に過ごしたかったが、流石に受験に集中して欲しいと直斗に怒られてしまったので、どうにかそれを説き伏せてせめて大晦日と正月の二日間は一緒に過ごす事を了承して貰った。
まあ、何かと相手の事情を優先しようとする直斗は、それでも随分と引け目を感じている様だったが……。しかし、その言葉の裏で一緒に過ごせる事を喜んでいた事を、直斗の事に関しては恐ろしく敏いと自負している俺は確りと把握している。
勉学の面に関して言えば随分と貯金はあるのでほんの数日息抜きをする程度ではどうこうなる事は無く、逆に根を詰め過ぎる方が却って良くない結果になると思うのだと、そう言いくるめているので問題は無い。別に口からの出任せと言う訳でなく、実際そうだろうと思うし。
将来的に直斗の傍に居て役に立てる様になれる事を視野に入れて、この国の最高学府を志望しているが。だからこそ、勉強には一切妥協せず励んでいたつもりであるし、模試などの類は誰にも文句など言わせない成績を叩き出してきた。
両親や叔父さんも、俺がこの賢く愛しい女の子に心底首ったけになっている事を重々承知している為、受験直前のこの時期に態々八十稲羽に向かう事を苦笑いと共に許してはくれている。
母親などは「分かっているとは思うけど、責任の取れない様な事はしちゃ駄目だからね」などと念押してきた程である。
失礼な、何があっても俺は必ず責任を取る……と言いたい所だが、まあそう言う意味では無いのは分かるし、俺としても事を急いで直斗を傷付けたりするつもりは毛頭無い。もしもこの想いが届かなかったとしても、年単位の時間を掛けてでも直斗を振り向かせるつもりであったのだ。
それを考えれば、今この時滾る熱情を御して直斗を傷付けない様にする事など難しくも何ともない。それでも、俺の身体の温もりを確かめる様に抱き着いてくるそれに、「愛しい」と言う気持ちが際限なく膨れ上がっていくのを抑えるのは難しかった。
その膨れ上がった想いのままに口付けをその頬に落とすと、直斗は少し頬を赤らめつつも、「く、唇が、良いです……」などと消え入りそうな声でありながらもそんな余りにも可愛らしい『おねだり』をしてくる。
それに否などある筈も無く、二度三度と口付けを降らせていく。
一年の最後の日が静かに過ぎ去り新たな一年が始まっても、恋人たちの語らいは留まる事を知らず、そうやって静かに夜は更け行くのであった。
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寒いのが大の苦手で、エアコンなどを全開にした上でホットカーペットと炬燵が無いと冬を乗り切れないとまで豪語する直斗にとって。
山間部にある事もあって毎年の様にかなりの降雪があり、12月を過ぎた頃から雪が降り積もり底冷えする寒さに襲われる八十稲羽の年末年始は、非常に厳しいものがあった。
寒さから逃れる様に炬燵に埋もれていた直斗は、それでも熱が足りなかったのか、ジリジリと俺の方へと寄ってきて、遂には俺と炬燵の間にすっぽりと入ってきてしまう。
まるで人に甘えてくる猫みたいだななんて思いながら、俺は愛しい恋人のほっそりとした身体を抱き締める。
この町で起きた事件の真実を共に追ったあの日々から、一年。
受験を控えた高校三年生であり、試験勉強に追われている時期であるにも関わらず、俺は八十稲羽に帰ってきていた。
それは勿論、愛しい恋人である直斗と二人で正月を過ごす為である。
事件を真に解決させてからも色々とあったし、その度に顔を合わせていたから「久し振り」と言う感覚はあまり無いが……。それでも毎度毎度新たな事件に巻き込まれたりしていた為、こうやって二人きりでのんびりと過ごす機会は全く無かったので、この貴重な時間の素晴らしさを俺は全力で噛み締めていた。
本当はクリスマスも一緒に過ごしたかったが、流石に受験に集中して欲しいと直斗に怒られてしまったので、どうにかそれを説き伏せてせめて大晦日と正月の二日間は一緒に過ごす事を了承して貰った。
まあ、何かと相手の事情を優先しようとする直斗は、それでも随分と引け目を感じている様だったが……。しかし、その言葉の裏で一緒に過ごせる事を喜んでいた事を、直斗の事に関しては恐ろしく敏いと自負している俺は確りと把握している。
勉学の面に関して言えば随分と貯金はあるのでほんの数日息抜きをする程度ではどうこうなる事は無く、逆に根を詰め過ぎる方が却って良くない結果になると思うのだと、そう言いくるめているので問題は無い。別に口からの出任せと言う訳でなく、実際そうだろうと思うし。
将来的に直斗の傍に居て役に立てる様になれる事を視野に入れて、この国の最高学府を志望しているが。だからこそ、勉強には一切妥協せず励んでいたつもりであるし、模試などの類は誰にも文句など言わせない成績を叩き出してきた。
両親や叔父さんも、俺がこの賢く愛しい女の子に心底首ったけになっている事を重々承知している為、受験直前のこの時期に態々八十稲羽に向かう事を苦笑いと共に許してはくれている。
母親などは「分かっているとは思うけど、責任の取れない様な事はしちゃ駄目だからね」などと念押してきた程である。
失礼な、何があっても俺は必ず責任を取る……と言いたい所だが、まあそう言う意味では無いのは分かるし、俺としても事を急いで直斗を傷付けたりするつもりは毛頭無い。もしもこの想いが届かなかったとしても、年単位の時間を掛けてでも直斗を振り向かせるつもりであったのだ。
それを考えれば、今この時滾る熱情を御して直斗を傷付けない様にする事など難しくも何ともない。それでも、俺の身体の温もりを確かめる様に抱き着いてくるそれに、「愛しい」と言う気持ちが際限なく膨れ上がっていくのを抑えるのは難しかった。
その膨れ上がった想いのままに口付けをその頬に落とすと、直斗は少し頬を赤らめつつも、「く、唇が、良いです……」などと消え入りそうな声でありながらもそんな余りにも可愛らしい『おねだり』をしてくる。
それに否などある筈も無く、二度三度と口付けを降らせていく。
一年の最後の日が静かに過ぎ去り新たな一年が始まっても、恋人たちの語らいは留まる事を知らず、そうやって静かに夜は更け行くのであった。
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