このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第三章 【偽りの天上楽土】

◆◆◆◆◆






 日が沈むとそれに合わせた様に『万世極楽教』の信者たちの一日の生活も終わりを迎え、皆眠りに就く。
 外に人の気配が絶えた事を確認してから、鬼殺の任に就く時の装備をしっかりと身に纏い、夜の闇の中へと静かに飛び出した。
 今夜の目的は、予め目星を付けていた場所の一つ、寺院の敷地内でも少しばかり奥まった場所に在る名目上は「倉庫」とされている場所を調査する事だ。
 上空を旋回しながら此方の様子を確認してくれている鎹鴉たちに合図を送ってから、「倉庫」の扉を開ける。
 もし外で何かあれば、鎹鴉たちが教えてくれるだろう。

 月灯りだけが僅かに射し込む「倉庫」は暗く、手燭に灯りを点して僅かな光源を頼りに。深い闇の中に抱かれた奥へと進む。
 一見すると、使われなくなった農具やらが転がっているだけのただの「倉庫」だ。
 だが、注意深く歩き回っていると、巧妙に隠されていた隠し扉の先に地下に続く階段があった。
 階段の下からは、紛れも無い腐臭を感じる。
 一応気休め程度に鼻を袖で覆いながら階段を降りたそこは。
 まさに、地獄絵図とでも言うべき、凄惨な光景が広がっていた。

 死んでとうに数日以上は経った男の遺体が二つ、その奥には身が腐り落ち半ば白骨化しつつある遺体が一つ……これも腐汁を吸ってグズグズになった衣服の残骸を見るに恐らくは男のものだ。
 更には、完全に骨になった遺体が幾つも無造作に打ち捨てられている。その殆どが、残った骨盤の形を見るに男のものであろう。
 まだ半ば原型らしきものを留めている比較的新しい遺体へと近付き、それを確認する。
 その二つの遺体が日輪刀を抱えているのを見て、彼等が先行して潜入調査を行っていた隊士の成れの果てである事に気付いた。
 死因になったのだろう、胸を大きく袈裟懸けに斬られたかの様な傷痕には蛆が集ってその断面が蠢く白に覆われている。そうして集った蛆たちの半数程は既に蛹になって間もなく蠅として腐肉の山に集る事になるのだろう。
 既に命の無いそれは、蛆に喰われている以外の欠損は無い。……これを成したのは恐らくは鬼の仕業なのであろうが、その鬼は彼等を食べる事無くこの場に打ち捨てた様だ。

 ……鬼は、人を食べねば生きていけない。
 かつては人だった存在が人を喰い荒らす事を赦して良い訳では無いのだが、一つの命として見た時にはそれ以外は食べられず食べねば死ぬと言うのであれば人を喰い殺す事自体はある種仕方の無い面もある事である。
 だが、こうして食べる訳でも何でも無く、恐らくはただ「邪魔」だったと言うそれだけで奪われた命を見ると、心から遣る瀬無くなる。命を繋ぐ為でも無い、そんな無機質な殺生程罪深い事は無い。
 若い女性ばかりが消える……そう言った年頃の女性を執拗に狙う下衆である事は分かってはいたが。
 こうして徒に散らされた命を思うと、心の奥底で怒りの様な熱と、深い哀しみの様な冷たさが混ざり合う。
 こうして日輪刀を抱えて事切れているのを見るに、その最後まで鬼と戦おうとしていたのだろう。
 力及ばず、こうして命を落としたのだとしても。それでも彼等の矜持は鬼如きが折れるものでは無かった。
 だからこそ、こんな場所で腐らせていくのではなく、ちゃんと連れ帰って弔ってやりたかった。
 そこにもう魂は無いのだとしても……目の前に在るのはただ腐っていくしかない抜け殻なのだとしても。
 それは紛れも無く彼等の生きていた証の一つであるからこそ、こうして蛆に集られ喰い荒らされてゆくのを見るのは辛いものがある。しかし今は任務の途中だ。彼等を連れて帰ってやる事は出来ない。
 だが必ず、此処に潜む鬼を倒した後で、連れて帰るから、と。
 そう誓って、彼等の遺体に手を合わせる。
 死した者に対して生者がしてやれる事など、余りにも少ない。
 自分に出来る事も、こうして彼等の死後の安息を願う事と、そして彼等の命を奪った者を必ず討ち果たすと誓う事だけで。既に命を喪ったその身体に癒しの力を行使したとしても、腐った肉体を元の見た目に戻す事すら叶わない。
 そして、この場に転がっているのは男の遺体やその成れの果てだけではない。
 寧ろ、それ以上に目を惹くのが、夥しい程の衣服の残骸だ。そしてそれらの衣服の殆どが女性用である。
 恐らく、鬼が人を喰い殺した後の、「食い残し」をここに捨てているのであろう。
 一体どれ程の命を弄び食い散らかしてきたのか考えたくも無い程に、かつてはそれを纏っていた者が確かにこの世に存在したのだと言う唯一の証であるかの様に、無数に散らばっている。
 べっとりと付着した血が腐りまるで泥の様になっている古さを感じる衣服もあれば、比較的まだ新しい状態のものもある。しかし、確実に言える事として、その衣服を纏っていた者達は既にこの世には居ない。
 極楽浄土の皮を被った『万世極楽教』の本当の姿……、地獄そのものが此処にはあった。

 凄惨たる鬼の被害者たちの痕跡を目にして、絶句して立ち尽くす様にその衣服の残骸をみていると。
 ふと、折り重なった衣服の山の上に、鬼殺隊の隊服を見付けた。
 比較的最近此処に放り込まれたのだろう。虫食いなどの痕は無く、血に汚れている事以外は綺麗な状態だった。
 そして、その隊服の中に無造作に放り捨てられた様に。端が鮮やかな朱に染められた髪紐を見付ける。
 ……その髪紐に、自分は見覚えがあった。
 蝶屋敷に運び込まれて来ていた重傷者の一人、自分より少し上だろう程度の……まだ年若い女性だった。
 酷い傷であり、このままでは今夜が峠になるだろうと言う程の状態で。隠に回収されるまでの手当てが上手くいかなかったのか、傷が膿んでしまい酷い熱も出ていてその意識は朦朧としていた。
 自分はそんな彼女の手を励ます様に握って、そしてペルソナの力で癒した。
 その時に、彼女の髪を束ねていたのがその髪紐であったと言う事を、覚えている。
 何か特別に会話したと言う訳では無い。彼女は日々大勢やって来る傷病者の一人だったと言うだけだ。
 名前も知らない、どんな為人であるのかも知らない。その程度の関係性。
 だが、癒しの力によって苦痛から解放された時のその安らかな顔はよく覚えている。
 朦朧とした意識の中で見上げていたのだろう、何処かぼんやりとしながらも救われた様なその瞳を覚えている。
 どうか彼女がこの先大きな怪我をする事無く無事である様にと、心から願った事も覚えている。
 特別に大切な人と言う訳では無いが、自分にとっては紛れも無く等しく大切な人達の中の一人であった。
 生きていて欲しい人の一人であった。
 ……だが、此処にこうして彼女の髪紐が在ると言う事は、彼女はもう……。
 悼むと言う程に関わりがある訳では無くとも、それでも、こんな場所に置き去りにしたくは無くて。
 せめてこれだけでも、とその髪紐を拾って大切にしまう。
 骨も残っていないだろう彼女の痕跡は、この髪紐と隊服しかないのだから。
 必ず仇は討つ、と。名も知らぬ彼女にそう誓って。

 此処にはもう他には何も無さそうだから、と。死の充満した「倉庫」の地下から出ると。
 しのぶさんの鎹鴉の「艶」が息を切らす程の全速力で飛んで来た。


『胡蝶シノブ、上弦ノ弐ト戦闘中! 至急救援ニ向カエ!!』






◆◆◆◆◆






 しのぶさんが、上弦の弐の鬼と戦闘している。
 そう聞いた瞬間に、余りにも大きな胸騒ぎに居ても立っても居られなくなった。
 しのぶさんは冷静な人だ。単独で上弦の弐の鬼に立ち向かった所で勝機が薄い事など分かっている筈だ。
 だから、自分かカナヲが到着するまでは、時間稼ぎに徹するか或いは一時的に後退する事すら選べるだろう。
 それは分かっている。分かって、いるのだけれど。しかし、どうしてか胸騒ぎは収まらない。
 何をしてでも一秒でも早く辿り着かなければ「間に合わない」、と。そう何かが訴えて来る。
 少しでも躊躇っていたらしのぶさんを永遠に喪ってしまう事になる、と。そう直感する。
 そもそもしのぶさんが上弦の弐の鬼と会敵して、「艶」が自分に救援を要請するまでにどれ程の時間が経ってしまったのだろう。
 もし、もしも。辿り着いた時に、もう手遅れであったら。と。そう考えるだけで恐ろしいのに、どうしても思考はそれを無為に思い描いてしまう。
 スクカジャを掛けて全力で走っているが、果たしてそれで間に合うのだろうか。
 胸騒ぎが収まらない。それでも急ぐ事しか自分に出来る事は無い。
「艶」を置き去りにしてしまったが、しのぶさんが何処にいるのかは何と無く分かる。勘かもしれないが、「こっちだ」と何かに導かれる様に真っ直ぐにそこに向かった。
 分厚い壁に覆われているが関係無い。
 走りながら十握剣を抜き放ち、壁をぶち抜く様にして走る勢いをそのまま乗せて叩き切る。

 そして砕かれた瓦礫と木片が舞い散る中に。
 足を切られたのか立てなくなりながらも必死に庇う様にしのぶさんを抱えたカナヲに向かって、容赦無く鉄扇を振るおうとしていた鬼の姿を目にして。

 状況を把握し思考するよりも速く身体は動いて、鬼の両腕を斬り飛ばした。
 鬼は驚いた様に眼を瞬かせながら、追撃の為に首を目掛けて振るわれた刀身を避ける様に一旦距離を取る様に後ろに軽く跳ぶ。

「おっと、びっくりしたなぁ。まさか壁を壊してくるなんて」

 そんな事を言いながら全く動揺していない様に見える鬼は、斬り落とされた筈の腕を瞬時に新たに生やし、そしてその両手に鉄扇……の様に見える氷で作られた扇を手にした。
 その鬼の目に刻まれているのは、『上弦の弐』。
 十二鬼月の中でも最上位に近い存在だ。
 上弦の弐の鬼は突然の乱入者を観察しようとしているのか、少なくとも今この瞬間に攻撃しようとする様子は無い。


「カナヲ、しのぶさんは無事なのか……?」

 カナヲとしのぶさんの傍に駆け寄りながら、手早く状況を理解しようとする。

 しのぶさんは意識が無いのかその目を閉じていて。
 息はしているのだがその呼吸の音は明らかにおかしい。
 血が足りていないのか、その顔色は酷く悪い。
 その手を取ると、まるで霜焼けになっているかの様にその指先は冷たかった。
 そんなしのぶさんを抱えていたカナヲの方も、無傷とは到底言えない状態だ。
 あちこちに細かい傷が刻まれている他に太腿の辺りを大きく斬られている為、これでは動けないだろう。

 傷付いたしのぶさんの姿に、そしてカナヲの姿に。
 自分の中で何かが荒れ狂う程に熱く、そして冷たく研ぎ澄まされていくのを感じる。
 まるで、あの日……菜々子を喪った日の様に。
 心の内に、殺意に似た感情が沸き起こる。
 自分の大切な人達をこんな風に傷付けた相手を赦せそうにない。
 自分が間に合わなかったらしのぶさんもカナヲも死んでいたのだと思うと、どうにか間に合った事への安堵と同時に鬼への殺意が高まっていく。
 ここまでの激しい感情を抱いたのは、この『夢』を見始めてから初めての事だった。

「師範……しのぶ姉さんは、アイツと戦って氷の血鬼術で肺をやられてしまって。私は、何とか間に合ったけど、でも足を……」

 しのぶさんの状態はかなり悪い様だ。
 肺を潰されたのか、胸の動きが明らかにおかしい。
 それでも何とか生きようと、しのぶさんの小柄な身体は意識を失っても必死に足掻いている。
 そしてカナヲの傷も、目立ったものは足の傷だけとは言えそれはかなり深く、無理に動けば最悪二度と歩けなくなるかもしれない程のものであった。
 だが、大丈夫だ、この程度なら元に戻せる。

「大丈夫だ、後は任せてくれ。何とかしてみせるから」

 しのぶさんの手を握ったまま、『メシアライザー』を使う。
 煉獄さんを癒したその時よりも力が戻っているからなのか、或いはまだ消耗していなかったからのか。以前煉獄さんの命を繋ぎ止めた時と比べればその消耗の程度は軽い。
『メシアライザー』の柔らかな光は、しのぶさんだけではなくカナヲの傷も癒していった。
 しのぶさんの苦し気な呼吸は安定したものに変わり、その顔色も普段のそれに戻る。どうやらちゃんと治せたみたいだ。


「えーっ! 凄いね! 今のどうやったの? 
 死にかけだった筈なのに、安定した呼吸に戻ってるじゃないか! 
 それは君の力かい? そんな気配は無いけど、もしかして気配を誤魔化しているだけで君も鬼なのかい?」

 その様子を見ていた鬼は、驚いた様にそんな事を言ってくる。
 鬼の言葉は場違いな程に明るく、しかしその発言は何処までも神経を苛立たせるものだ。
 しのぶさんを瀕死に追い込みカナヲを傷付けた鬼の言葉に構う必要なんて無いけれど。

「違う。俺は鬼じゃない。人間だ」

 流石に、こんな奴と同類扱いされるのは不愉快極まりなかったので否定しておいた。
 実際、自分はただの人間だ。鬼ではない。

「……しのぶさんを、そしてカナヲを傷付けたのは、お前だな?」

「傷付けたって、それは誤解だよ。
 俺は皆を『救って』あげようとしただけさ」

 ──『救う』。
 その言葉で蘇るのは、美しくも悲しい天上楽土で耳にした、あの男の正気を失った絶叫だ。
 その動機が何であれ、菜々子をあの世界に連れ去ってそして一度死なせる原因になったあの人の行動を、自分はあの日以来一度も赦していない。
 彼を裁きたい訳でも何でもないが、しかし菜々子に対する行いを赦す事はこの先も無いだろう。
 そして、目の前の鬼の言動は、どうにもあの言葉を……見当違いにも程がある『救済』を齎そうとしたそれと、重なる部分がある。
 ……まあ、あの人に関しては本気で人を救いたかったが故の事であったので、目の前の人を喰う事しか考えていない鬼なんかと重ねるのは幾ら何でも侮辱が過ぎるが。

「『救う』? お前は何を言っているんだ。
 お前がやっている事はただの殺戮だ。
 信仰に縋るしか無かった人達を喰い荒らし、そして邪魔だと言う理由で喰う訳でも無いのに殺し……。
 何故そこまで命を塵の様に扱うんだ、何故そこまで心を踏み躙る事が出来るんだ」

 目の前のこの鬼も、かつては人であった筈なのに。泣いて笑って怒って、大切な何かがあったのだろう者だった筈なのに。
 何故ここまで壊れてしまったのだろう。それも全て鬼舞辻無惨の所為なのか。
 鬼舞辻無惨への更なる怒りが胸の中に蓄積する。
 だが、目の前の鬼はそんな感傷をせせら笑う様に明るく答える。

「心を踏み躙るだなんて、そんな酷い事はしないさ。
 だって俺は教祖様だからね。信者たちの気持ちを受け止めて、そしてその願いを叶える為に『救っている』。
 皆、苦しいのも辛いのも嫌だし死ぬのは嫌なんだ。
 だから、俺の一つになって永遠を生きるって事は、彼らにとっては『救い』なんだよ」

「……は?」

 目の前の鬼が何を言っているのか全く分からず。
 何かが完全に破綻している論理に、思わず絶句する。

「地獄も極楽も、そんなものは何処にも存在しない。
 神も仏も、人が作り出した『こうであったら良いな』って妄想だからね。死んだら腐って土に還るだけ、『無』になるだけ……。
 でも、そんな事も分からない頭が悪い可哀想な人が多いんだよ。
 だから、俺がそんな人達を『救って』あげるんだ。
 だってそれが役目だからね」

 ほら、俺って優しいでしょ? と。
 そう嗤う鬼の一切を、理解出来なかった。

 今まで、それなりの数の鬼を倒してきた。
 言葉を交わした鬼もいたし、言葉を交わす暇すら与えず倒した鬼も居た。だが、何にせよ。ここまで狂った事をさも当然の様に宣う鬼は居なかったのは確かだ。
 鬼舞辻無惨に近い鬼と言うのは、もしや皆この鬼の様に狂いきっているのだろうか。そうであるならば、その首魁である鬼舞辻無惨はどれ程狂っているのか。
 考えるだけでゾッとする話だ。

「……なら、信者でもない相手も喰い荒らすのは何故だ? 
 それに、信者の中でも女ばかり狙うのは? 
 お前の論理は最初から破綻している。
 そんなものは、『救い』じゃない。……もし本気でそれが『救い』だと思っているなら、お前には心が無いとしか言えない」

「女の子はやっぱ、柔らかく美味しいし、栄養があるからね〜。
 だって、赤ちゃんを自分の胎の中で育てられる様な力があるんだよ? 
 それにしても、心が無いだなんて酷い事を言うんだなぁ。
 俺より優しい人なんて居ないのに」

 鬼はニコニコと笑いながらも、その眼には一切の感情が浮かんでいない。
 目は口程に物を言う。逆に言えば目は嘘を吐けない。
 この鬼は、言葉を交わしている間も一度も感情の揺れが無かった。
 口振りでは笑っていようと、或いは心外だと憤っていようと。
 ……本当にこの鬼には『心』が無いのかもしれない。
 だが、この鬼に心があろうと無かろうとそれはどうでも良い話だ。
 最初から、この鬼を赦す気など無いのだから。

 これ以上言葉を交わすのは無駄だと、十握剣を構える。

「男を食べる趣味は無いんだけどなぁ。
 呼吸も使えないみたいだし、しかもそれは日輪刀でも無いじゃないか。それでどうやって俺を殺すつもりなのかな。
 ……まあ、君は何か面白い事が出来るみたいだから、ちょっと遊んであげても良いけど」

 そう言って、鬼は両手の扇を広げる。
 そして、ニッコリと煽る様に嘲笑った。

「そこの柱の子もそうだけど、人間って全部無駄なのに頑張り続けるのが好きだよね。
 お姉さんの仇を討ちたくてここまで頑張って、それなのに俺に手も足も出なくても最後まで抗って。
 俺はね、そんな人間の儚さと愚かさが大好きなんだ」

 しのぶさんの覚悟と行動を嘲笑うその鬼の言葉に、自分を抑えていた鎖が砕け散ったのを感じる。

 ──絶対に殺す。

 紛れもない殺意と共に、戦いの火蓋は切られた。






◆◆◆◆◆
4/9ページ
スキ