第三話『未来へと続く約束』
◆◆◆◆◆
「……そろそろ出てきたらどうだ?」
クロムにそう言われ。
ルフレは身を潜めていた収納棚の中から姿を現した。
……ルキナに、婚約の誓いを立てようと、そう決意したのは良いのだけれども。少しだけ踏ん切りがつかなくて。
それで、どう切り出せば良いのかと、クロムに相談しに行った所、クロムは呆れた様な顔をして。
そして、そこに隠れている様に、と。
ルフレの執務室の収納棚にルフレを押し込めた。
何が何だかさっぱり意味不明で混乱したルフレだったが、一体何の意図なのかとクロムに問い質そうとしたその時。
ルキナが、執務室にやって来て、出るに出られなくなった。
その為、ルキナとクロムが話している内容を、結果として隠れて盗み聞きしてし
まう事になった訳なのだが……。
「ルキナ……」
ルフレは、ルキナへの申し訳なさと自分の不甲斐無さへの呆れに、思わず深い溜息を零してしまう。
ルキナがクロムに語った事。
「望み過ぎる」事を恐れる心、そうすればこの『幸せ』を喪ってしまうのではないかと言う「思い込み」も。
自分にルフレと結ばれる「資格」が本当にあるのかと、悩み踏み出す事が出来ないと言う葛藤も。
本来ならば、ルフレが先に気付いてそれを解消しなくてはならない事であったのだし、そもそもルフレがもっと早くに思い切ってルキナに求婚するべきだったのだ。
ルフレの煮え切らない曖昧な態度が、ルキナをより苦しめてしまったのだろう……。
だからこそ、ルフレは自身に忸怩たる思いを懐いてしまう。
そんなルフレの背中を、クロムが力強く叩いた。
結構な力が入っていたので、ルフレも驚く。
「ちょっ……結構痛かったんだけど今の……」
「すまんな力加減を間違えた。
まあそこで独りウジウジと反省会をする位なら、先にやるべき事はあるだろう?
前にも言った様に、俺ではあの子の望みを叶えてやれん。
……ルキナの望みを叶えられるのは、お前だけなんだ」
……愛する妻を得て、そして「ルキナ」と言う愛娘を得て。
姉や妹と言った「血」の繋がりではない、もっとまた別のモノで繋がった、自分の新たな『家族』を得てから。
クロムは、随分と変わったと思う。
初めて出逢ったあの日の様な、熱意が身体を振り回している様な感じでは無くて、より思慮深くなった。
元々その懐はとても大きかったのだけれども、最近益々それの深さを感じる事がある。
クロムは、ルキナの「本当の父親」にはなれないと言っているしそれは事実だけれども。
ルキナの『幸せ』を案じるその姿は、間違いなく「父親」に違いなかった。
……それが何だか嬉しい。
「それは…………。……うん、そうだね。
遅くなってしまったかもしれないけれど。
僕は僕なりに、その責任を果たしに行くよ」
ルフレがそう決意して頷くと。
クロムは安心した様に笑った。
「全く、俺の『半身』は随分と手が掛かるな。
まさか、ルキナを傷付けないかと心配でどうしたら良いか分からない、なんて相談されるとは夢にも思わなかったぞ。
……傍から見たら、これ以上に無い位思い合っているのは分かるのに、妙な所で互いに足踏みしたり尻込みして微妙にすれ違っているのは、似ているのか何なのか……。
……『家族』が必要なのは、きっとお前もなんだ。
だから。ルキナと二人で、ちゃんと幸せになれ、ルフレ。
お前が一生を掛けて果たすべき『使命』は、それだからな」
そうクロムから贈られた心からのエールに背を押されて。
ルフレは、ルキナの元へと駆け出すのであった。
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「……そろそろ出てきたらどうだ?」
クロムにそう言われ。
ルフレは身を潜めていた収納棚の中から姿を現した。
……ルキナに、婚約の誓いを立てようと、そう決意したのは良いのだけれども。少しだけ踏ん切りがつかなくて。
それで、どう切り出せば良いのかと、クロムに相談しに行った所、クロムは呆れた様な顔をして。
そして、そこに隠れている様に、と。
ルフレの執務室の収納棚にルフレを押し込めた。
何が何だかさっぱり意味不明で混乱したルフレだったが、一体何の意図なのかとクロムに問い質そうとしたその時。
ルキナが、執務室にやって来て、出るに出られなくなった。
その為、ルキナとクロムが話している内容を、結果として隠れて盗み聞きしてし
まう事になった訳なのだが……。
「ルキナ……」
ルフレは、ルキナへの申し訳なさと自分の不甲斐無さへの呆れに、思わず深い溜息を零してしまう。
ルキナがクロムに語った事。
「望み過ぎる」事を恐れる心、そうすればこの『幸せ』を喪ってしまうのではないかと言う「思い込み」も。
自分にルフレと結ばれる「資格」が本当にあるのかと、悩み踏み出す事が出来ないと言う葛藤も。
本来ならば、ルフレが先に気付いてそれを解消しなくてはならない事であったのだし、そもそもルフレがもっと早くに思い切ってルキナに求婚するべきだったのだ。
ルフレの煮え切らない曖昧な態度が、ルキナをより苦しめてしまったのだろう……。
だからこそ、ルフレは自身に忸怩たる思いを懐いてしまう。
そんなルフレの背中を、クロムが力強く叩いた。
結構な力が入っていたので、ルフレも驚く。
「ちょっ……結構痛かったんだけど今の……」
「すまんな力加減を間違えた。
まあそこで独りウジウジと反省会をする位なら、先にやるべき事はあるだろう?
前にも言った様に、俺ではあの子の望みを叶えてやれん。
……ルキナの望みを叶えられるのは、お前だけなんだ」
……愛する妻を得て、そして「ルキナ」と言う愛娘を得て。
姉や妹と言った「血」の繋がりではない、もっとまた別のモノで繋がった、自分の新たな『家族』を得てから。
クロムは、随分と変わったと思う。
初めて出逢ったあの日の様な、熱意が身体を振り回している様な感じでは無くて、より思慮深くなった。
元々その懐はとても大きかったのだけれども、最近益々それの深さを感じる事がある。
クロムは、ルキナの「本当の父親」にはなれないと言っているしそれは事実だけれども。
ルキナの『幸せ』を案じるその姿は、間違いなく「父親」に違いなかった。
……それが何だか嬉しい。
「それは…………。……うん、そうだね。
遅くなってしまったかもしれないけれど。
僕は僕なりに、その責任を果たしに行くよ」
ルフレがそう決意して頷くと。
クロムは安心した様に笑った。
「全く、俺の『半身』は随分と手が掛かるな。
まさか、ルキナを傷付けないかと心配でどうしたら良いか分からない、なんて相談されるとは夢にも思わなかったぞ。
……傍から見たら、これ以上に無い位思い合っているのは分かるのに、妙な所で互いに足踏みしたり尻込みして微妙にすれ違っているのは、似ているのか何なのか……。
……『家族』が必要なのは、きっとお前もなんだ。
だから。ルキナと二人で、ちゃんと幸せになれ、ルフレ。
お前が一生を掛けて果たすべき『使命』は、それだからな」
そうクロムから贈られた心からのエールに背を押されて。
ルフレは、ルキナの元へと駆け出すのであった。
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