第三話『竜の娘』
◆◆◆◆◆
焼け付く様な灼熱感と同時に、生命までもが凍り付きそうなそんな悍しい寒さを感じる。
まるで、城の書庫で読んだ本に書かれていた地獄に生きながらに落とされているかのようだと……燃え尽きそうな思考の片隅でふと考えてしまった。
指先から次第に熱が奪われていきそれはもう脈打つ心臓にすら届こうとしていて……最後に残ったその熱が消え去ったその時が、きっと自分の「終わり」なのだろうと、理解を拒みたくともそう分かってしまう。
冷たく凍えていく心に比例する様に、「死」の足音は静かに迫ってきていて。
恐くて恐くて……ここから逃げ出してしまいたいのに、何をしても身体はピクリとも動かない。
時間の感覚など狂っている世界では、立ち止まる事無く近付いて来ている筈の「死」が、まるで永遠に引き延ばされているかの様でもあり……その永劫に続いているかの様な恐ろしい時間が心を蝕んでいく。
抵抗しようとする気力すら尽きかけたその時。
ほんの指先程度の……しかし凍えきった心身には十分に過ぎる程の温もりが、胸元に僅かに触れた様な気がした。
そして、その温もりはゆっくりと静かに……だが確実に、全てが凍り付く様な冷たさを拭い去る様に追い払っていく。
何時しか、耳元にまで迫り喉元を撫でようとしていた「死」はまだその気配は消えはせずとも遠ざかり、心まで凍り付かせていた冷たさは優しい温もりによって払われて。
身を焼き焦がす様な灼熱感も、穏やかな温もりによって薄められるかの様に鎮まっていき、完全には消えずとももう息すら儘ならぬ程の苦しみからは解放された。
そして、やがて優しい温もりは静かに離れていったが、しかしその気配は近くにあって。
遠くであっても「死」の気配が消えない不安や恐怖を、優しく打ち消してくれるかの様だった。
その温もりの気配に安心したからか、トロトロと……まるで暖かで穏やかな春の陽射しに包まれているかの様に、優しい眠りの気配に包まれていく。
眠りは「死」に近付く事であるけれど、この温もりが傍に居てくれるなら、怖くは無くて。
だから、ゆっくりと眠りの淵へと沈んでいくのであった。
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焼け付く様な灼熱感と同時に、生命までもが凍り付きそうなそんな悍しい寒さを感じる。
まるで、城の書庫で読んだ本に書かれていた地獄に生きながらに落とされているかのようだと……燃え尽きそうな思考の片隅でふと考えてしまった。
指先から次第に熱が奪われていきそれはもう脈打つ心臓にすら届こうとしていて……最後に残ったその熱が消え去ったその時が、きっと自分の「終わり」なのだろうと、理解を拒みたくともそう分かってしまう。
冷たく凍えていく心に比例する様に、「死」の足音は静かに迫ってきていて。
恐くて恐くて……ここから逃げ出してしまいたいのに、何をしても身体はピクリとも動かない。
時間の感覚など狂っている世界では、立ち止まる事無く近付いて来ている筈の「死」が、まるで永遠に引き延ばされているかの様でもあり……その永劫に続いているかの様な恐ろしい時間が心を蝕んでいく。
抵抗しようとする気力すら尽きかけたその時。
ほんの指先程度の……しかし凍えきった心身には十分に過ぎる程の温もりが、胸元に僅かに触れた様な気がした。
そして、その温もりはゆっくりと静かに……だが確実に、全てが凍り付く様な冷たさを拭い去る様に追い払っていく。
何時しか、耳元にまで迫り喉元を撫でようとしていた「死」はまだその気配は消えはせずとも遠ざかり、心まで凍り付かせていた冷たさは優しい温もりによって払われて。
身を焼き焦がす様な灼熱感も、穏やかな温もりによって薄められるかの様に鎮まっていき、完全には消えずとももう息すら儘ならぬ程の苦しみからは解放された。
そして、やがて優しい温もりは静かに離れていったが、しかしその気配は近くにあって。
遠くであっても「死」の気配が消えない不安や恐怖を、優しく打ち消してくれるかの様だった。
その温もりの気配に安心したからか、トロトロと……まるで暖かで穏やかな春の陽射しに包まれているかの様に、優しい眠りの気配に包まれていく。
眠りは「死」に近付く事であるけれど、この温もりが傍に居てくれるなら、怖くは無くて。
だから、ゆっくりと眠りの淵へと沈んでいくのであった。
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