第九話『心の在処』
◆◆◆◆◆
意識が戻った時、ルフレは光の射さぬ薄暗い部屋に、手を縛られて転がされていた。
頼りなく揺れる小さな灯火だけが唯一の光源で。
大きな獣の胎の中に居るかの様な気味の悪い居心地の悪さを感じるのに、何故か酷く懐かしくも感じる。
だが、その懐かしさに反して全く見覚えの無い場所だった。
── ここは一体何処だ……。自分は一体、直前まで何を……。
何故か腹の辺りが痛むが、手を縛られている為手で押さえる事も出来ず。困惑しながら周囲を見回そうとしたその時。
「……漸く目覚めたか」
薄暗い部屋の中。その薄暗がりに溶け込むかの様に、そこに何者かが佇んでいた。
その姿を認識した瞬間、ルフレの頭は割れる様に痛む。
「お前は……! ルキナは何処だ……! まさか……」
『真実の泉』で現れた、ルフレの『真なる影』を名乗る存在。
ルフレの本性……邪竜ギムレーと呼ばれる怪物の心を持った、ルフレ自身だと、このものは自分をそう称した。
『人間』である筈の自分が、伝説に謳われる邪竜そのものであるだなんて到底信じられないけれども……。
だが、『影』に無理矢理に見せられた『真実の泉』に映った自分の顔は……『化け物』としか呼べぬ『何か』であった。
三対の紅い眼、前方に長く伸びた一対の角、暗紫色の鱗に覆われた異形の相貌……。
自分の姿とは似ても似つかぬ……醜く悍ましい化け物のそれを、『真実の泉』はルフレの『真実』であると示した。
到底受け入れ難い筈のそれを……心の何処かでは、静かに受け止めてしまっていて。だが、それを認められずに拒絶した。
すると『影』は、ルフレの心を折る為にルキナを甚振ろうとして、その首を絞めて……。
そこから先の記憶は酷く曖昧だ。
この場にルキナが見当たらない事が良い事なのか悪い事なのかすらも分からない。
……もし、ルキナが殺されていたり、酷く傷付けられていたりしていたその時は……。
最悪の事態を考えた瞬間、酷く凶暴で破壊的な衝動が激しい嵐の様にルフレの心を支配する。
ルフレの様子を黙って観察していた『影』は、ルフレの言葉に僅かに肩を竦めた。
「やれやれ……『人間ごっこ』で腑抜けているだけかと思ったら、本性の部分もしっかり残っているじゃないか。
この分なら、お前を完全に喰らってもギムレーとして蘇るのに支障は無さそうだね。まあ安心したよ。
さて、ルキナの事なら……『僕』としては残念な事に、彼女にはまだ「何も」していないさ。
彼女はまだ『人間』だよ。ここには居ないけどね。
全く……面倒な事をしてくれものだ。
あの瞬間に『蒼炎』を彼女に託したんだろう?
『蒼炎』さえ揃えば『覚醒の儀』を行えたと言うのに……。
だがまあ……彼女はここに自らの意志で来るだろうけども。
他ならぬお前を助ける為にね。
……全く、美しい『愛』じゃないか。反吐が出る」
そう吐き捨てた『影』は、にまにまと嗤いながらルフレの髪を乱暴に鷲掴みにして、その耳元で囁く様に言う。
「この邪竜の領域とも呼べる場所にのこのことやって来て無事でいられる訳が無いのにねぇ……。
『愛』なんて無価値な衝動のままに生きる事は全く愚かだ。
まあ、『僕』が生まれたこの場所で、彼女を歓待するのも悪くは無いさ。光一つ届かない闇の如き、とびきりの絶望を贈ろう。
お前も愉しみだろう?
お前の望み通り、彼女の全てを……意志も魂も尊厳も何もかもをお前のモノに出来るんだから」
「僕は……そんな事は絶対に望んでいない……!
僕はただ……ルキナと共に生きたいだけだ」
『影』の悍ましい言葉を、身動きが取れないながらもルフレは心から否定する。
ルキナを自分のモノにしたいと望んだ事など一度も無い。
ルキナは……彼女の全ては、彼女自身のモノだ。
それを、彼女以外が力尽くで踏み躙って言い訳は無い。
だが、『影』はそんなルフレの言葉をせせら笑った。
「共に生きる? 彼女と? お前が??
くっふふふっ、あぁ可笑しいねぇ、馬鹿も休み休み言いなよ。
神竜の下僕のあの娘が、邪竜たるお前と共に生きるなんて!
お前が言う所の『化け物』を本性に持つ者と、『人間』の彼女が、共に生きられる訳は無いだろうに!
お前の本当の姿を知れば、彼女とてお前を拒絶するさ!
お前たちが言う『愛』なんて、所詮はその程度の薄っぺらいものでしかない。無意味で無価値なものだ。
ギムレーであるお前が、共に生きたいとそう心から『願う』と言う事は、即ち彼女の全てを縛り付けて己が物として、彼女を邪竜の眷属とするしかないのさ!
そんな事も理解出来無いとは……全く以て愚かだね!」
大笑いしながらルフレの身体を揺さぶってくる『影』のその言葉に……ルフレは何も言い返せなかった。
ルフレ自身も……、共に生きると言う『願い』は到底叶わないと、そう思っていたから……。
王女と平民と言う身分の差なんて処の問題では無くて。
邪竜と、それを討つ使命を負う一族の姫君。
『人間』に非ざる『化け物』と、『人間』。
いっそ、ルキナが【呪い】によってその身を窶していた様な美しい『竜』ならまだマシだったかもしれないが。
己の本性であると示されたそれは、まさに怪物と……『化け物』としか呼べない様な……見るからに邪悪なもので。
こんな『化け物』が『人間』と共に生きる事なんて出来はしないと……ルフレは絶望と共に感じていた。
ルキナだって……あの姿を見れば、きっとルフレを拒絶する。
あの眼差しが、恐怖と嫌悪感と拒絶に染まる瞬間を想像するだけで……いっそ死にたくなってしまう。
……だけれども、やはり『影』の言葉に頷く訳にはいかない。
例え、自分の細やかな……今となっては大き過ぎる『願い』が叶わなくても、それはもう良いのだ。
共に生きられなくても、二度と逢えなくても。それで良い。
ただ、同じ空の下の何処かにルキナが居てくれるのなら。
遥か遠い場所でも、そこでルキナが『幸せ』になってくれるなら、心から笑っていてくれるなら。
そしてそれを信じて、遠く離れた場所で、二度とは逢えぬ愛しい人の『幸せ』を祈り願えるなら、もうそれだけで良いのだ。
ルキナの自由を奪ってまで、彼女が彼女として思うがまま望むがままに生きる権利を奪ってまで。自分の『願い』を押し付けたいとは思わないし……それを是とするのはルフレにとっては『愛』ではなく『悪』そのものであった。
自分の本性とも呼べるそれが『悪』と示されるものであったとしても、どう生きるか何を成すかは自分の意志で決められる。
だからこそ、己が『人間』と共に生きる事は叶わない『化け物』であるのだとしても、ルフレは最後まで『人間』としての自分を貫き通す。
そして、『化け物』としてルキナに討たれる未来が待ってるのだとしても、それを受け入れるつもりであった。
例えルキナに『化け物』だと拒絶されたとしても、それを決して恨まない、怒りなど感じない、ただただ受け入れる。
ルフレにとって、『愛』とはそう言うものだった。
そして、それ程に『愛』する者がこの世に存在していると言う事は、限りない喜びであり幸福であった。
……『影』は、『愛』を無意味だ無価値だと嗤う。
……『影』の言う通り、『影』こそが邪竜ギムレーの本来在るべきであった心や人格……その在り方であると言うのならば。
今のルフレは、ギムレー自身にも理解不可能な程に得体の知れない気味の悪い価値観と意志を獲得しているのだろう。
だからこそ『影』はルフレを排除し、その心を屈服させて、本来ギムレーとして在るべき在り方に戻ろうとしている、
……その為に、ルフレの心を折る為ならば、『影』は何でもしようとするだろう。……それこそ、ルキナに手を出してでも。
……ルフレは、ルキナに逃げて欲しかった。
『蒼炎』を託したのは、『蒼炎』に執着している『影』に嫌な予感を覚えたのと、あれは本来ルキナに託された物だからで。
決して、それを手に死地に飛び込んできて欲しいなんて、欠片も願ってはいなかったのだ。
『真実の泉』に独り置き去りにされたのだとしても、近くには彼女の父親である聖王が居るのだし、『人間』に戻れた状態ならば聖王も彼女の言葉に耳を貸すだろう。
ギムレーの復活を阻止する為に戦う必要があるのだとしても、それは彼女の役目では無い筈だ。
『影』の手の届かない場所で、平和に生きて欲しかったのだ。
……だけれども。
ルフレを救い出す為に、先陣を切ってでもこの闇の中にルキナは飛び込んできてしまうと。そんな確信めいた予感がある。
だが、それを待ち構える『影』が何の策も弄さぬ筈は無く。
とても危険な目に遭うだろう、もしかしたら酷く傷付く事になるのかもしれない……。それを想像するのは酷く恐ろしい。
そして。……「助けに来ないでくれ」とそう願う一方で。
もし、この深い闇の底にまで、あの蒼い輝きが射し込んでくれるのならば……、と。そんな事も考えてしまう。
そんな矛盾した思考を抱えつつも、ルフレは今唯一ルキナの為に出来る事を……最後まで足掻き続けようと決意する。
何があっても、何をされても。
決して『影』には屈しないと、この身を邪竜ギムレーとしての本性のそれに明け渡してはなるものかと。
邪竜ギムレーの復活が、例え僅かな間でも遅れるように。
ルフレは、ルキナの存在を心の支えにして。
『影』に抗うのであった……。
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意識が戻った時、ルフレは光の射さぬ薄暗い部屋に、手を縛られて転がされていた。
頼りなく揺れる小さな灯火だけが唯一の光源で。
大きな獣の胎の中に居るかの様な気味の悪い居心地の悪さを感じるのに、何故か酷く懐かしくも感じる。
だが、その懐かしさに反して全く見覚えの無い場所だった。
── ここは一体何処だ……。自分は一体、直前まで何を……。
何故か腹の辺りが痛むが、手を縛られている為手で押さえる事も出来ず。困惑しながら周囲を見回そうとしたその時。
「……漸く目覚めたか」
薄暗い部屋の中。その薄暗がりに溶け込むかの様に、そこに何者かが佇んでいた。
その姿を認識した瞬間、ルフレの頭は割れる様に痛む。
「お前は……! ルキナは何処だ……! まさか……」
『真実の泉』で現れた、ルフレの『真なる影』を名乗る存在。
ルフレの本性……邪竜ギムレーと呼ばれる怪物の心を持った、ルフレ自身だと、このものは自分をそう称した。
『人間』である筈の自分が、伝説に謳われる邪竜そのものであるだなんて到底信じられないけれども……。
だが、『影』に無理矢理に見せられた『真実の泉』に映った自分の顔は……『化け物』としか呼べぬ『何か』であった。
三対の紅い眼、前方に長く伸びた一対の角、暗紫色の鱗に覆われた異形の相貌……。
自分の姿とは似ても似つかぬ……醜く悍ましい化け物のそれを、『真実の泉』はルフレの『真実』であると示した。
到底受け入れ難い筈のそれを……心の何処かでは、静かに受け止めてしまっていて。だが、それを認められずに拒絶した。
すると『影』は、ルフレの心を折る為にルキナを甚振ろうとして、その首を絞めて……。
そこから先の記憶は酷く曖昧だ。
この場にルキナが見当たらない事が良い事なのか悪い事なのかすらも分からない。
……もし、ルキナが殺されていたり、酷く傷付けられていたりしていたその時は……。
最悪の事態を考えた瞬間、酷く凶暴で破壊的な衝動が激しい嵐の様にルフレの心を支配する。
ルフレの様子を黙って観察していた『影』は、ルフレの言葉に僅かに肩を竦めた。
「やれやれ……『人間ごっこ』で腑抜けているだけかと思ったら、本性の部分もしっかり残っているじゃないか。
この分なら、お前を完全に喰らってもギムレーとして蘇るのに支障は無さそうだね。まあ安心したよ。
さて、ルキナの事なら……『僕』としては残念な事に、彼女にはまだ「何も」していないさ。
彼女はまだ『人間』だよ。ここには居ないけどね。
全く……面倒な事をしてくれものだ。
あの瞬間に『蒼炎』を彼女に託したんだろう?
『蒼炎』さえ揃えば『覚醒の儀』を行えたと言うのに……。
だがまあ……彼女はここに自らの意志で来るだろうけども。
他ならぬお前を助ける為にね。
……全く、美しい『愛』じゃないか。反吐が出る」
そう吐き捨てた『影』は、にまにまと嗤いながらルフレの髪を乱暴に鷲掴みにして、その耳元で囁く様に言う。
「この邪竜の領域とも呼べる場所にのこのことやって来て無事でいられる訳が無いのにねぇ……。
『愛』なんて無価値な衝動のままに生きる事は全く愚かだ。
まあ、『僕』が生まれたこの場所で、彼女を歓待するのも悪くは無いさ。光一つ届かない闇の如き、とびきりの絶望を贈ろう。
お前も愉しみだろう?
お前の望み通り、彼女の全てを……意志も魂も尊厳も何もかもをお前のモノに出来るんだから」
「僕は……そんな事は絶対に望んでいない……!
僕はただ……ルキナと共に生きたいだけだ」
『影』の悍ましい言葉を、身動きが取れないながらもルフレは心から否定する。
ルキナを自分のモノにしたいと望んだ事など一度も無い。
ルキナは……彼女の全ては、彼女自身のモノだ。
それを、彼女以外が力尽くで踏み躙って言い訳は無い。
だが、『影』はそんなルフレの言葉をせせら笑った。
「共に生きる? 彼女と? お前が??
くっふふふっ、あぁ可笑しいねぇ、馬鹿も休み休み言いなよ。
神竜の下僕のあの娘が、邪竜たるお前と共に生きるなんて!
お前が言う所の『化け物』を本性に持つ者と、『人間』の彼女が、共に生きられる訳は無いだろうに!
お前の本当の姿を知れば、彼女とてお前を拒絶するさ!
お前たちが言う『愛』なんて、所詮はその程度の薄っぺらいものでしかない。無意味で無価値なものだ。
ギムレーであるお前が、共に生きたいとそう心から『願う』と言う事は、即ち彼女の全てを縛り付けて己が物として、彼女を邪竜の眷属とするしかないのさ!
そんな事も理解出来無いとは……全く以て愚かだね!」
大笑いしながらルフレの身体を揺さぶってくる『影』のその言葉に……ルフレは何も言い返せなかった。
ルフレ自身も……、共に生きると言う『願い』は到底叶わないと、そう思っていたから……。
王女と平民と言う身分の差なんて処の問題では無くて。
邪竜と、それを討つ使命を負う一族の姫君。
『人間』に非ざる『化け物』と、『人間』。
いっそ、ルキナが【呪い】によってその身を窶していた様な美しい『竜』ならまだマシだったかもしれないが。
己の本性であると示されたそれは、まさに怪物と……『化け物』としか呼べない様な……見るからに邪悪なもので。
こんな『化け物』が『人間』と共に生きる事なんて出来はしないと……ルフレは絶望と共に感じていた。
ルキナだって……あの姿を見れば、きっとルフレを拒絶する。
あの眼差しが、恐怖と嫌悪感と拒絶に染まる瞬間を想像するだけで……いっそ死にたくなってしまう。
……だけれども、やはり『影』の言葉に頷く訳にはいかない。
例え、自分の細やかな……今となっては大き過ぎる『願い』が叶わなくても、それはもう良いのだ。
共に生きられなくても、二度と逢えなくても。それで良い。
ただ、同じ空の下の何処かにルキナが居てくれるのなら。
遥か遠い場所でも、そこでルキナが『幸せ』になってくれるなら、心から笑っていてくれるなら。
そしてそれを信じて、遠く離れた場所で、二度とは逢えぬ愛しい人の『幸せ』を祈り願えるなら、もうそれだけで良いのだ。
ルキナの自由を奪ってまで、彼女が彼女として思うがまま望むがままに生きる権利を奪ってまで。自分の『願い』を押し付けたいとは思わないし……それを是とするのはルフレにとっては『愛』ではなく『悪』そのものであった。
自分の本性とも呼べるそれが『悪』と示されるものであったとしても、どう生きるか何を成すかは自分の意志で決められる。
だからこそ、己が『人間』と共に生きる事は叶わない『化け物』であるのだとしても、ルフレは最後まで『人間』としての自分を貫き通す。
そして、『化け物』としてルキナに討たれる未来が待ってるのだとしても、それを受け入れるつもりであった。
例えルキナに『化け物』だと拒絶されたとしても、それを決して恨まない、怒りなど感じない、ただただ受け入れる。
ルフレにとって、『愛』とはそう言うものだった。
そして、それ程に『愛』する者がこの世に存在していると言う事は、限りない喜びであり幸福であった。
……『影』は、『愛』を無意味だ無価値だと嗤う。
……『影』の言う通り、『影』こそが邪竜ギムレーの本来在るべきであった心や人格……その在り方であると言うのならば。
今のルフレは、ギムレー自身にも理解不可能な程に得体の知れない気味の悪い価値観と意志を獲得しているのだろう。
だからこそ『影』はルフレを排除し、その心を屈服させて、本来ギムレーとして在るべき在り方に戻ろうとしている、
……その為に、ルフレの心を折る為ならば、『影』は何でもしようとするだろう。……それこそ、ルキナに手を出してでも。
……ルフレは、ルキナに逃げて欲しかった。
『蒼炎』を託したのは、『蒼炎』に執着している『影』に嫌な予感を覚えたのと、あれは本来ルキナに託された物だからで。
決して、それを手に死地に飛び込んできて欲しいなんて、欠片も願ってはいなかったのだ。
『真実の泉』に独り置き去りにされたのだとしても、近くには彼女の父親である聖王が居るのだし、『人間』に戻れた状態ならば聖王も彼女の言葉に耳を貸すだろう。
ギムレーの復活を阻止する為に戦う必要があるのだとしても、それは彼女の役目では無い筈だ。
『影』の手の届かない場所で、平和に生きて欲しかったのだ。
……だけれども。
ルフレを救い出す為に、先陣を切ってでもこの闇の中にルキナは飛び込んできてしまうと。そんな確信めいた予感がある。
だが、それを待ち構える『影』が何の策も弄さぬ筈は無く。
とても危険な目に遭うだろう、もしかしたら酷く傷付く事になるのかもしれない……。それを想像するのは酷く恐ろしい。
そして。……「助けに来ないでくれ」とそう願う一方で。
もし、この深い闇の底にまで、あの蒼い輝きが射し込んでくれるのならば……、と。そんな事も考えてしまう。
そんな矛盾した思考を抱えつつも、ルフレは今唯一ルキナの為に出来る事を……最後まで足掻き続けようと決意する。
何があっても、何をされても。
決して『影』には屈しないと、この身を邪竜ギムレーとしての本性のそれに明け渡してはなるものかと。
邪竜ギムレーの復活が、例え僅かな間でも遅れるように。
ルフレは、ルキナの存在を心の支えにして。
『影』に抗うのであった……。
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