第七話『真実の泉』
◆◆◆◆◆
山裾にその人物の姿を見付けた瞬間。
ルキナは見た物を信じられず、思わず吼える様に叫んだ。
『お父様……!? そんな、どうしてここにお父様が……』
イーリスに居る筈の……こんなイーリスから遠く離れたヴァルムの地に在る筈も無いその姿に、動揺を隠せない。
いっそ偽物か幻かとも思うのだけれども。
その昏く深い憎悪の炎とそれにより燃え滾る憤怒は、あの日ルキナをファルシオンで斬り付けてきた時のそれそのまま……いやあの時よりも更に深みを増したそれで。
ルキナを射竦める様に睨むその眼差しには、怒りや憎悪とはまた別の……昏い歓喜の様な感情が混ざっている。
まさに凶相と言っても良いその表情は、厳しくも優しかった……ルキナの敬愛する父の姿とはまるで重ならない程の、復讐心の炎にその身も心も焦がす獣の様ですらあった。
それでも紛れも無く本物の父──当代聖王クロムであった。
余りの事態に動揺したルキナは、次の瞬間にまるで地上から天に向かって降り注ぐ雨の様に放たれた矢の嵐を避け切れず、矢に翼を射抜かれてしまう。
『────ッッ!!』
「ルキナ! 大丈夫かい!?」
翼を穿った矢の多くは羽を幾つか折るだけに留まったが、その内の数本が翼の付け根近くを傷付けて。背中を切り裂かれたかの様なその痛みに苦痛の悲鳴を上げたルキナは、飛び続ける事が出来ず地上に墜ちる様に不時着した。
矢の雨の中でも、堅牢な鱗に覆われているルキナの身体が盾となっていた為に何とかルフレは無事だったが、墜落の衝撃でルキナの背から投げ出され地に身体を打ち付けてしまう。
全身を打ち付けた痛みを抑えて立ち上がったルフレはルキナに駆け寄ろうとするが、ルキナの周囲を武装した兵士たちに素早く囲まれてしまい阻まれて。更にはそれに混乱し動揺した隙を突かれて兵士たちに乱暴に取り押さえられ、力尽くで地面に押し倒され身動きを取れなくさせられてしまった。
「……お前が、この『竜』の主か?」
押し倒された状態のルフレの前へと近寄ったクロムは、ファルシオンを抜き放ち、ルフレの首筋へとその切っ先を突き付けながらゾッとする程の感情が窺えない声で尋ねる。
「……違う! 『主』なんかじゃない!
僕は……僕は! ……ルキナの友人だ!」
ルフレは臆する事無く真っ直ぐにクロムを見上げ声を上げた。
だがクロムは、感情を無理矢理剥ぎ取ったかの様な……激し過ぎる余りに却って凪いですら聞こえる声で問う。
「『ルキナ』……だと? お前はその名の意味を分かった上で……この『竜』が誰の命を奪ったか知った上で、そう呼ぶのか?」
「……命を奪った? そんな筈は無い。
ルキナが誰かの命を奪うなんて、考えられない。
貴方が何処の誰だかは知りませんが、きっと勘違いしているんです!
だって、彼女は──」
「勘違いだと……!?
お前の方こそ、その『竜』の何を知っている!!」
ルフレの言葉は、咆哮の様な……激昂したクロムの叫びによって遮られて。何かを続けようとしたルフレは、クロムの剣幕に圧されて何も言えないまま、困惑した様な目をする。
そんなルフレの様子に構う事も無く、クロムは吼える。
「この『竜』が!! 娘を……ルキナを……!! 喰い殺した!!
その事実は、何がどうあろうと変わらん……!!
ルキナの墓に、骨の欠片一つ入れる事は叶わなかった……!!
ルキナは……骨すら遺せず『竜』に喰い殺されたんだ……!!
お前にその絶望が分かるか!? その怒りが分かるのか!?
俺は、娘を助ける事が出来なかった……!!
助けを求めただろう娘の悲鳴に気付く事すら出来ずに!
その仇すらとってやれずに『竜』を逃がしてしまった、この絶望が、この憎しみが、この怒りが!! 分かると言うのか!?
生きながら貪り食われたルキナの苦痛が理解出来るのか!?
何の事情も知らない様なら見逃してやるつもりだったが、『竜』を庇い立てすると言うならお前から殺してやる……!!」
最早絶叫と言っても良い様な……苛烈な言葉と同時に、深い絶望と哀しみと怒りと憎しみが混ざり合って泥の様になった感情を吐き出しながら。クロムはファルシオンを握り締める手に力を籠める。その切っ先が触れた首筋の皮が薄く斬れて、紅い雫が線の様に滲み出した。
『止めて下さい、お父様!!
ルフレさんは、何も悪くない、何も関係無いんです!
ただ、私を助けてくれただけで……!!』
それは余りにも悪夢の様な光景だった。
父が、ルフレに剣を向けて……殺そうとしているなど……!
一体何故こんな事になってしまったのか、全く分からない。
だが今はとにかく、『竜』への憎悪に囚われて怒り狂っている父から、何一つこんな場所で殺されたり傷付けられて良い理由など無いルフレを守らなければならない。
父が愛する人を殺す様な事だけは絶対に阻止せねば、と。
這ってでもルフレを守りに行きたいのに。
灼ける様に痛む翼と、そしてルキナを油断なく取り囲む様に矢を向ける兵達の所為でそれも叶わない。
故に、伝わらないと分かっていながらも、ルキナは吼えた。
全身全霊の咆哮は、クロムの意識をルフレからルキナへと向けさせるに十分で。憎悪に染まり切った眼が、ルキナを射抜く。
心に深く深く刻まれた癒えぬ傷痕が……ルフレとの日々の中で薄れつつあったそれが、その眼差しによって一気に蘇った。
全てが変わってしまったあの日の、あの恐ろしい『死』と『孤独』と『拒絶』の絶望が、心を食い潰さんばかりに甦る。
何とかしなくてはルフレを助けなくてはと、そう思う一方で。
身体はまるで芯まで凍り付いてしまったかの様に動けない。
ユラリと、まるで幽鬼の様な足取りで、クロムはルフレの前から離れてルキナへと近寄ってくる。
その手の中で西日によって紅く輝く様なファルシオンが、まる血に塗れた処刑用の斬首刀の様にすら見えた。
それを、凍り付いた様に見詰める事しか出来ない。
「止めて下さい!! ルキナは……! 目の前のその『竜』は!!
貴方の! 聖王様の娘の! ルキナ王女その人です!!
貴方は今、ご自身の娘を殺そうとしている所なんですよ!?」
ルフレの必死の叫びが、その場に響いた。
どうして、何故、何時……と。ルフレが自分の素性を知っていた事にルキナは驚いたが、今はそれどころでは無くて。
ルフレの必死の言葉にも、クロムは何も躊躇わない。
「この『竜』が俺の娘のルキナだと……? 笑えない冗談だな。
その程度の見え透いた嘘で時間稼ぎをするつもりか?
ルキナは死んだ、この『竜』に喰われてな……。
その事実は、何をしても覆りはしない……。
……ルキナへのせめてもの手向けだ。
このファルシオンで、貴様がルキナへと与えた苦しみ以上の苦痛を与えて、地獄に送ってやる」
憎しみのままに、クロムはその足取りを緩める事は無く。
身動きの出来ぬルキナを前にして、復讐を果たせる昏い歓喜のままに、その口の端を歪める。
そして、ファルシオンを振り上げた。今度こそ逃がさぬ様、一刀の元に首を落とすつもりなのだと、ルキナは悟る。
──ルキナの命運が尽きようとしたまさにその時。
「──ルキナっ!!」
自身を取り押さえていた兵士たちを力任せに弾き飛ばす様にして振り払いルキナの元へと駆け出したルフレが。
ルキナを守るかの様に、クロムとルキナとの間に飛び込んで。
そして、振り下ろされたファルシオンをその身で受け止めた。
振り下ろされたファルシオンの勢いのままに血に叩き付けられ、切り裂かれたその傷口から、血が溢れる様に零れだして。
飛び散った血がルキナの鱗を赤く染める。
辺りには、濃い鉄臭さが漂い出した。
『ルフレさん…………?』
目の前の光景が、信じられなくて。ルキナは呆然と呟く。
すると、地に伏したルフレが、僅かに身を起こして。
自身の血で汚れたその手を、ルキナへと差し出して。
まるで労わる様に……ルキナの顎の下を優しく撫でた。
「良かった……。ルキナが、お父さんに斬り殺される様な……そんな、哀しい事にならなくて。本当に、良かっ……──」
血に汚れたその手が、再び力無く地に落ちる。
支える力を喪った身体は再び地に倒れ伏して。
ルキナが呼び掛けても、もう応える事は無い。
死んでは、いない。今は、まだ。だがしかし、このままでは。
突然の乱入に気が逸れたクロムであったが、その目に宿る憎悪は些かも変わらず、ルフレを斬った事に何の動揺も無くて。
今度こそルキナを屠るべく、再びファルシオンを構え直した。
『──────ッッッ!!』
ルキナは、『言葉』すら失くした獣の様に吼え。
鉤爪がその身を傷付ける事すら構わずにルフレを抱き寄せて。
怒りとも哀しみとも取れぬ感情のままに、蒼い炎の様な『竜』の息吹を地に吹きかけてクロムと自身たちとを遠ざけた。
突然の炎にクロムや兵士たちが動き止めたその瞬間を見逃さずに、ルキナはルフレを離さぬよう抱き締め、力強く羽ばたく。
矢傷の痛みなど、感じる余裕などもう何処にも無くて。
ルフレを抱き抱えたまま、空高くへと逃げ去るのであった。
◆◆◆◆◆
山裾にその人物の姿を見付けた瞬間。
ルキナは見た物を信じられず、思わず吼える様に叫んだ。
『お父様……!? そんな、どうしてここにお父様が……』
イーリスに居る筈の……こんなイーリスから遠く離れたヴァルムの地に在る筈も無いその姿に、動揺を隠せない。
いっそ偽物か幻かとも思うのだけれども。
その昏く深い憎悪の炎とそれにより燃え滾る憤怒は、あの日ルキナをファルシオンで斬り付けてきた時のそれそのまま……いやあの時よりも更に深みを増したそれで。
ルキナを射竦める様に睨むその眼差しには、怒りや憎悪とはまた別の……昏い歓喜の様な感情が混ざっている。
まさに凶相と言っても良いその表情は、厳しくも優しかった……ルキナの敬愛する父の姿とはまるで重ならない程の、復讐心の炎にその身も心も焦がす獣の様ですらあった。
それでも紛れも無く本物の父──当代聖王クロムであった。
余りの事態に動揺したルキナは、次の瞬間にまるで地上から天に向かって降り注ぐ雨の様に放たれた矢の嵐を避け切れず、矢に翼を射抜かれてしまう。
『────ッッ!!』
「ルキナ! 大丈夫かい!?」
翼を穿った矢の多くは羽を幾つか折るだけに留まったが、その内の数本が翼の付け根近くを傷付けて。背中を切り裂かれたかの様なその痛みに苦痛の悲鳴を上げたルキナは、飛び続ける事が出来ず地上に墜ちる様に不時着した。
矢の雨の中でも、堅牢な鱗に覆われているルキナの身体が盾となっていた為に何とかルフレは無事だったが、墜落の衝撃でルキナの背から投げ出され地に身体を打ち付けてしまう。
全身を打ち付けた痛みを抑えて立ち上がったルフレはルキナに駆け寄ろうとするが、ルキナの周囲を武装した兵士たちに素早く囲まれてしまい阻まれて。更にはそれに混乱し動揺した隙を突かれて兵士たちに乱暴に取り押さえられ、力尽くで地面に押し倒され身動きを取れなくさせられてしまった。
「……お前が、この『竜』の主か?」
押し倒された状態のルフレの前へと近寄ったクロムは、ファルシオンを抜き放ち、ルフレの首筋へとその切っ先を突き付けながらゾッとする程の感情が窺えない声で尋ねる。
「……違う! 『主』なんかじゃない!
僕は……僕は! ……ルキナの友人だ!」
ルフレは臆する事無く真っ直ぐにクロムを見上げ声を上げた。
だがクロムは、感情を無理矢理剥ぎ取ったかの様な……激し過ぎる余りに却って凪いですら聞こえる声で問う。
「『ルキナ』……だと? お前はその名の意味を分かった上で……この『竜』が誰の命を奪ったか知った上で、そう呼ぶのか?」
「……命を奪った? そんな筈は無い。
ルキナが誰かの命を奪うなんて、考えられない。
貴方が何処の誰だかは知りませんが、きっと勘違いしているんです!
だって、彼女は──」
「勘違いだと……!?
お前の方こそ、その『竜』の何を知っている!!」
ルフレの言葉は、咆哮の様な……激昂したクロムの叫びによって遮られて。何かを続けようとしたルフレは、クロムの剣幕に圧されて何も言えないまま、困惑した様な目をする。
そんなルフレの様子に構う事も無く、クロムは吼える。
「この『竜』が!! 娘を……ルキナを……!! 喰い殺した!!
その事実は、何がどうあろうと変わらん……!!
ルキナの墓に、骨の欠片一つ入れる事は叶わなかった……!!
ルキナは……骨すら遺せず『竜』に喰い殺されたんだ……!!
お前にその絶望が分かるか!? その怒りが分かるのか!?
俺は、娘を助ける事が出来なかった……!!
助けを求めただろう娘の悲鳴に気付く事すら出来ずに!
その仇すらとってやれずに『竜』を逃がしてしまった、この絶望が、この憎しみが、この怒りが!! 分かると言うのか!?
生きながら貪り食われたルキナの苦痛が理解出来るのか!?
何の事情も知らない様なら見逃してやるつもりだったが、『竜』を庇い立てすると言うならお前から殺してやる……!!」
最早絶叫と言っても良い様な……苛烈な言葉と同時に、深い絶望と哀しみと怒りと憎しみが混ざり合って泥の様になった感情を吐き出しながら。クロムはファルシオンを握り締める手に力を籠める。その切っ先が触れた首筋の皮が薄く斬れて、紅い雫が線の様に滲み出した。
『止めて下さい、お父様!!
ルフレさんは、何も悪くない、何も関係無いんです!
ただ、私を助けてくれただけで……!!』
それは余りにも悪夢の様な光景だった。
父が、ルフレに剣を向けて……殺そうとしているなど……!
一体何故こんな事になってしまったのか、全く分からない。
だが今はとにかく、『竜』への憎悪に囚われて怒り狂っている父から、何一つこんな場所で殺されたり傷付けられて良い理由など無いルフレを守らなければならない。
父が愛する人を殺す様な事だけは絶対に阻止せねば、と。
這ってでもルフレを守りに行きたいのに。
灼ける様に痛む翼と、そしてルキナを油断なく取り囲む様に矢を向ける兵達の所為でそれも叶わない。
故に、伝わらないと分かっていながらも、ルキナは吼えた。
全身全霊の咆哮は、クロムの意識をルフレからルキナへと向けさせるに十分で。憎悪に染まり切った眼が、ルキナを射抜く。
心に深く深く刻まれた癒えぬ傷痕が……ルフレとの日々の中で薄れつつあったそれが、その眼差しによって一気に蘇った。
全てが変わってしまったあの日の、あの恐ろしい『死』と『孤独』と『拒絶』の絶望が、心を食い潰さんばかりに甦る。
何とかしなくてはルフレを助けなくてはと、そう思う一方で。
身体はまるで芯まで凍り付いてしまったかの様に動けない。
ユラリと、まるで幽鬼の様な足取りで、クロムはルフレの前から離れてルキナへと近寄ってくる。
その手の中で西日によって紅く輝く様なファルシオンが、まる血に塗れた処刑用の斬首刀の様にすら見えた。
それを、凍り付いた様に見詰める事しか出来ない。
「止めて下さい!! ルキナは……! 目の前のその『竜』は!!
貴方の! 聖王様の娘の! ルキナ王女その人です!!
貴方は今、ご自身の娘を殺そうとしている所なんですよ!?」
ルフレの必死の叫びが、その場に響いた。
どうして、何故、何時……と。ルフレが自分の素性を知っていた事にルキナは驚いたが、今はそれどころでは無くて。
ルフレの必死の言葉にも、クロムは何も躊躇わない。
「この『竜』が俺の娘のルキナだと……? 笑えない冗談だな。
その程度の見え透いた嘘で時間稼ぎをするつもりか?
ルキナは死んだ、この『竜』に喰われてな……。
その事実は、何をしても覆りはしない……。
……ルキナへのせめてもの手向けだ。
このファルシオンで、貴様がルキナへと与えた苦しみ以上の苦痛を与えて、地獄に送ってやる」
憎しみのままに、クロムはその足取りを緩める事は無く。
身動きの出来ぬルキナを前にして、復讐を果たせる昏い歓喜のままに、その口の端を歪める。
そして、ファルシオンを振り上げた。今度こそ逃がさぬ様、一刀の元に首を落とすつもりなのだと、ルキナは悟る。
──ルキナの命運が尽きようとしたまさにその時。
「──ルキナっ!!」
自身を取り押さえていた兵士たちを力任せに弾き飛ばす様にして振り払いルキナの元へと駆け出したルフレが。
ルキナを守るかの様に、クロムとルキナとの間に飛び込んで。
そして、振り下ろされたファルシオンをその身で受け止めた。
振り下ろされたファルシオンの勢いのままに血に叩き付けられ、切り裂かれたその傷口から、血が溢れる様に零れだして。
飛び散った血がルキナの鱗を赤く染める。
辺りには、濃い鉄臭さが漂い出した。
『ルフレさん…………?』
目の前の光景が、信じられなくて。ルキナは呆然と呟く。
すると、地に伏したルフレが、僅かに身を起こして。
自身の血で汚れたその手を、ルキナへと差し出して。
まるで労わる様に……ルキナの顎の下を優しく撫でた。
「良かった……。ルキナが、お父さんに斬り殺される様な……そんな、哀しい事にならなくて。本当に、良かっ……──」
血に汚れたその手が、再び力無く地に落ちる。
支える力を喪った身体は再び地に倒れ伏して。
ルキナが呼び掛けても、もう応える事は無い。
死んでは、いない。今は、まだ。だがしかし、このままでは。
突然の乱入に気が逸れたクロムであったが、その目に宿る憎悪は些かも変わらず、ルフレを斬った事に何の動揺も無くて。
今度こそルキナを屠るべく、再びファルシオンを構え直した。
『──────ッッッ!!』
ルキナは、『言葉』すら失くした獣の様に吼え。
鉤爪がその身を傷付ける事すら構わずにルフレを抱き寄せて。
怒りとも哀しみとも取れぬ感情のままに、蒼い炎の様な『竜』の息吹を地に吹きかけてクロムと自身たちとを遠ざけた。
突然の炎にクロムや兵士たちが動き止めたその瞬間を見逃さずに、ルキナはルフレを離さぬよう抱き締め、力強く羽ばたく。
矢傷の痛みなど、感じる余裕などもう何処にも無くて。
ルフレを抱き抱えたまま、空高くへと逃げ去るのであった。
◆◆◆◆◆