第五話『旅立ちの風』
◆◆◆◆◆
イーリスの王城で憎悪の炎が燃え上がっているその頃。
イーリスと国境を接する砂漠の国ぺレジアの、深い深い闇の底にある様な神殿の奥深くでは、一つの異変が起きていた。
「最高司祭様……! 今、ギムレー様の反応が……!!」
歓喜に打ち震える様な声で、教団の信徒が自らにとっての絶対の神の名を口にする。
憎き神竜の傀儡の手によって彼らの神が封じられてから千年。
絶望と憎悪を織り上げ続けて、漸く彼等の手に神は取り戻された……筈だった。
しかし、彼等の願いの連鎖の果てに甦り、神竜の忌々しい封印から取り戻した筈の神は……卑劣な裏切りにより喪われた。
だがしかし、神は決して自身を崇め奉り続けてきた彼等を見放す事は無かったのだ。
喪われていた筈の、彼の神がこの世に存在する事の証が。
今再びその健在を示す様に輝き始めていた。
それも、かつてのそれよりもより一層禍々しく猛々しく……見る者全てを喰い殺さんばかりの輝きでそれを知らしめる。
彼等の神の帰還を確信し、信徒たちは喜びに打ち震え涙を流してその輝きへと平伏した。
「ギムレー様……! 我らが偉大なる神よ……!」
「その破滅と絶望の翼で、この世に静寂を齎し給え」
「苦しむ全てを救済し、偽りの安寧を終わらせ給え」
「終焉の先にある楽園へと、我らを導き給え……」
信徒たちの祈りの声はより多く重なってゆく。
それを満足気に眺めたギムレー教団最高司祭ファウダーは、朗々と配下の信徒たちへと宣下する。
「さあ、我等の神の帰還は直ぐそこだ。
故に、我等が神に捧げる『炎の紋章』を完成させねばならん。
さあ、神へと我等の祈りを届かせるのだ……!」
祭壇に輝く台座には、四つの宝玉が煌めいているのであった。
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イーリスの王城で憎悪の炎が燃え上がっているその頃。
イーリスと国境を接する砂漠の国ぺレジアの、深い深い闇の底にある様な神殿の奥深くでは、一つの異変が起きていた。
「最高司祭様……! 今、ギムレー様の反応が……!!」
歓喜に打ち震える様な声で、教団の信徒が自らにとっての絶対の神の名を口にする。
憎き神竜の傀儡の手によって彼らの神が封じられてから千年。
絶望と憎悪を織り上げ続けて、漸く彼等の手に神は取り戻された……筈だった。
しかし、彼等の願いの連鎖の果てに甦り、神竜の忌々しい封印から取り戻した筈の神は……卑劣な裏切りにより喪われた。
だがしかし、神は決して自身を崇め奉り続けてきた彼等を見放す事は無かったのだ。
喪われていた筈の、彼の神がこの世に存在する事の証が。
今再びその健在を示す様に輝き始めていた。
それも、かつてのそれよりもより一層禍々しく猛々しく……見る者全てを喰い殺さんばかりの輝きでそれを知らしめる。
彼等の神の帰還を確信し、信徒たちは喜びに打ち震え涙を流してその輝きへと平伏した。
「ギムレー様……! 我らが偉大なる神よ……!」
「その破滅と絶望の翼で、この世に静寂を齎し給え」
「苦しむ全てを救済し、偽りの安寧を終わらせ給え」
「終焉の先にある楽園へと、我らを導き給え……」
信徒たちの祈りの声はより多く重なってゆく。
それを満足気に眺めたギムレー教団最高司祭ファウダーは、朗々と配下の信徒たちへと宣下する。
「さあ、我等の神の帰還は直ぐそこだ。
故に、我等が神に捧げる『炎の紋章』を完成させねばならん。
さあ、神へと我等の祈りを届かせるのだ……!」
祭壇に輝く台座には、四つの宝玉が煌めいているのであった。
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