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第一話『呪われた王女』

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 それは、遠い遠い……今となっては遥か昔の事──。

 世界を滅ぼそうとした一匹の悪い竜が居ました。
 その竜の名前は、ギムレー。
 とても大きくて誰よりも強かったギムレーは、数え切れない程の人々を殺し、多くの町や村を滅ぼしました。
 沢山の勇気ある人たちがギムレーに立ち向かいましたが、誰もギムレーには敵いません。
 人々はギムレーにただ怯え、神様に祈るばかりとなりました。

 ですが、中々神様は人の祈りの声には応えてくれず、ギムレーが世界を壊すばかり……。
 何時しか、最早人は滅びを待つばかりかと、神は人々を見放したのだと、そう人々の心に諦めが忍び寄ろうとします。

 しかし、神様は決して人々を見捨てては居なかったのです。
 神様は人々の中で最も強く心優しかった若者を選び、彼に力を与えました。
 若者は神様から与えられた剣と力でギムレーと戦い、見事討ち果たす事が出来ました。

 ですが……若者に神剣で胸を貫かれたギムレーは息絶える間際に【呪い】の言葉を遺したのです。


「忌々しきナーガの眷族よ! 
 この程度で我を殺せたなどと思い上がるなよ! 
 我は再び甦る! 
 幾百、幾千の年月が経とうとも、この世に人間が絶えぬ限り! 
 果て無き人の宿業は必ず我をこの世に呼び戻すのだからな! 
 今、この時よりお前の血は呪われた!! 
 我を戒めるナーガの封印が解けたその時には、お前の末裔は人々に忌み嫌われる獣と化すだろう!! 
 我が存在する限り永劫に解けはせぬ【呪い】を、子々孫々に至るまで受け継がせる罪に震えるが良い!!」


 そう高笑いを遺して、ギムレーは息絶えました。

 ……そして、世界には平和が訪れました。
 ギムレーを討った若者は人々から『聖王』と讃えられ、人々から願われて国を興しました。
 それが、虹の輝く国、『イーリス聖王国』の始まりです。

 しかし、聖王の血に掛けられた【呪い】は、それを隠す様に人々の口にのぼる事はなく、何時しか誰からも忘れ去られてしまったのです。
 もうこの世に生きる人々の中に、邪竜の【呪い】の事を知る人は一人も居ません。
 ですが、【呪い】は聖王の血脈の中で親から子へ、子から孫へと静かに絶える事なく受け継がれ続けていたのです。





 そして、それからとてもとても長い月日が経ちました──






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