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何時かの未来から、明日の君へ

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 熱もすっかり下がったルキナは、晴れてベッドから抜け出す事を侍医達からも許された。
 侍医達も驚く事に、一晩ですっかり治ったらしいのだ。
 お勉強や剣のお稽古も再開され、すっかりルキナの日常が戻って来ていた、
 そして、今日の分のお勉強が終わったルキナが、広い城内の探検をしていると。
 中庭で仲良く立ち話している男女が目に入った。


「あ、ルフレさん! ルキナお姉さま!」

「おや」「あら」


 それが大好きなルキナお姉さまとルフレさんだと分かった瞬間、ルキナはルキナお姉さまに向かって駆け出して、飛び込む様に抱き着いた。
 ルキナお姉さまはそんなルキナの身体を、何時もの様に確りと抱き留めてくれる。


「風邪を引いていたそうですがもうすっかり治った様ですね。
 元気そうで何よりです」

「はい、ルキナはすっかり元気です! 
 ルキナお姉さまにおひさしぶりに会えて、うれしいです!」


 城にまで来る事は珍しいルキナに、こうして元気になった直後に会えるとは、今日のルキナはとても幸運だった。
 同じ名前を持つ彼女を、ルキナは歳の離れた実の姉の様に慕っていて、会えた時には何時も相手をして貰っていた。
 前は何かを探してよく旅に出ていた様だけれど、今はイーリスの王都にずっと住んでいるらしい。

 そんなルキナとルキナおねえさまのやり取りを、ニコニコと優しい顔で見守っているのは、ルフレさんだ。
 ルキナが生まれるよりも前からお父さまのお友達で、ルキナがまだ物心も付かない様な頃に在った大きな戦いで一時行方が分からなくなっていたらしいのだけれども、一年程前にイーリスに帰って来たらしい。
 今はこの城で、宰相見習いとしてその補佐をしているのだと以前お父様がルキナに説明していたけれど、そもそもルキナには宰相もその補佐の意味もまだよく分かっていない。
 ただ、お父様にとってとても大切なお友達で、そしてルキナお姉さまにとっても大切な人なのだと言う事がルキナにとっては何よりも大事な事だった。
 ルフレさんは、ルキナにもとても優しいし、無暗矢鱈に子ども扱いしてくる事もなく相手をしてくれるので大好きだ。
 ルフレさんはルキナお姉さまと結婚しているらしく、だから今までは色々な所を旅していたルキナお姉さまがイーリスで暮らす様になったらしい。
 旅をした先での話を聞くのもルキナは好きであったが、王都に住んだ事で前よりもずっと頻繫にルキナお姉さまに会えるようになった事の方が嬉しかった。

 ルキナが二人に相手して貰っていると、ふと少し離れた所でルキナ達をひっそりと見守っている人影に気が付いた。
 フードを深く被っているから、その顔はここからではあまり分からなくて……だけれどもその服装は何処となくルフレさんのモノに似ている気がした。
 もしかして知り合いなのだろうか? 


「あの、ルフレさん。
 あそこにいる人は、ルフレさんのお知り合いの人ですか?」


 その人を指しながら訊ねると。ルフレさんは。
 その指先の先を見て、周りを見て、そして首を傾げた。


「あそこ……? 
 少なくともこの周りには僕達しかいないと思うけど。
 そっちの方向に誰か居るのかな? 
 ルキナは目が良いんだね」


 ルフレはそんな事を言うが、この距離でそんな事を言うなんて有り得るのだろうか? 
 困惑してルキナお姉さまを見るけれど、ルキナお姉さまも不思議そうな顔をしている。


「だってほら、あの、あそこに、あの赤い花がさいている木の下、黄色い花の花だんのところにいるじゃないですか!」


 ルキナはそこを指すがどうやら二人には分からないらしい。
 そして、指さされたその人影はと言うと、驚いた様に辺りを見回して自分しかそこに居ない事に気付いたのか、慌ててその場から消えようとする。
 そして、その時ルキナは気付いてしまった。
 木の下に立っていた時は花壇に隠れて見えていなかったが。
 その人影は、「足元が浮いていた」のだ。
 そして、人影は壁を通り抜ける様にしてその場から消えた。
 それを見たルキナは驚きの余りプルプルと震える。



「ゆうれいさんだったんだ!!」



 初めて『幽霊』を見た興奮に沸き立つルキナを、ルフレさんとルキナお姉さまは戸惑う様に見ているのであった。




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