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何時かの未来から、明日の君へ

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 少し息が苦しくて、ルキナはそっと目を開けた。
 独りぼっちの部屋が、酷く寂しい。


「お父さま……お母さま……」


 小さく咳き込みながら、ルキナは小さな涙を零す。

 このまま、もしかしてずっと独りぼっちになってしまうのではないだろうか、独りぼっちのまま死んでしまうのでは、と。
 幼い心にそんな恐ろしさが忍び寄った。
 小さな体を呑み込んでしまった不安は、布団を被っても尚振り払えない冷たさで、ルキナの心を凍えさせていく。

 ……普通の風邪であった筈だった。
 まだ幼い故に身体がまだ丈夫ではないルキナは季節の変わり目などに時折風邪を引く事がある。
 だがそれは、何時もは少ししたら治るものだった。
 だけれども今回の風は少し拗らせてしまったのか、随分と熱が長引いてしまっていた。
 侍医達は、ただの風邪が少し長引いただけだと皆言って。
 熱冷ましの薬を飲まされた後に、大人しく眠る様に言った。
 その言いつけを守って、ルキナは大人しく部屋で寝ていた。
 だけれども、熱で体中が火照っている為にあまり寝付けなくて、こうしてぼんやりと起きてしまうのだ。
 すると途端にいつもはなんて事は無い筈なのに、急に独りの部屋が寒々しく感じてしまう。

 父の大きな手が恋しかった。母の優しい手が恋しかった。
 両親に、この手を握っていて欲しかった。
 そうすればきっと、この不安は何処かに消えるから。
 だけど、お仕事で忙しい二人にそんな我儘は言えなかった。
 ルキナは、「えらい子」だから、「いい子」だから……。
 両親を困らせてしまうと分かっているからこそ、ルキナはそれを口には出来なかったのだ。
 ……それでも、寂しくて。
 今にも涙がポロポロと零れそうになったその時。

 溢れそうな涙を、誰かの優しい指先が、そっと拭った。
 そして、ルキナの頭を誰かがそっと撫でる。
 そのひんやりとした手は、ルキナの熱を優しく冷ましてくれているかの様だった。
 ルキナ以外はこの部屋に誰も居ない筈なのに、そんな指先を感じた事に驚いたのだけれども。
 だけれども熱で朦朧とした頭では上手く考えられなくて。
 ゆっくりと火照った身体が冷まされていく心地よさに、うとうとと安らかな眠りの淵に沈んでいくのであった。




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