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譲れないもの、一つ

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 それは春の盛りのとある日の事。
 聖竜ナーガの加護を受けるこのイーリス聖王国の王都は、何時も以上の活気に満ちていた。
 今日は、この国の第一王女ルキナの誕生日であるのだ。

 世界を滅亡に陥れようとしていた邪竜ギムレーが、初代聖王と同じくナーガの加護をその身に受けた当代聖王クロムと、彼が率いる勇壮なる仲間達によって討ち滅ぼされて早数年。
 当時はまだ物心も付いていなかった幼児であったルキナ王女は、偉大なる父と優しい母に見守られながら健やかに成長していたのであった。
 ギムレーの脅威も去った今、イーリス聖王国は末永く栄えていくのであろう、と民は皆心からそう思っている。

 が、そんな人々の想いや祝福とは裏腹に、イーリス城ではとある大騒動が巻き起こっていたのであった……。





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