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現の狭間、悪夢の終わり

◇◇◇◇





 歩き続けた果てに、漸く出口となる光が見えてきた。
 ルキナが彼処まで辿り着ければ、この術は完全に破られ、ルキナは目覚める事が出来る。

 ただ……。
 彼処には、僕は近付けない。
 ギムレーでもある僕が彼処に近付いてしまった時に何が起きるのか未知数だからだ。
 それでルキナを害する事になってしまえば本末転倒だった。

 ここまで来てしまえば、あの光に向かって走れば良いだけなのではあるけれど。
 僕と離れた途端に、呪術の核はきっと再びルキナに干渉しようとするのだろう。
 それだけが、どうしても気掛かりだった。
 だが……後はもう、ルキナがその干渉を打ち払うのを信じるしかない。


 そして、ルキナの手を離さなければならない瞬間がやって来た。
 ……ずっと繋いでいた手を離すのは少し寂しくて。
 でも、大きく成長したルキナと僕自身で向かい合えたのは、本当に幸せな事だった。

 僕はもう、ルキナと“ルフレ”が歩む未来を見守る事は出来ないけれど。
 それでも。

 愛し合い想い合う二人が、何時までも幸せであれる様に。
 どんな困難や苦難が待っていても、時に離れ離れになってしまうのだとしても。
 それでも、最後には共に幸せに笑っていられる様に……。
 そして、僕が辿り着けなかった……クロム達と……仲間達と笑っていられる未来に二人が辿り着ける様に。

 それを願い祈りながら、僕はルキナの背を押した。

 背を押されたルキナは一瞬躊躇うが、それでも振り返らずに光へと走って行く。

 光の中へと消え行こうとするその背中に、別れを告げながら僕は手を振った。



「さようなら、僕の“小さなお姫様”……。
 どうか君の未来が、幸せに満ち溢れていますように──」



 きっとその言葉は届いていないけれども。
 それでも良いのだ。

 闇は砕けて行き、それと共に僕も消えていく。
 それでも、怖いとは、少しも思わない。

 最後に、ルキナを守れたのだ。
 守りたかった子供を守り抜く事が出来て、そして成長したその姿をこの手で抱き締める事が出来た。

 本来は生まれるべきでは無かった、存在自体が罪であった僕には、過ぎた程の幸せで価値ある最期だ。
 だから、悔いは何処にも無い。


 どうか、君が幸せであります様に……。


 そう願いながら、僕は目を──






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