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現の狭間、悪夢の終わり

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 そして、もうそろそろ出口の光が見えてきそうになった頃には。
 ルキナはすっかり大きくなり、剣を手に取り世界を救う為に戦い続けていたあの頃の姿になっていた。
 そして、ふと。
 何処か怯えを滲ませた目で、ルキナの手を繋ぐ僕の右手を見詰めていた。
 そして、僅かに繋ぐ力を緩め、終にはその手を離そうとする。
 迷いを表す様に小さくなったルキナの歩幅に合わせて、僕は歩くペースを落として。

 そして、ルキナに。
 恐らくは再び呪術に絡め取られそうになっているルキナに語りかけた。

 そしてルキナへと振り返って、僕の目には見えなくともそこに居るのであろう呪術の核を睨み付ける。
 途端に何かの気配がたじろぐのを感じたが、大切なルキナを害しようとするソレを、逃がしてやる様な慈悲を生憎僕は持ち合わせてはいない。
 だから何の躊躇いもなく、ランプの光でその闇を祓った。

 すると、その光に畏れをなした様に闇の中で何かが必死に僕から遠ざかる。
 本当は追い掛けて潰してやりたい所だけれど、そんな事にかかずらってルキナを助け出す本来の目的を見失う訳にはいかない。
 だからルキナの手をしっかりと繋ぎ直して、また歩き始めた。

 暫しの沈黙の後、ルキナはぽつりと謝ってくる。

 どうやら、囁きに耳を傾けてしまった事を気に病んでいるらしい。
 ルキナはここだと容易に呪術に絡め取られてしまうし、それは最初から分かっていた事だ。
 故に、気にしなくても良いんだよ、と僕は言った。
 だけれども、ルキナの気持ちは中々晴れなかった様だ。

 折角助けに来てくれたのに疑うなんて、と。
 そう落ち込むルキナの姿に、胸が痛くなる。

 ……僕がこうやって助けに来たのは勿論ルキナの為であるけれど、自身の贖罪の為と言うのも大きい。

 ……僕はクロムを殺してしまった。
 ならばこそ、せめてルキナは守り抜かねばならないのだ。
 だけれども、どんなに励まそうとしてもルキナの表情が晴れる事は無かったのだった……。





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