秘密の先輩

新しいアプリゲーム



「飽きた。」

先輩はそう呟くと次々とアプリを消していく。
先輩の右側にいる俺は手持ち無沙汰で、綺麗になっていく画面をぼーっと眺める。

「なー、お前なんか面白いの知んない?」

作業が終了したのか、スッキリした画面をつけたまま自分の前の地面に放る。
期待していないんだろう、新しい煙草に火をつけながら聞いてきた。

別に俺も特にゲームはしないから、無いと答えようと口を開いたが、そういえば1つだけあった。

「数独」

「すうどく?」

なんそれ、と口の中で音を抑えながら眉間に深い皺を刻んだ先輩。全く見当が付いていない様子に心配になる。聞いたこともないのかコイツ。下手すりゃ将棋のルールも知らなそうだからしょうがないか。

やらせる方が早いな。
自分の携帯を開いて、端っこの方にあるアプリをタップする。

画面が変わったのをそのまま先輩に放った。

「おわっ、とっと!お前、スマホちゃんは優しくしてやれよな!」
お前が言うなよ。いつも適当に地面に放ってるだろうが。
呆れつつ、顎で手に持っている俺の携帯を指す。
「ンマーっこの子態度悪いわねぇ」
何キャラだそれ。
白々しくぷんぷんと口で言いながら画面を触る先輩。
少し困った様子の先輩を見て、横から肩に顎を乗せて軽くやり方を教える。

「はーはー、なるほど?ナンプレ的な?」
「ナンプレと一緒」
ナンプレは知ってんのかよ。
「まかセロリ。やったことあるぜ。見てろよ」
やったことあるならどうして画面を見て分からなかったんだ?

まぁ。ただ先輩がそう言うので、そのまま見ていることにした。

「……ふふん。俺にかかればこんなもんさ!!」
「終わってんじゃねぇか」
間違って。

3回ミスをしたら初めからスタートになる設定だからゲームオーバーで画面が止まっている。

「下書き使えよ」
訝しげにこっちを見るから下書きのやり方を教えると、先に言えよなんで黙って見てんだよ!と理不尽な怒りをみせた。
見てろって言ったのお前だろ。

教えてからはなんとか20分ほどでクリア。
もうすぐでチャイムが鳴る時間になっていた。

「そこそこ面白かったな」
「あ、そ。」
「たまに貸してけろ」
自分のに入れろよ。

とは何故か言えなかった。


煙草は、先輩に吸われることなくポケット灰皿の上で燃え尽きていた。



(「煙草吸わなくてよかったのか?」)
(「アッッッッ勿体ねぇ〜〜!!!!」)
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