土器土器体育祭





皆と別れた後、風紀の塩島と夏目が風紀室に向かう、その途中。夏目のポケットから通知が来た振動に彼が反応した。
ポケットから半分取り出したまま、通知を受信して光る液晶の文字を追う。
少し考え、もう一度ポケットに携帯を戻した夏目は「燕〜僕ちょっとトイレ行ってくるね。すぐ行くから先に行ってて〜」と先を歩く塩島に声をかけ、彼が返事をする前に進行方向とは反対に駆けて行った。

「分かりました。じきに風紀全体の会議であなたも話すことになるので早めに帰ってきてくださいね」
その背に聞こえるように声を張り上げた塩島は片眉をあげ、そのまま独り言を呟いた。
「風紀室のすぐ近くにもトイレがあるんだが。…そんなに近かったのか」

遠くなる背から目を離し、不思議そうにした後、進行方向へ足早に歩みを進めた。


塩島と別れた夏目は1番近くにあったトイレに入る。朝礼の予鈴が鳴るのを耳にしながらトイレに誰もいないことを確認していく夏目。
時間も時間であるため、当然だが誰もいなかった。
個室の中を確認した後、目の前の開いた窓から外を覗き込み、そのままその場に背をつけてポケットから携帯を取り出し、ロックを解除して先程通知が来た相手に文字を打ち込んだ。
そして電話をかけ、耳に携帯を当てる。

「もしもし〜。おはよ!」
挨拶を交わし、相手から返ってくる言葉に返事と相槌を打つ。
「そ。加賀屋くんほとんど今回のこと分かってるみたい。勿論キミの事も。
うん。彼のことは大丈夫だと思うよ。それと、ターゲットのことバレてるけどこのままいくの?
うん?そうだなぁ、僕としては別の人を本命に見せかけるっていうのが面白そうだと思うな。…あぁ、いいね、自然だし面白そう!
…ん?柴くんのこと?彼なら今回はセーフティーネットみたいだから特に気にしなくて良いんじゃないかな?連携さえ取れなければ情報も入らないし、彼が邪魔になることは無いと思うよ〜。
うん。うん。だいじょーぶだいじょーぶ。燕にも勘づかれてないし、いつも通り今日も僕は風紀するから!
じゃ、あとは幸運を祈るねぇ

鯨岡くん」

電話の相手と別れの挨拶を交わし、耳から携帯を離した夏目。そのまま携帯の画面を触り、先ほど話した相手のトークルームを削除した。
躊躇無いその自然な動作は、日常的に行っていることが分かるものだった。
背をつけたままポケットに再び携帯を仕舞い、いつもの緩い笑みを浮かべる。



「さーて、皆どこまでやれるかな?楽しくなってきた!」
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